BEAUTY / EXPERT

2024年、真冬のウッディ&スパイシーなダークネス・フレグランス

冷たい空気の中で纏う、ウッディやスモーキーな素材を惜しげもなく使ったフレグランスに注目。個性が炸裂するダークな香りたちの魅力をプロに聞いた。

威圧感がなくニュートラルな、ウッディ&スパイシー

ウッディでスパイシー、アニマリックと多面的魅力を持つウードの存在感を、メイローズとモスがドラマティックに増幅。エクストレ・ドゥ・パルファン ミリアド 100ml ¥97,900/LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン クライアントサービス)

多くのブランドから、示し合わせたかのようにダークなムードのフレグランスが登場している。この1~2年で“ウッディスパイシー”がじわじわトレンドとなり、そのバリエーションは増えるばかりだったが、この冬はスモーキーな気分が加わってきている。フレグランスにおけるダークさは多様化・ 複雑化し、新たな時代の到来を鮮明に告げている。

〈左〉1. ネロリとジャスミンのフローラルにアンバー、ホワイトムスクを掛け合わせて。パラドックス オーデパルファム 90ml ¥22,550/PRADA(プラダ ビューティ)〈右〉マホガニーやローズウッドの甘さとレザーが溶け合う。ハカランダ パフュームコレクション 100ml ¥46,200/FUEGUIA 1833(フエギア1833)

なぜ今、ここまでダークな香りが脚光を浴びるのだろう。アロマ調香デザイナーの齋藤智子さんは「パンデミックの影響が大きいです」と話す。「ニューノーマル初期は、パーソナルスペースで過ごしながら心を落ち着かせる、癒しの香りが求められま した。このときに“香りは気持ちを変化させてくれるものなんだ”と多くの人が知ることとなったんですね。そして2022年あたりからの情勢の緩和に伴い、私たちの“どこか遠くへ行きたい、旅がしたい”という気分がいよいよ高まりました。 ダーク・フレグランスはそこにフィットしたのではないでしょうか。なぜなら、これらの香りは“異世界への旅”を感じさせてくれるものだからです

スモーキーなタバコの葉をカカオやラム酒の甘さに浸した哲学的な香り。エクランドゥフュメ 50ml ¥17,710/SERGE LUTENS(ザ・ギンザ) ラテックスグローブ ¥6,600/KURAGE(クラゲ)

スパイスやウッド、樹脂、 フローラル……今選ばれる素材には、モロッコや中東のムードを含むものが多い。例えばイソップの“オラノン”にはフランキンセンスやミルラ、パチョリが、ルイ・ヴィトンの “ミリアド”にはウードやサフラン、メイローズが使われている。神秘的な空気を内包した香りは、遥か彼方にある異世界への憧れを抱く私たちを、強く魅了する。 かつてはウッディやスモーキーといえば、ダンディで渋さのある欧州メンズフレグランスのイメージが強かった。しかし今の香りたちは違う。男性のロマンティシズムを雄弁に語るような空気はないし、そもそもジェンダーの垣根が存在しない。そこにあるのは、自分の精神性を磨き上げてくれるような、未知の世界へ向かう旅の、出発の予感である。

ダークな中に潜む、艶やかなタッチ

〈左〉パチュリやベリー、ウッドがマグノリアの華やかさに厚みを添える。フローラ ゴージャス マグノリア オードパルファム 100ml ¥21,670/GUCCI(ブルーベル・ジャパン) 〈右〉沈むようにアーシーなウッディノートのなかに、スパイスの閃光を感じて。オラノン オードパルファム 50ml ¥21,450/AESOP(イソップ・ジャパン)

香りのなかにわずかな艶やかさを感じるのも、今のダー ク・フレグランスに共通した特徴だ。セルジュ・ルタンスの “エクランドゥフュメ”にあるラム酒や、ジョー マローン ロンドンの“ダーク アンバー & ジンジャー リリー”に潜むジンジャーやカルダモンなど、果実やスパイスを感じる一筋の閃光が、闇の世界に意外性をもたらしてくれる。

伽羅とアンバー、カルダモンのダークな妖艶さに、軽やかな希望のフローラルフルーティをペアリング。〈写真右〉ダーク アンバー & ジンジャー リリー コロン インテンス 100ml ¥29,590 〈写真左〉イングリッシュ ペアー & スイート ピー コロン 100ml ¥21,340(限定ボトル)/ともにJO MALONE LONDON(ジョー マローン ロンドン)

この艶やかさは“陽”の空気を纏っています。果実はフレッシュで甘やかな気持ちを盛り立て、スパイスは血流を促し活性化する役割を持ちます。だから能動的な色香が生まれるんです。なまめかしいセクシーではなく、ジョイフルで快活な、一歩前へ足を踏み出すきらめきのセンシュアリティです」。ミステリアスなダークネスの奥に、希望の光がすっと差し込む。そのギャップは、出会った人に「今のは何?」と思わせる。もっと知りたいと興味をそそられる、その色香こそが、纏う人のチャームとなっていく。

今魅力的な香りは、フローラル系、オリエンタル系などのように簡単にカテゴライズすることができません。相反する 要素がミックスされていたり、意外性がツイストされています。ミステリアスで個性的だけれど、トリッキーさや威圧感はなく、もっとさりげないんです。香りが持つストーリーも、 わかりやすい人物像を描くのではなく、気分や考え方、姿勢などを提案してくれる、知性に訴えかけるものばかりです」。センシュアリティと聡明さをミステリアスなヴェールでふわ っと包んだ、多面的で奥行きのある香り。それが今求められるダーク・フレグランスの姿なのだ。

話を聞いたのは……
齋藤智子 アロマ調香デザイナー®。京都で10代続く家に生まれ、白檀の香りに魅かれて調香の世界へ。「天然の香りで調える」をコンセプトに日本の精油にこだわり、企業やブランドの空間演出やプロダクト開発など、持続可能性を大切にした香りづくりを行う。

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クラゲ 03-3988-5818
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ジョー マローン ロンドン お客様相談室 0570-003-770
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ルイ・ヴィトン クライアントサービス 0120-00-1854

Text: Ayana Photos: Saram Han Styling: Nazuna(prop), Natsumi Ogasawara(model) Editor: Toru Mitani

※『VOGUE JAPAN』2023年12月号「ダークネス、ひと筋の輝き」転載記事。

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