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「実は世界一有名なストリップダンサーなんです」──バーレスク界の女王、ディタ・フォン・ティースの知られざる素顔【50 SHADES OF ME】

現在ラスベガスで上演されているショー『A Jubilant Revue』に出演中のディタ・フォン・ティース。グラマラスな輝きを放ち続ける51歳の彼女が語る、バーレスクの魅力とは? 黒髪に白い肌、真っ赤な口紅がシグネチャーのディタの、ノーメイクの心に迫る。

ラスベガスで行う、豪華絢爛なショーへの想い

1 ラスベガスのジュビリーシアターで行うショー『A Jubilant Revue』は、どこが特別なのでしょうか?
圧倒的なスケールです。1981年にスタートし、2016年に閉幕した名物ショー『Jubilee!』で使われていた、ボブ・マッキーとピート・メネフィーが手がけた世界最高のショーガールの衣装を着用させてもらっています。『Jubilee!』のために、40年以上前に、1200万ドルという巨額の予算を投じて制作された衣装を、私を含めたショーガールたちがステージで着用してパフォーマンスをする。観客はその姿を見ることができる。これは本当に特別なことだと思います。

ゴージャスな衣装の数々も圧巻な『A Jubilant Revue』の一幕。Photo: Courtesy of Dita Von Teese

『A Jubilant Revue』は、多様な衣装とステージ、ダンスで観客を飽きさせない。Photo: Courtesy of Dita Von Teese

2 その豪華絢爛な衣装を、1回のステージで何着ほど着用するのでしょうか?
何も着用せずにライトだけを体に当てた姿も衣装とするなら(笑)、1時間30分のショーで7回着替えをしています。

3 数々のアーカイブの中から、どのようにその6着を選んだのでしょうか?
幸いにも私は自分の好みをはっきりと認識しているので、そこにショーの個性などをかけ合わせて選びました。

4 公演前に必ずすることは?
ステージには何段もの階段があるので、本番前にカクテルを飲んでリラックスというわけにもいかず。音楽をかけながら楽屋で一人の時間を過ごし、気持ちを整えています。

5 どのようにして自分のスタイルを確立したのでしょうか?
ミシガン州の小さな町出身のブロンド少女だったので、外見をもっとパワフルに見せたいと思っていたんです。そこで、大好きな40年代の俳優たちのスタイルを取り入れるようにしたのが始まりです。

6 パフォーマンスをする際に最も大切にしていることは?
まず観に来てくださるお客さんに楽しんでいただくこと。でも、観客を喜ばせることに集中してしまっては、自分らしさがなくなってしまうので、バランスが大切だと思っています。

7 あなたのシグネチャーでもあるマティーニ&シャンパングラスのパフォーマンスを始めたのはいつ?
具体的な年は忘れてしまいましたが、ニューオーリンズのバーボン・ストリートにあるストリップクラブで踊ったのが初めてです。当時は携帯カメラなどなかったので、映像や写真が残っていないのが本当に残念です。

Photo: Courtesy of Dita Von Teese

8 パフォーマンスの成功は何で決める?
官能と遊び心がうまく融合し、観ている方たちにストリップはスタイリッシュだと捉えてもらえたときです。「イメージと違った」と思っていただけたら大成功です。

「優雅に生きることは最良の復讐である」

9 人生のモットーにしている特別な考えは?
「優雅に生きることは最良の復讐である」。誰かがあなたを貶めようとしていても、それに翻弄されずに自分なりの最高の生き方をすれば、それに勝ることはないというニュアンスの、素敵な言葉です。

10 子ども時代の鮮明な思い出を一つ教えてください。
一生懸命お金を貯めて、母の友人が経営していたアンティークショップでヴェール付きの帽子などを買って、鏡の前で着せ替えをするのが大好きでした。

11 バーレスクダンサーになっていなかったら、今頃何をしていたと思いますか?
ファッション・エディターか、あるいは年代映画で使われる衣装が歴史的に正しいかを確認する、ファクトチェックのような仕事をしていたと思います。

12 自分が稼いだお金で初めて買ったものは?
スワロフスキーのクリスタル。

13 シャワーの最中に歌う?
歌いません。

14 メンタルを健康に保つコツは?
自然の中に身を置くこと。息抜きに散歩もしますし、ときには瞑想もしたりします。

15 美を保つ秘訣は?
アルコールを控えて、水をたくさん飲むように心がける……なんていうのは建前で、本当の秘訣はそんなことは気にせずに、自分の好きなように楽しく生きること。人はみんな歳をとるものだし、人のことは気にせず、自分が楽しい人生を送っていればそれで十分。

16 ワークアウトはしますか?
好きではないですが、ピラティスを週3回、ウエイトトレーニングも週1回はやっています。

17 一番生産性の高い時間は?
朝。

18 常に持ち歩いている必需品を3つ教えてください。
コンパクト、口紅、携帯電話。でも携帯は体の一部みたいなものなので、回答としては不要でしょうか?

