会場入り口では「ミャクミャク」がお出迎え
「2025年 日本国際博覧会(略称:大阪・関西万博)」が、4月13日(日)〜10月13日(月)までの184日間開催される。この万博には、日本の他に158の国・地域、7の国際機関が参加している。来場者数の見込みは2820万人。「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマのもと、東京ドーム33個分の敷地に180以上のパビリオンが大阪・夢洲(ゆめしま)に立ち並ぶ。
シンプルな“円”に平和への想いを込めた「大屋根リング」
今回の万博を象徴し、会場をぐるりと囲む「大屋根リング」は、一周2kmの世界最大規模となる木造建築。設計・監修した建築家の藤本壮介はデザインに平和への想いを込めたと語ってくれた。
「最先端と同時に、どこか懐かしさが感られて伝統的な雰囲気も漂わせています。世界情勢が不安定な今、この大屋根リングの中に全てのパビリオンが入っていて、このリングで一つに繋いだら素晴らしいものになるのでは。そういったアイデアを元に、中途半端な形ではなく一番シンプルな“円”に辿り着きました。すべての国の大人も子ども、誰が見ても“この場所に今、世界が集まっているんだ”というひと目でわかるようなシンプルな形を目指しました」
木材に開けた穴に別の木材を通して格子状に組み立てるという「貫(ぬき)の工法」というシンプルで伝統的な構造に最新のテクノロジーを組み合わせて、現代の耐震基準に合致した新しい木造建築を生み出している。約70%程度の国産の杉とヒノキに加えて、残りの30%は欧州赤松、ヨーロピアンレッドシダーという輸入材を使用している。
フランス館 テーマは「愛の讃歌」
180以上にも及ぶ個性豊かなパビリオンの中で、VOGUE読者やファッションラバーに最もおすすめしたいのがフランス館だ。テーマは「愛の賛歌」。フランスの卓越性とサヴォワフェールに焦点をあて、没入型の展示や独創的かつ大胆な演出、革新的なプログラムを展開。その中でも、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)、ディオール(DIOR)、セリーヌ(CELINE)というフランスを象徴するファッションブランドによる展示が見どころだ。
ルイ・ヴィトン 84個のトランクが魅せる没入空間
創業以来、ルイ・ヴィトンと日本は、互いを讃え合いノウハウを共有することで、 特別な関係を築いてきた。ちょうどジャポニスムがパリを賑わせていた1870年代頃に、日本人外交官たちの間で注目されはじめ、1896年には日本の家紋がインスピレーション源とも言われるモノグラム・キャンバスが誕生。このことは、メゾンと日本との深いつながりの最初の証と言える。
この万博で、ルイ・ヴィトンが披露するのはダイナミックな没入型のインスタレーションだ。日本人建築家の重松象平(OMA)が設計を担当し、ロダンの「カテドラル」を囲むように、84個のワードローブトランクが展示された空間が舞台となっている。1つ1つのトランクが比類なき職人技を表現し、アトリエの個性を再解釈してリズムで表現したフランス国立音響音楽研究所(IRCAM)との共同制作によるオリジナルのサウンドトラックが、臨場感をよりいっそう高める。
2つ目の空間は、 「トランクのスフィア」が訪れる人を幻想的な五感の旅へと誘う。映像作品を手掛けたのはアーティストの真鍋大度。ルイ・ヴィトンが掲げる旅物語をファンタジックに描いた、まさにヘリテージとイノベーションが交差する作品に仕上がっている。
ディオール ブルー・ホワイト・レッドが織りなす「バー」スーツ
ディオールは、パリのオートクチュールの卓越性を反映し、職人技と手仕事へのオマージュとして、ブルー、ホワイト、レッドの3つのバリエーションで展開されるディオールのエレガンスを象徴するタイムレスな「バー」スーツを展示。1949年にクリスチャン・ディオールがデザインし、パリ2024オリンピック・パラリンピックのために復刻された伝説的なトリコロールカラーのアンフォラ ボトルがそれぞれ、動きの美しさに対する賛辞を表現している。
