ダイアナ元妃が贔屓にしていたデザイナーには、キャサリン・ウォーカー(CATHERINE WALKER)、エマニュエル(EMANUEL)、ブルース・オールドフィールド(BRUCE OLDFIELD)、ヴェルサーチェ(VERSACE)などがいた。中でも彼女がとりわけ長く愛用していたのが、イギリスのオートクチュールブランドのベルヴィル・サスーン(BELLVILLE SASSOON)だ。
もともとベリンダ・ベルヴィルが1953年にベルヴィル・エ・シー(BELLVILLE ET CIE)の名で立ち上げたベルヴィル・サスーンは、1958年にデヴィッド・サスーンが加わったことで現在のブランド名に変更。ダイアナ元妃との付き合いは、1981年までに遡る。当時、ダイアナ元妃は婚約写真用の服を探しており、そこでロンドンのナイツブリッジにあったブランドのブティックを訪れた。だが、店は間もなく閉店時間。目にとまる服もなかった。おまけに王妃だとは気づかなかった店員は、代わりにハロッズへ行くよう彼女に勧めたと、2021年にケンジントン宮殿で開催された「Royal Style In The Making」展を手がけたキュレーターのマシュー・ストーリーはいう。
不覚にもダイアナ元妃に取り合わなかったベルヴィル・サスーンだが、幸いにも彼女は後日、ブランドの古くからの常連客であった母親のフランシス・シャンド・キッドとともに再びブティックを訪れ、ハネムーン用の服を依頼した。そうして生まれたのが、白いフリルの襟が特徴的なあのピーチシルクのアンサンブルだ。
「多くの人は、ダイアナ元妃がわずか19歳の頃からベルヴィル・サスーンを愛用していたことを知りません」と、ヴィンテージ・コレクターでオンラインショップ、シュリンプトン・クチュールの創設者であるシェリー・バルチは言う。「生涯にわたるコラボレーションの始まりで、彼女のために70着以上の服をデザインすることになりました」
その中には、1981年に公開されたジェームズ・ボンド映画『007/ユア・アイズ・オンリー』のプレミアで着用した赤いドレスや、その年の暮れに開催されたヴィクトリア&アルバート博物館でのガラで纏った淡いブルーのシフォンドレスなどがある。1988年に行われたポロのチャリティマッチで着ていたフローラルのティードレスも、ベルヴィル・サスーンが手がけた有名な1着だ。
ベルヴィル・サスーンは現在、ベルヴィルの引退を機にブランドに加わったアイルランド出身のデザイナーのローカン・マラニーが指揮を執っている。全盛期にはオードリー・ヘプバーン、ジャッキー・ケネディ、エリザベス・テイラーといった錚々たる顔ぶれのためにデザインを手がけていが、多くの人はこれからも「ダイアナ元妃御用達のブランド」として記憶し続けるだろう。「ダイアナは、英国王室の服装のルールを破りましたが、その掟破りなスタイルは魅力的で、圧倒的な支持を得ていました」とサスーンは著書『The Glamour of Bellville Sassoon(原題)』で述べている。「彼女は王室のスタイルを現代仕様にしました。それは並大抵のことではなく、ベリンダとローカンと私は、その一翼を担えたことを誇りに思っています」
Text: Emily Chan Adaptation: Anzu Kawano
From VOGUE.CO.UK
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