File11:一ツ山佳子/スタイリスト、SLITS Inc.代表
このまま楽しく仕事を続けていきたいからこそ、これまでとは違う自分のベースを作るのも良いかなと思ったというのが、一番の理由です。あと数年で50歳という年齢の区切りもありましたね。私の祖父は50歳で書道の師範になり、母も50歳手前から着付けを習い始めて師範になりました。その影響もあって、自然と50歳くらいから新たなライフステージに立てるという気がしていたんです。私の場合は、それが移住でした。これまでとは違う場所で、人生を豊かにしてくれる様々な経験をしてみたいと思ったんです。新天地で、これからやりたいことの準備を整えようと以前から計画していました。
── 移住して、何か変化はありましたか?
東京にいるときよりも、より人間らしく健康的な生活を送るようになりました。よく寝て、よく食べるという基本的なことの尊さを改めて感じています。晴れた日には友人から「天気がいいから散歩をしよう」という誘いの連絡がくることも。そうやって、日常の移ろいを肌で感じられることも、とても素敵だなと思いました。もちろん、慣れないことや初めてのことだらけなのでタフな思いをすることもありますが、イライラすることは格段に減ったように思います。私たちの仕事は身体が資本なので、健康やメンタルを整えることは必要不可欠だなと年々実感しています。ヘルスコンシャスになりすぎるのは苦手ですが、自分が気持ちよく生活するために、食事や適度な運動を楽しみながらやることを大切にしています。
【スキンケア】日々のシンプルケアで揺らぎを防止
── 肌を整えるために心がけていることは?
私は肌に色々塗るのがあまり好きではありません。なのでアイテムに頼るよりも、日々体に取り入れるもので肌そのものを強くしたいと思っています。具体的に毎日摂るようにしているのは、トラネキサム酸とビタミンE&C。トラネキサム酸は病院で処方してもらっていて、ビタミンE&Cはサプリから取り入れています。それらを毎日飲むようになってから、肝斑やシミが減りました。私はビューティーに精通しているわけではないのですが、一気にレーザーなどで治そうとするよりも、細々と毎日飲み続けることの方が効果的だったように感じます。
それに伴って毎日飲み続けているのが、ハーブティー。ホルモンバランスの揺らぎを気にするようになったのがきっかけで、コーヒー派からハーブティー派へと移行しました。パリの老舗ハーブ店「HERBORISTERIE D’HIPPOCRATE」で購入したイチョウの葉っぱを使ったもの(写真左)や、「Herboristerie du Palais Royal」のトケイソウのハーブティー(写真右)を愛飲中。漢方のお茶を飲むことも多いです。体を温めてくれたりホルモンバランスを整えたりする効果があるので、コーヒー代わりにタンブラーに入れて持ち歩いています。
── 最近使っているアイテムは?
スキンケアはなるべくシンプルにしています。最近使っているのはナチュラル&オーガニックスキンケアブランド、ニュースケープのアイテム。このブランドは透明性を追求しており、製造過程におけるすべてのコストを公開しているんです。価格も良心的で、オーガニックな素材にもこだわっているので、安心して使うことができます。毎日スキンケアの全工程を踏んでいるわけではないのですが、泡洗顔のクレンジングは特にお気に入り。泡立ちがしっかりとしていて、肌に密着してくれます。
また、毎日の半身浴を大切にしています。NYに来てからも、シャワーだけでは済ませず、必ず湯船に浸かっています。そして実は、私はここ10年ほど体を洗うときにボディタオルを使っていません。10年ほど前に冬の乾燥が酷くて悩んでいたときに、ボディタオルを使うのをやめてお湯で流すだけにしてみたら、どんどん肌の調子がよくなって。お風呂上がりもボディオイルなどは塗っていないのですが、乾燥トラブルがなくなりました。
【コスメ】顔立ちを生かしたシンプルメイク
── メイクのこだわりは?
スキンケア同様、メイクもシンプルにしています。日焼け止めと下地、ファンデはしていますが、あとは眉毛とリップくらい。肌のベース作りが好きで、なるべくナチュラルさや透明感を残すようにしています。お気に入りはクレ・ド・ポー ボーテの日焼け止めと下地。ビズゥのハイライターやコンシーラーも使いやすくておすすめです。
── その他のお気に入りアイテムは?
メイクをまったくしていないと具合が悪そうに見えてしまうので、肌の透明感と眉毛の凛々しさ、リップは意識しています。眉毛はアートメイクをしているのでペンシルなどは使わず、セ ベア ブロウの透明またはブラウンのアイブロウマスカラで毛流れを整えています。
リップはブランドやアイテムにこだわりはないのですが、赤系やオレンジ系が多いですね。赤の上にキャメルやイエロー系のリップを重ねると、肌馴染みが良くなるのでおすすめです。リップラインをしっかり縁取ると口の小ささが逆に強調されてしまうので、アウトラインをぼかすようにしています。あとは、大きめのイヤリングをつけて華やかさを足すようにしています。
【香り】塗香や精油オイルのナチュラルな香りを
── 普段、どんな風に香りを楽しんでいますか?
