安永正臣は過去に類を見ない技法で物理的に、そして哲学的に自身の表現の追究を続けているセラミックアーティストだ。「私たちが今ここにある自分の意識を離れ何かを想うとき、そこには少なからず距離が存在している」と語る安永の作品は、釉薬、石、ガラス、モザ イクタイルなどで造られたアッサンブラージュとも取ることができ、見る者を共感と未知の世界へ誘う。さらにその作品からは、安永の物理、時間、そして神秘に対する好奇心と探究心を見ることができる。
彫刻家・安永正臣は1982年、電力会社の技術者の父と、敬虔なクリスチャンの母のもと大阪に生まれ、6歳の時に三重県に移り住んだ。17歳で大阪産業大学のオープンキャンパスで星野曉の作品と出会って衝撃を受け、星野のゼミに所属する。卒業後、伊賀に移り住み造形作品を制作するかたわら器作家としても活動。その際に行っていた薪窯での焼成が現在の焼成理論に繋がっていった。
この頃から安永は骨董品、およびそれらの空虚性に興味を持つようになる。また祖母の死に際し、その死を忘れないという思いのもと、火葬したあとの遺灰で釉薬を作り白磁を焼いた。安永は器を作る中でも一貫して焼成を探求。それらを経験として蓄積していき、2012年からは釉薬のみでの造形を始める。2015年の⻑男の誕生をきっかけに、それまでにはなかった生命の容れ物としての「Empty Creatureシリーズ」を作り始める。独自の技法と素材で動物的に形どられたこのシリーズはさまざまな歴史や場所を連想させ、美しくも面妖なメナジェリーを奏でる。今回の個展は、そんな、がらんどうな器を生命の器として提起する作家の哲学を継続するものとなる。
MASAOMI YASUNAGA : EMPTY VESSEL
会期/~ 6月16日(日)
会場/Gallery 85.4 東京都渋谷区神宮前2-6-7 神宮前ファッションビル 1F
Tel. /03-6447-0325
時間/12:00~19:00
定休日/水、不定休有
https://www.instagram.com/gallery85.4/
Text: Aya Hasegawa