例年通り、今年もメットガラにはスターが勢揃いしたが、ほかのゲストと比べて群を抜いて輝いていたのがデミ・ムーアだった。カルティエ(CARTIER)のハイジュエリーとハリス リード(HARRIS REED)が手がけたカスタムドレスを纏った彼女は、いくつになっても注目の的で、長い間ハリス・リードと何かしらの形でコラボレーションしたかったという。「身に着けるカルティエのジュエリーと今年のテーマとぴったりで、夢のような組み合わせとコラボだと感じました」と彼女は『VOGUE』に語った。「すべてが完璧に揃ったとしか言いようがありません」
メットガラでデビューを飾った、約10カラットの輝き
この日ムーアが纏っていたジュエリーは、世界初披露の「Chloris」ネックレスとイヤリングのセット。5月末に正式に発表されるカルティエの新ハイジュエリー・コレクション「ナチュール・ソヴァージュ」に含まれるピースたちで、その初披露の場がモード界で最も華やかな祭典であったことはなんともふさわしい。
ギリシャ神話の春の女神「クロリス」にちなんで名付けられたネックレスとイヤリングは、プラチナとダイヤモンドがエメラルドを囲むようにちりばめられたスパイラルが特徴のお揃いのデザイン。風に乗って広がるタンポポの種を彷彿とさせ、ネックレスには7.87カラットのエメラルド、イヤリングには2.25カラットのエメラルドがあしらわれている。
壮麗なジュエリーには同じくらい華やかなドレスが必要だ。圧倒的な存在感を放つ貴石にも引けを取らない豪華な1着をデザインするという大役を、今回ハリス・リードは見事に果たした。「ドレスを製作する過程で、ハリスにネックレスの寸法を送りました。彼はそれをもとに紙で実物大のコピーを作って、ドレスとジュエリーがお互いを完璧に引き立て合うようにしてくれたのです」
「美しいものには棘がある」
ドレスのインスピレーションは、リードが2024-25年秋冬コレクションで発表したルック8。ダブルフェイスのダッチェスシルクサテンのパネルに、デッドストックの壁紙を用いた巨大なピンクの牡丹が目を引くベルベットのドレスは、ムーアの体を伝うに連れて朽ちていくデザインで、スカート部分のしおれかけた花々は手描きのシルクオーガンジーでできている。「ほかのパーツは5,000時間から6,000時間以上かけて手刺繍されました」とリード。「今年のテーマからは、とても繊細で、レースやシースルーを使った今にでも壊れてしまいそうなものを連想する人が多いだろうと思いました」と彼は続ける。「その逆を行きたかったんです。ほんの一瞬レッドカーペットで満開に咲き、そして次の瞬間、ほかの花と同じように朽ちていく様子を彼女のルックで描きたかったのです」
リードは特に棘からインスパイアされ、そこから茨を模した装飾のデザインが生まれた。「美しいものの多くには棘がある。なので、彼女も棘のようなもので周むべきだと思って、そこは大切にしました」
準備の場には愛犬ピラフの姿も
世界各国のショーに頻繁にフロントローゲストとして出席しているにもかかわらず、ムーアは過去4回しかメットガラに参加していない。最初は2001年、ダナ・カラン(DONNA KARAN)に同伴し、その次に来場したのは9年後の2010年。3回目は2011年、アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)を称えた回だ。そして最後にメットガラでキャッチされたのは、サンローラン(SAINT LAURENT)のクリエイティブ・ディレクター、アンソニー・ヴァカレロの同伴者として出席した2019年。
5回目となる今年は、愛犬ピラフが見守る中ドレスアップの準備。その様子に密着した『VOGUE』は、誰よりも早く、カルティエの新たな輝きを目の当たりにすることができた。
Text: Hannah Jackson Adaptation: Anzu Kawano
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