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バレンシアガ(BALENCIAGA)のショーの招待状として送られてきたのは、アーティスティック・ディレクター、デムナがアンティークの収集品を検索するために使用しているというeBay で見つけたオブジェクトだった。置物や小物入れ、アクセサリーなど、受け取った品々は一人一人違っていたようだ。これらはかつて誰かの所有物であり、私たちは親しみや神秘的な感覚を覚えたり、それにまつわるストーリーを想像したりすることができる。そうやって「私たちが感情的な生き物であることを認識することは、デジタル化世界において重要です」というメッセージが添えてあった。
デジタル化が加速する中で、手仕事や人間の心の重要性を訴える内容になるのか。そう想像を巡らせながら先シーズンと同じ、ナポレオンの廟所であるアンヴァリッドの中に入ると、赤いベルベットで覆われていた前回とは打って変わって無機質な空間が広がっていた。席にはプレスリリースが置いてあり、最後に「ショーの前にスキャンしてください」という言葉とともにQRコードが掲載してある。スキャンすると、デムナの声が流れ始めた。前回は「ファッションとは何かを最もパーソナルな形で表現した」とのことだったが、今回は「ラグジュアリー」について考えたようだ。「今、本当に貴重かつ有限に思われるものは、実際には、創造性そのものです。私は創造性が密かに新たなラグジュアリーの形となると信じています」
接着テープによっていくつかのアイテムをつなげたり、身体にフィットさせたりする、まるで即興で作ったかのようなルックもあった。最後は砂嵐の中、たくさんのブラジャーを組み合わせたドレスで締め括った。
四方を映像で囲まれた中行われたショーには没入感があり、まずその技術に圧倒されてしまったのだが、それでも目がいったのは服を纏ったモデルたちだった。おそらくプロではないモデルも含まれていて、彼らのたどたどしい足取りやガムを噛みながら気だるい様子で歩く姿は人間味が際立っていた。
そして、アーカイブも参照し、手仕事も駆使しながら、あらゆるアイデアとユーモアが溢れ出ていて、宣言どおり「ラグジュアリー」としてのデムナの創造性が存分に発揮されていた。AI だけでは実現できない、人間が手がけるからこその表現となっていただろう。
ここのところ「服」、「ファッション」、「ラグジュアリー」をテーマとし、俯瞰した視点でものづくりに取り組んでいるように見えるデムナ。世の中の急激な変化によって外枠が揺らぐ今、自分なりの定義を試みようとするデムナは、時流を捉えることが求められるファッションデザイナーのあるべき姿だと思うのだった。
Photos: Gorunway.com Text: Itoi Kuriyama