平野紫耀さんとの出会いは、驚きの連続でした! そのスタジオの面している路地はとても狭く、「とても車では入れない」とドライバーに告げられました。スタジオに歩いて向かっていると、スピードを落として走行していた黒い車が、私の背後で止まります。実はこの車も、私と同じところを目指していたのです。車から飛び降りてきたのは、金髪と笑顔がまぶしい、平野紫耀さんでした。「ハーイ!」と気さくに声をかけてくれたこの日本のゴールデンボーイに、私もすぐに挨拶を返しました。車も通れない、なかなかユニークな場に居合わせたことを笑い合うと、私たちは開拓時代のアメリカに繰り出しました──そう、今月号の表紙撮影は「ワイルドな西部」が舞台なのです(p.40)。
天候は完璧でした。青い空をバックに、太陽の光に照らされた平野さんのシルエットがくっきりと浮かび上がります。さらにアーバン・カウボーイをイメージした場面では、干し草の山に横たわり、リラックスした表情を見せてくれました。彼の少年のような魅力が、ウエスタンをテーマにしたルイ・ヴィトンの24年秋冬メンズ・コレクションを、よりいっそう引き立てます。このコレクションをデザインしたのはシンガーソングライターから、世界最大級のブランドのデザイナーに転じたファレル・ウィリアムスです。この撮影の意義は、平野さんもよくわかっています。
長年パフォーマーとしてトレーニングを積み、表舞台で活躍してきた平野さんは、瞬く間にトップに上り詰めたように見えます。でもそのキャリアはまだ始まったばかりです。この撮影のわずか数週間前には、Number_iの一員として、海外初ステージを実現させています。その舞台は、ロサンゼルス郊外で開催されるワールドクラスの音楽フェス、コーチェラでした(このあたりも、かつてはワイルドな西部として知られた場所ですね!)。このステージは、日本に住む私たちをいい意味で驚かせ、平野さん、そしてNumber_iが抱く高い志を見せつける機会になりました。
実はこの撮影の前に、Number_iのライブを見る機会がありました。4日間にわたった東京ドーム公演は全日程がソールドアウト。「GOAT」では会場の興奮がピークに達し、誰もが「GOAT! GOAT!」と叫んでいました(このレターを読んでいる読者の方にも、あの場に居合わせた方はきっといらっしゃるでしょうね)。カリフォルニアでステージに立ったときにも、平野さんの脳裏にこのときの記憶が頭をよぎったのは間違いありません。これは未来に向けた大きなステップで、日本の音楽業界にとってターニングポイントになったと思います。面白くなってきましたね!
今月号のテーマは各界の「ゲームチェンジャー」です。エンターテインメントの世界に加えて、パリでのオリンピック開幕を控え、俄然注目を集めるスポーツ界も取り上げました。世界各地各国のオリンピック出場選手をカメラに収めた、美しいスペシャルストーリーも必見です(p.128)。最前線を走る日本の選手、松田詩野さん(サーフィン)と阿部詩さん(柔道)にもご登場いただきました(p.120)。強い気持ちとたゆまぬ努力があれば、これだけの高みに上り詰めることができると証明する、一人一人のアスリートの姿は、私たちに勇気を与えてくれます。
アスリートでなくても、その装いをお手本にすることはできます。スポーツアイテムをメインにフィーチャーした特集には、私たちもお気に入りのストリートスタイルのミューズやランウェイブランドの、スポーツウェアやキャップ、ポロシャツが並びます(p.68)。
そして夏の到来とともにお届けするのが、ウェルネスをテーマにしてのビューティー特大企画(p.81)。ヘルシーなボディのあり方や、メンタルヘルスの重要性を解き明かしており、今までにないトピックスとなっています。ボディメイキングにもフォーカスしているので、サマーシーズンに向けてチェックしてみてください。そして、私が注目しているのがセルフラブビューティーガイド。気持ちをポジティブにし、自己肯定感を高めてくれる美容メソッドは多くの女性にとって価値ある内容だと思います。
最後に。「ゆったりと夏を過ごすこと」が一番好き、という方には、夏の日のファッションを取り上げた特集もぜひご覧いただきたいです。こちらの舞台は、ロンドンのストリート(p.148)と、輝くように美しい海辺(p.166)です。こうして考えてみると、都会に暮らす人もアスリートも、緊張から解放されるダウンタイムが必要、という点では、共通するものがありますね!
Text: Tiffany Godoy Translation: Tomoko Nagasawa