デミ・ムーアとマーガレット・クアリー主演のコラリー・ファルジャ監督による狂気のボディホラー・スリラー、『The Substance(原題)』が5月19日(現地時間)に南フランスで開催中の第77回カンヌ国際映画祭でお披露目され、今会期中最長となる11分間のスタンディング・オベーションで熱烈な歓迎を受けた。
『REVENGE リベンジ』(2018)で批評家から絶賛されたファルジャ監督のカンヌデビューとなる本作は、かつて偉大な俳優として君臨するも、ある年齢を境に落ちぶれた俳優(ムーア)が主人公。仕事を失ったタイミングで、細胞の複製過程を通して、若返りと、より良いバージョンの自分になることを約束するThe Substanceという医療行為の治験参加をオファーされる。治験に参加することを決意するが、結果、彼女の脊椎はぱっくり割れ、背中から新バージョンの彼女(クアリー)が出てくる。若くしなやかで、可能性に満ちた新バージョンの彼女と、元の彼女は、1週間ごとに交代することを条件に、共存することを許されるが……。
ボディホラーとは、肉体が変容することで、観る者に視覚的な恐怖と心理的な恐怖を呼び起こすジャンル。『ヴァラエティ』誌によると本作には、年齢を重ねることの残酷さや自己嫌悪の反動など、ハリウッドにおける女性のメタファーが、グロテスクなまでに視覚的に散りばめられているそうだ。
フランス出身の監督は同誌のインタビューで「(ボディホラーは)女性が抱える問題のすべての陰にあるバイオレンスを描くのに最適なジャンルです」と語る。またフランス国内で#MeTooのムーブメントがますます高まりを見せており、今年のカンヌでもそれが見て取れることについて触れ、こう述べた。「(#MeTooは)この問題に関して私たちがまだまだ築き上げなければならない巨大な壁の中の小さな石の一つでしかありません。私の映画も、その壁を作る一石になって欲しいと望みます。これこそ、私が本作に込めた思いです」