クチュリエになる前まで建築家を志していたというクリスチャン・ディオール。それを反映しているのが、「LADY DIOR AS SEEN BY」プロジェクトのために2024年に建築家の妹島和世が手がけた「レディ ディオール」だ。
シルエットのスケッチを立体的に表現した約400点の象徴的な白いトワルも幻想的で実に美しい。さらに中央では、日本人アーティストの高木由利子が制作した詩的なイメージが存在感を放ち、ディオールのモデルたちが生き生きとした動きで表現されていた。また、コレオグラフィーは、2021年にアイコニックなメダリオンチェアを再デザインした日本人デザイナー、吉岡徳仁の作品によって彩られている。
セリーヌ 「トリオンフ」の漆アートピースで日本の伝統美を表現
セリーヌは、4月13日(日)〜5月11日(日)までの期間限定で特別展示を開催中。最初の部屋は壁が障子紙で覆われ、日本の伝統的な家屋を連想させる。創業80周年を迎えるセリーヌにとって、日本は長年のパートナーであると共に、無限のインスピレーション源でもあるという。1970年にサンモトヤマに1号店をオープンして以来、日本において事業を展開。また、1978年から1987年まで国産の素材を用いて作られた特別な着物やパールのコレクションなど、様々なショーや発表会を東京で開催したことも。
そんなふうに、日本に対して常に期待と関心を向けてきたメゾンが今回の万博でフォーカスしたのは、アートと伝統の対話だ。石川県輪島市に拠点を置き、伝統的な漆塗りの作品や美術品を制作する日本のアーティスト集団の彦十蒔絵とタッグを組み、漆塗りの”トリオンフ“アートピース3点を特別に制作した。
何千年もの間、日本の伝統や文化をつなぐ道具として使われてきた漆器。彦十蒔絵は、現代の感覚やユーモアを作品に取り入れ、先人が残した大切な思いを後世に伝えている。
また、大阪・関西万博のために特別に制作された限定の「トリオンフ」バッグにも注目したい。黒、赤、金の3色は、彦十蒔絵が特別に製作した漆芸作品から着想を得ており、この3色を組み合わせることで、日本文化の最も伝統的な価値を表している。朱色は復活と再生、黒は雅と形式、金は太陽の光と自然を意味する色。
貴重なレザーを使用し、内側にはラムスキンのライニングが施され、梅のモチーフの金箔押しを施している。梅は、継続と長寿の吉祥を願って広く用いられてきた日本を象徴するアイコン。特別な限定品のしるしとして、それぞれのバッグにはリミテッドエディションナンバリングが施され、内側のライニングに金箔押しされている。本限定品は、万博会場での展示終了後に限られた店舗にて展示・発売を予定している。
「トリオンフ」と日本の美が描かれた、現代美術家の中村壮志とのコラボレーションによるビデオインスタレーション「Ten Landscapes of Dreams」も足を止めて見入ってしまうほど詩的で儚さが感じられた。
ショーメの特別展示にも期待
フランスパビリオンのメインパートナーを務めるLVMHは、2025年9月1日(月)〜10月13日(日)の期間限定で、ジュエリーブランドのショーメ(CHAUMET)の特別展示「自然美への賛歌」も予定している。ショーメは、240 年以上にわたる歴史を持つ自然主義のジュエラーであり、日本とも共通する理念を持ち、自然の美しさと生命力を絶えず讃えてきた。メゾンを象徴するモチーフを紹介するとともに、現代と歴史的なジュエ リーを融合させ、訪れる人を感覚的な旅へと誘うエキシビションも必見だ。
モエ ヘネシーのシャンパン&ロゼワインを堪能
フランス パビリオンのホスピタリティパートナーを務めるモエ ヘネシーは、ビストロのメニューや特別イベントで提供されるシャンパンとロゼワインのセレクションを手がけている。見どころ溢れるエキシビションを堪能した後は、ビストロ(Le Bistrot)でひと休みするのがおすすめだ。フランスならではの料理を、「モエ・エ・シャンドン」や「ヴーヴ・クリコ」、「ルイナール」とともに楽しもう。
大阪・関西万博
会期/4月13日(日)〜10月13日(月)
https://www.expo2025.or.jp/
Photos: Courtesy of Louis Vuitton, Dior, Celine, Moët Hennessy