ランウェイに登場したモデルは、ベージュのボディスーツに、透明のつけ襟、ブラトップ、バルーンスカートを着て登場。会場中央のフロアが回転し、UVライトを浴びると、ボディスーツとスカートは青に、ブラトップはピンク、襟はイエローに色付いた。
アンリアレイジが、三井化学によるフォトクロミック技術を使用し始めてから10年。その技術を独自にアップデートしていき、今年この技術を「ANVISUAL(アンビジュアル)」と命名し、特許を取得したという。
空気をまとう服
今季は“目に見えない空気”を取り入れたディテールも目立った。PVCを空気で膨らませたようなキルティングジャケットやバルーンスカートなどがユニーク。BGMにはバッハの名曲「G線上のアリア(Air on the G String)」を流し、イタリア語で空気を意味する“アリア”にリンクさせていた。
PVC(ポリ塩化ビニール)と言えば、身体に有害と考えられる化学物質が含まれていたり、焼却時に塩化水素が発生したりと環境問題の観点では避けられる素材。しかしアンリアレイジでは、環境に配慮したフタル酸エステルフリーの“アンビジュアルPVC”を独自で開発し、安心して着用ができる服として提案している。
PVCのパッチワーク
ラストルックでは、ブランドの原点であるパッチワークをPVCで再現。UVライトを浴びて、カラフルなステンドグラスのような輝きを放つ。ポップな縁取りはデニムやコットン、人工皮革のウルトラスエードを使用しており、緻密な手仕事の美しさを引き立てていた。
またNTTとの協業し、照明で服の色や柄を多様に変化させ、鮮やかな色を映すことができる「ハイパースペクトル色彩制御技術」を採用。また光と色の条件、人によって見え方の異なるメタメリズム現象(ドレスの色が人によって“青と黒”か“白と金”に見えることで話題になった現象)を起こしていたという。
“人間讃歌”を表現した裸の王様のメタファー
フィナーレではバッハの「主よ、人の望みの喜びよ(Jesu, Joy of Man's Desiring)」が流れる中、ラストルック2体をボディスーツに身を包んだモデルたちが囲んだ。これについて、デザイナーの森永邦彦は「裸の王様のメタファー。王様は服を着ていて、周りの人間は着ていないという物語の真逆の状況を描くことで人間讃歌を狙いました」と説明する。
最新のテクノロジーを駆使しながらも、クラフツマンシップを掛け合わせて人間らしさを肯定し、賛美するコレクション。それはアンリアレイジのモノ作りの姿勢に通ずるものなのだと感じられた。
Photos: Courtesy of Anrealage Text: Mami Osugi