「私が子どものころ、母から薬物をやってはいけない、セックスをしてはいけない、眉毛をいじってはいけないと厳しく言われていました。そのため、私はこの眉毛のおかげで学校でいじめの標的になり、その度に母に文句を言ったのですが、いつも「いずれ成長したらその眉に感謝する日が来るはず。だからいじってはダメ」と言うだけでした。そして今、私はこの眉で俳優として活動しているのですから、実際母の言うとおりになったわけです」
かつてアメリカのメディア「Byrdie」にこう語ったエミリア・クラークは、 1986年10月23日、イギリス・ロンドンに生まれ育った。ジョージ・R・R・マーティンの小説『A Song of Ice and Fire』をベースにしたファンタジードラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」(2011~2019)のデナーリス・ターガリエン役等でブレイク。今や世界のトップ俳優の一人でもある。そんなエミリアを美しく輝かせるビューティールーティンの要は、シンプルなスキンケアだ。
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「朝晩のクレンジングと保湿、そしてサンスクリーンが欠かせません。やはり紫外線等から肌を保護することは、スキンケアで最も重要だと思っています」と語る彼女が愛用しているコスメは、2020年初頭にブランド初のグローバルアンバサダーに就任したクリニークがほとんどだ。一方で、セルフケアの一環として夜就寝前の日記の習慣も、自身の心を整えるために欠かせないという。
「夜は日記にアファメーションを書いて締めくくります。そうすることで、その日のことをその日のうちに整理して、安心して眠りにつくことができるのです。時に不安を感じたり、自信がなくなったりと落ち込むこともありますが、そんな日には特に効果的で、日記を綴ることで私は上手く自分をコントロールできていると感じます」
過去にはドルチェ&ガッバーナのフレグランス「ザ・ワン ザ・オンリーワン オードパルファム」のアンバサダーに就任したこともあるエミリア。そんな彼女のもう一つの美の秘密が、ルーツであるインドの血だ。
無二の美しさと一族の秘密
「当時、祖母が日常的に自分の肌の色を隠し、ほかのイギリス人たちに合わせようと必死に努力しなければならなかったことは、私の想像を絶するほど苦しかったに違いありません」
こう語る彼女の中には、わずかだがインドの血が流れている。彼女の母ジェニファーの母親──つまり彼女の祖母は、植民地時代のイギリスで曽祖母がインド出身の男性と秘密の関係を持った末に生まれた。そのため、当時のイギリスで壮絶な差別の対象となった祖母は、日常的に父親譲りのダークスキンを白粉でごまかすなど、必死に出自を隠すようにしていたという。
「一族の歴史は、戦いの歴史でもあります」
そんな苦難の時代を生き抜いた祖母は、エミリアが16歳の時に他界した。その遺灰を散骨するため、当時の恋人とともにインドに向かった彼女は、この一族の秘密が自身のアイデンティティに大きな影響を及ぼし、内なる自信へと繋がっているという。
「イギリスで差別に苦しんだ祖母は、イギリスよりインドを愛していました。そのせいか、私もインドには無意識に惹かれてしまうのです。私は、自分の中に流れる8分の1の血を誇らしく思いますし、自分のルーツをとても愛しています」
2度の脳動脈瘤破裂からの生還
「私はそのとき、ジムでトレーナーと一緒にワークアウトに励んでいました。そして、プランクの姿勢になるように指示されたとき、ゴムバンドのようなもので脳を締め付けられる感覚に襲われ、激痛に見舞われました。その痛みを無視して続けようとしたのですが、トレーナーからストップをかけられ、這うようにしてなんとかロッカールームにたどり着きました。そしてトイレに駆け込んだ私は膝から崩れ落ち、頭痛はさらに激しくなり、ひどく気分が悪くなりました。その痛みと言ったら、何かで打たれたような、刺されたような、締めつけられるような痛みで、とにかく尋常ではなかった。だから心のどこかで脳が損傷していると感じたのです」
2019年、「ニューヨーカー」 に自身の体験を寄稿したエミリアは、2011年と2013年の2度にわたり脳動脈瘤による2度の手術の末、生還を果たしたことを明かした。
2011年、「ゲーム・オブ・スローンズ」シーズン1が始まって間もなく、動脈瘤破裂によるくも膜下出血を起こし、緊急手術を受けた彼女は術後に記憶障害や失語症に苦しみながらリハビリテーションに励んだ。しかし、その時もう一つ小さな動脈瘤が見つかり「いつでも破裂する可能性がある」と医師から告げられたため観察状態に。だが、2013年にこれが2倍に肥大化していたことが判明したため手術に踏み切ったが、その手術が合併症を引き起こし「死なせて欲しい」と病院スタッフに懇願するほど苦しんだという。
「これは、私のこれまでの人生で最も恐ろしい体験でした。本当のことを言うと、当初はこの体験を公表するつもりは毛頭なかったのです。『またセレブの泣き言? 売名行為? そんなの読まない』と言われるのではないかと正直恐れていたから。でも一方で、もし私の体験を公表することが誰かの助けになるなら、それは素晴らしいことかもしれない──そう思った私は、公表に踏み切りました。そして実際に、多くの温かい励ましの言葉をいただいたのです」