19 朝起きて必ずやることは?
歯磨き。

20 旅に欠かせないマストアイテムは?
ヘアメイクも自分でやるのでヘアメイク道具は必須ですが、衣装もあるし……。必需品はとにかくたくさんあります。

21 まだ訪れたことのない国で、絶対に行ってみたい国は?
タヒチ。パラソルを片手に泳ぐような人間ですが、実はトロピカルな休日が大好きなんです。

「嘲笑から逃れられるのは、平凡だけ」

22 なくなったら生きていけない溺愛フードは?
アボカドとバナナ。特にバナナは食べ頃を皮の色でチェックしているので、ショーの楽屋には食べ頃バナナの色分けチャートを貼っているほどです(笑)。

23 苦手な食べ物は?
ヘーゼルナッツフレーバーのもの。

24 甘党? 辛党?
辛党。

25 今回の日本滞在は何日間?
1週間。

26 日本滞在中に一番やりたいことは?
東京をぶらぶらとお散歩したいです。

27 ラスベガス生活で気に入っている点は?
毎晩ショーに出られることがうれしいです。ビルの5階ほどの高さに相当する劇場の天井から小さな円盤に乗って降下する登場シーンがお気に入り。

28 仕事以外で得意なことは?
料理インテリアのコーディネート。

29 苦手なことは?
特にない気がします。こう見えて運転も得意ですから。

30 占いは信じる?
のめり込むことはないですし、迷信もあまり信じないほうです。

31 偏愛しているものはありますか?
今は「LASHIFY」というセルフでできるつけまつ毛に夢中です。

32 ファッションに対するモットーを教えてください。
私はいつも「嘲笑から逃れられるのは、平凡だけ」と言っているんです。人は他人の服装を笑ったりケチをつけたりするのが好きですよね? でも、それは関心を持たれていると思えばいい。逆に何も言われないのは、平凡でありきたりな格好だということ。私は服が持つ、変幻自在のパワーが好きなんです。

33 人生で怖いものは?
親しい人や大好きな人を失うこと。

34 楽観主義者、それとも現実主義者?
現実主義者。

35 逆境を克服するカギは?
マイナスに思えることがプラスに転じることもあるので、できないことを悩み抜くのではなく、ほかに目を向けることが大事だと思います。私もできないことばかりだったので、違うところに目を向けたら、バーレスクダンサーとして成功しましたから。

36 何に腹を立てる?
子どもや動物たちに残酷なことをする人たち。

37 何に幸せを感じる?
猫や子犬はもちろん、あらゆる動物の存在。

38 あなたの中の最大の敵は?
完璧主義な部分。

39 あなたの外の最大の敵は?
世界中に氾濫する辛いニュース。

「セクシーになりたいと思っているわけでもない」

40 バーレスクダンサーとして、最も素晴らしいと思うことは?
異彩を放つ特別なものであること。たとえストリップでも、自分がやっていることで世界一になれるのは素敵なことだなと思っています。確かに「職業は?」と聞かれて、「ストリップです。実は世界一有名なストリップダンサーなんです」なんて答えるときは、自分でも笑ってしまいますけどね(笑)。

41 ショーを観た人たちに何を感じてほしいですか?
「こんなショーが存在するんだ!」という驚きを感じてもらいつつ、会場の雰囲気も含めて、新鮮な体験をしていただけたら最高です。

42 バーレスクに恋をした瞬間は?

高校を卒業後、LAでたくさんのクラブキッズたちと出会ったのですが、みんなのように上手に踊れなかったんです。幼い頃からバレエを習ってはいたのですが、田舎町の小さなバレエ教室で教わっていた程度なので、決して上手とは言えなかった。でも、ストリップティーズなら踊れるかなと思って始めたところ、それが成功をした。もしバレエダンサーの道を歩んでいたら、より上手い人たちの中で埋もれていたと思いますから、秀でた才能がなかったことが功を奏したんです。

43 バーレスクを通してあなた自身が表現していることを3語でお答えください。

それが、私は特にペルソナみたいなものがないんです。セクシーになりたいと思っているわけでもない。ただ衣装やメイクを通して自分らしさを表現できたらいいなというだけなんです。無理してなにかになろうと思ってもすぐに仮面が剥がれてしまうので、自分が信じることを自分らしくやるだけです。

44 パフォーマンスのためのインスピレーションはどこから得ますか?

昔の映画作品。それを現代風の表現に変換してアウトプットしたりします。

45 シグネチャーの香水(あるいは香り)はありますか?

2017年にローンチした自身の香水「SCANDALWOOD」が私を象徴する香り。この他にヨーロッパでしか発売されていない香水が3種類あります。

46 ストレス解消のために訪れるお気に入りスポットは?

私の部屋。3匹の猫たちと戯れている時間が一番の癒しです。ベッドに寝ているときに猫の甘えた声が聞こえるだけで幸せな気持ちになります。日本では猫用のおもちゃを買って帰らないと。

47 夢を貫くために大切だと思うものは?

この質問は私には不思議というか、どう答えていいのか分からないのが正直なところです。と言うのも、私は「絶対にこれになる!」なるという夢を持ったり、目標やゴールを定めたことがないから。今の自分の立ち位置自体が夢のようで、自分はただただ幸運なんだなと思っています。

48 一番好きな映画は?

1945年のミュージカル映画『ジーグフェルド・フォーリーズ』。当時の作品は素敵なシーンがある一方で、問題アリの描写も多々あったりしますが、今作はバランスの取れた作品だと思っています。それからフレッド・アステアの出演作はすべて大好きです。

49 レッドカーペットのスタイルで大事にしているのは?

クローゼットを覗き込んで、そのときの気分に合わせてスタイリングをすること。持っている服のほとんどがヴィンテージなので、何度も同じドレスを着たりしますが、ジュエリーを変えたりして楽しむのが好き。

50 与えることと受け取ること。どちらの方が好き?

悩ましい質問ですね。たとえプレゼント一つにしても、相手に気に入ってもらえるかどうかでものすごく悩んでしまうタイプなので……。どちらとも言えないです。

Photos: Akihito Igarashi Text: Rieko Shibazaki Editor: Yaka Matsumoto