私は昔からお寺やお香の匂いが大好きで、普段は香水やコロンの代わりに塗香を取り入れることが多いです。本尊に供えたり、修行者が身体に塗ったりして身を清めるために使うものなのですが、お守り代わりとしても持ち歩いています。以前は京都の老舗ブランドのものを使っていたのですが、今は日本にいる時にたまたま立ち寄ったPOPUPストアで出合ったルテンの塗香を愛用しています。NYに来てより一層、和の香りが好きになっているように感じます。その他にも、自分で調合した精油をつけることもあります。
塗香や精油をよく身にまとうようになってから、普段は香水をほとんどつけなくなりました。シゲタのオイルとモデルの黒田エイミさんとヘアのDai Michishitaさんが手がけているサンアンドソイルの香水「ROSE」はいつも枕もとに置いています。サンアンドソイルは100%コスモスオーガニック認証の精油を採用しており、優しい香りに癒されます。いつも寝る前にシゲタのオイルをベッドに少しだけ垂らして、空間にROSEの香水を数回振りかけています。
【フード】食べたいものは、全部手作りがモットー
── NYでは、自炊をしていますか?
私は、食べることと飲むことが大好きなんです。元々自炊も好きなのですが、NYは外食がとても高く、かつ東京にいる時よりも時間ができたので、以前にも増して手料理に凝るようになりました。食べたいものは極力自分で作るようにしていて、今では食パンやラーメンのスープ、揚げ物、納豆まで自作しています。そうやって自分で作るようになってから、今までいかに自分が惰性で食事をしていたかということに気付かされました。どんなに美味しいレストランに行っても、その日の気分ではなかったり、時間がずれてしまったりすると美味しく感じなくなってしまう。でも、自分が本当に食べたいと思うものを決めて作ると、料理をしている間にますますお腹が空いてきて、本当に美味しく食べることができるんです。今は毎日何を作ろうかなと考える時間が楽しいです。
調味料のおすすめは、アボカドオイルと天然ペプチドリップ だし&栄養スープ。NYだとやはり日本料理が恋しくなることが多いのですが、和食を作るときは大体なんにでもこのペプチドリップを入れています。誰でも美味しく出汁がとれるので本当におすすめです!
【フィットネス】日々の散歩が健康の秘訣
── 運動はしていますか?
いわゆる“運動”は苦手なのですが、日頃からよく歩くようにしています。NYに来てからは特に歩くようになって、多い時は2万歩、少なくとも5000歩以上は毎日必ず歩いています。NYでは歩いていると日々の色々な発見も多く楽しいので、20ブロックくらいまでだったら平気で歩くようになりました。
また、NYに来てから服装が変化したというのも大きいですね。日本だと例えばジムやランニングのために着替えることが多いと思いますが、NYはスパッツやブラトップで歩いている人も少なくありません。アクティブウェアとデイリーウェアの境界線がより曖昧なので、私もその影響を受けて足もとがスニーカーになり、スポーツアイテムをインナーとして取り入れるようになりました。
NYの生活は初めての経験だらけで、ドキドキすることばかり。今まで当たり前だったことが当たり前でなくなることで、フレッシュな感覚が蘇ってきています。今後の拠点はまだ決めていません。まだまだ行ってみたい国はたくさんあります。色々な経験、出会う人々は私の宝物です。時間を大切にしながら、自分らしい生き方をこれからも見つけていきたいと思っています。
話を聞いたのは……
一ツ山佳子さん
雑誌から広告まで幅広い分野で活躍するスタイリスト。モードなスタイルからストリートに落とし込んだ着こなしまで、時代のムードを取り入れたハイセンスなスタイリングを得意とする。2014年にファッションコンサルティング&プロダクションカンパニーのSLITS Inc.を設⽴。JEWELRYブランドKNOWHOWの運営も⼿掛ける。
https://www.instagram.com/keikohitotsuyama/?hl=ja
Editor: Airi Nakano, Kyoko Muramatsu
1990年代後半から第一線で活躍を続け、最近では俳優・榮倉奈々とともにアパレルブランド「newnow(ニューナウ)」を立ち上げて話題を呼んだスタイリストの上杉美雪。多忙な日々にも関わらず常に凛とした佇まいを保つ彼女の裏側には、徹底したインナーケアと人生の目標があった。
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