エミリアが罹患した脳動脈瘤は、脳の動脈の一部が拡張し、瘤(こぶ)のようになった状態のこと指す。未破裂状態で見つかることもある一方で、破裂して出血すると、くも膜下出血や脳内出血などの命に関わる重篤な疾患の原因となり、破裂のリスクは動脈瘤の大きさや形状、部位などによって異なる。そして、未破裂の状態では無症状であることが多く、脳ドックなどで偶然発見されることもあるが、まれに物が二重に見える、頭痛、めまいといった症状をきっかけに発見されることも。そして、もし破裂した場合はエミリアのように激しい頭痛や吐き気、嘔吐、意識障害などに襲われるケースがほとんどだが、その発症の原因は明確ではなく、血管壁へのストレスや喫煙、遺伝などの後天的要因によるものだとされているがいまだ特定されていない。また、加齢とともに発症リスクが上昇すると言われている。
「脳に損傷を負ったときに最初に感じたのは、自分はもうこれまでの自分ではなくなる、ということでした。それは最も恐ろしいことです。なぜなら、どんな状態になっても、この先の人生も自分は自分のままだから。 2度の緊急手術後、失語症や記憶障害に苦しみ、もう動けなくなると心の底から心配しましたが、当時の私の脳にはまだ運動能力が残っていました。そして今、こうして私は普通の生活を取り戻しました。ですが、あのときの苦しみは深く心に刻まれています」
大きく変化した人生観
深刻な病気や身近な人の死は、人生観や目的意識を大きく変えることがある。そしてそれは、エミリアにとっても同じだった。だが、本当に意味でエミリアの内面に大きな変化をもたらしたのは、死の淵をさまよった自身の体験ではなく、父親の死だったという。
「もう一つ動脈瘤があると聞かされたときは、私はいつ死ぬのだろうかと心底怖かったのです。観察期間の間にも、死はだましだまし、確実に私に迫っていました。私は、死ぬことがとても怖かった。でも、本当の意味で死について考えたのは、父が他界したときでした。父の死をきっかけに、人は誰でも死ぬべき運命にあることを悟った私は、死について見つめ、人は何のために生きるのか、なぜ生かされているのか、そして人生で何が重要なのかということを理解し、分析し、自分に問うようになったのです」
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そして現在、死の淵から2度生還を果たしたエミリアは、2019年に立ち上げたチャリティ団体「Same You」を率いて、脳損傷や脳卒中サバイバーの支援活動に力を入れており、2024年2月にはその功績が認めれられ、ウェールズ皇太子より大英帝国勲章(MBE)を授与された。また、無類の読書好きとしても知られ、多忙な俳優業のかたわらプライベートでは多くの時間を読書に費やしながら静かな生活を送っているという。
「今お気に入りの本はスザンナ・クラークの『ピラネージ』、アンソニー・ドーアの『Cloud Cuckoo Land』、リチャード・パワーズの『Bewilderment』、そしてメグ・メイソンの『Sorrow and Bliss』。撮影のあるときは、キャストのためにパンやケーキを焼いたりもしますが、私は今、本当に退屈な人生を送っています(笑)。あるいは、私生活を明かさない、と言った方がいいかもしれません。私には私の人生があり、私生活を世界とあまり共有しません。それに私は、考えを口に出さずただ実行することが多く、世間を騒がせることもあまりしません。つまり、スキャンダルのない私は本当に退屈な人間なのです(笑)」
参考文献:
https://www.byrdie.com/emilia-clarke-skincare-routine-7374024
https://www.allure.com/story/emilia-clarkes-beauty-routine-secrets https://aeworld.com/beauty/award-winning-actress-emilia-clarke-talksfemininity-her-famous-mentors-and-the-latest-dolce-gabbana-fragrance/
https://www.clinique.com/emiliaclarke
https://www.vanityfair.com/hollywood/2018/05/emilia-clarke-cover-story
https://www.newyorker.com/culture/personalhistory/emilia-clarke-a-battle-for-my-life-brain-aneurysm-surgery-game-of-thrones
https://www.theguardian.com/culture/2022/jun/26/emilia-clarke-games-ofthrones-last-christmas-seagull-the-best-place-in-the-world-is-backstage-at-atheatre
https://www.bigissue.com/news/employment/game-thrones-emilia-clarkebrain-injury-parliament/
https://nrtimes.shorthandstories.com/issue23/index.html
https://osaka.hosp.go.jp/shinryo-navi/disease
Text: Masami Yokoyama Editor: Rieko Kosai
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