FASHION / TREND & STORY

rokhのデザイナー、ロク・ファンが語る、カナダグースとのコラボ秘話──都市とアウトドアをつなぐ郷愁のアメリカンテイスト

ロク(rokh)のデザイナー、ロク・ファンがカナダグース(CANADA GOOSE)とタッグを組んだカプセルコレクションがローンチ。アメリカ・テキサス州で幼少期を過ごした彼がインスピレーションに選んだのは、ノスタルジックな西部アメリカのムード。LAのアーティスト、マット・マコーミックも加わり、ユニークな化学反応を起こしたコレクションの製作秘話を来日した彼に訊ねた。

カナダグース(CANADA GOOSE)とロクrokh)、そしてアメリカ西部のカルチャーに着想を得て創作しているアーティスト、マット・マコーミックがコラボレーションした限定コレクションが発売。ドーバー ストリート マーケット ギンザ(以下DSMG)ではコレクションを取り扱うほか、1階のエレファントスペースでインスタレーションを行っている。インスタレーションのディレクションも手がけたrokhのデザイナー、ロク・ファンに話を聞いた。

──カナダグースとコラボレーションした経緯を教えてください。

友人のサラ・アンデルマン(伝説のセレクトショップ、コレットのクリエイティブ・ディレクター)と話しているうちにコラボに関心を持ったんです。どんなブランドと組むと面白くなるだろう、と考えたのですが、僕はアイコニックなアイテムに手を加えたりリメイクしたりするのが好きなので、自然とカナダグースがいいね、と。

──サラさんと交友があるんですね。

彼女はとても影響力のある人で、尊敬しています。時々アドバイスをくれたりするんです。

アウトドアウェアを街中で着る人々をイメージ

──カナダグースにはどんなイメージを持っていましたか?

アウトドアとつながりが深く、パワフルなイメージです。そしてちょっと特殊な受け止め方かもしれませんが、カナダのブランドなのにとてもアメリカ的で、どこかプレッピーな感じがすると思っていたんですよね。その僕なりの印象をコラボレーションに活かしました。

──本コラボレーションは今年3月にパリで開催された2023-24年秋冬のrokhのショーで初披露されましたが、コレクションのタイトル「Office Essentials」とはどのように関連していますか?

カナダグースのアイテムは基本的にはアウトドアアクティビティ用ですが、僕は多くの人たちがそれを街中で着ている姿が好きなんです。寒い日にスーツの上に羽織っていたりとか。それで、ロクのテーマにも沿って、アウトドアはもちろん仕事でも着られるよう、洗練され、スタイリッシュであることを意識しました。

パッファージャケット ¥212,300

アメリカ生活の光と影から多様なカルチャーを浮き彫りにするマット・マコーミックの世界

──アメリカ西部のカルチャーをベースに創作しているLAのアーティスト、マット・マコーミックさんの作品を用いていますが、ロクさんがカナダグースに対して抱いた「アメリカ的」という印象がコラボにつながったのでしょうか。

そうですね。マットも、カナダグースも、rokhもそれぞれ全く異なるアイデンティティを持っていますが、僕には3つが結びつくように思えたんです。西部劇のような、アメリカーナのような、開拓時代のアメリカ西部のようなムードが漂うマットの作品が大好きで、既存の作品の中からコレクションに合いそうなものを選びました。油絵を思わせる手触りのグラフィックが施されたジャケットがあるのですが、それは暗い色の部分は刺繍をし、その他はペイントして、層を重ねてまた刺繍をしてという工程を踏んでいます。単に服の上に彼のアートワークを平面的に載せる、というのではなく、美しいオブジェのように見せたかったんです。

グラフィックジャケット ¥192,500

「アメリカーナ特有の大胆なグラフィックや強烈な色合いに惹かれるんです」

──テキサス育ちのロクさんにとって、マットさんがモチーフにしているアメリカーナとはどんなものなのでしょうか?

テキサスに住んでいる頃は全く意識しておらず、離れてからアメリカーナとはどんなものか理解したような気がします。大胆なグラフィックや強烈な色合い、何もかもが大きいとか。今はとても面白いと思いますし、幼少期を思い出してノスタルジックな気分にもなります。

ニットトップ ¥113,300

2年の歳月をかけた本コラボで保温性の高い生地を開発

──DSMGの1階 エレファントスペースでのインスタレーションはサボテンが生息する砂漠を彷彿とさせ、アメリカーナを表現しているのかな、と思いました。

アメリカーナを、rokhのアイデンティティを通して翻訳し、洗練された、センシュアルなものにしようと思いました。そこで、ベージュや砂のような色、トレンチコートの素材といったrokhのアイコニックな要素を用いています。さらに、コラボアイテムのひとつであるトレンチコートの製作過程もディスプレイしています。これはrokhの既存のモデルからスタートし、rokhらしいカッティングやディテールの表現にカナダグースの技術を活かしています。一見トレンチコート用のようで、触ると保温性があることがわかる生地は、カナダグースと協力して開発しました。こうした手間暇をかけているため、コラボアイテムの完成には2年ほどかかったんです。

トレンチコート ¥269,500

──2年も!改めて、こだわりが詰まったアイテムひとつひとつをじっくり見てみたくなりますね。最後に、約2週間後にパリコレクションでの発表を控え、お忙しい時期かと思いますが、今回の来日でどこか行く予定があれば教えてください。

日本で列車に乗るのが好きで、昨年12月に来日した時は箱根に行きましたが、今回は草津温泉に行きます! 次はレンタカーを借りてアウトドアを楽しみたいですね。僕はいつも長時間スタジオで働いているので、静かな自然の中でハイキングやキャンプをすると、自由な気持ちになり、アイデアが浮かんだりもするんです。日本はキャンプが盛んだと聞くので、キャンプがいいかな。カナダグースを着ていかなきゃ(笑)。

Photo: Courtesy of DSMG

ドーバー ストリート マーケット ギンザでのインスタレーション
会期/2023年9月14日(木)〜27日(水)
場所/東京都中央区銀座6-9-5 1F エレファントスペース

CANADA GOOSE × Rokh × Matt McCormick カプセルコレクション
2023年9月15 日(金)よりカナダグース銀座店と公式オンラインストアにて発売スタート。https://www.canadagoose.jp/

Profile
ロク・ファン(Rok Hwang)
韓国・ソウルで生まれ、10代をテキサス・オースティンで過ごす。セント・マーチン美術大学を経て3年間フィービー・ファイロ率いるセリーヌ(CELINE)に在籍。2016年にrokhを設立する。2018年にはLVMHプライズ特別賞を受賞し、翌年よりパリコレクションに参加。現在はロンドンを拠点としている。

Photos: Akihito Igarashi(Portrait) Text&Interview: Itoi Kuriyama  Editor: Mayumi Numao