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4世代で紡ぐフェンディの100年。メゾンのこれまでとこれからに想いを馳せて【2025年春夏 ミラノコレクション】

来年、創立100周年を迎えるフェンディFENDI)。メゾンの舵を切ってきた4世代にわたる女性たちと作り上げた2025年春夏コレクションは、時代をつなぎ、永遠に続くフェンディの物語を紡いだ。

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ブランド生誕100周年を記念する第一弾目のウィメンズウェアコレクションで、アーティスティック・ディレクターのキム・ジョーンズは、メゾンの針路を定めてきた創業家4人の女性に思いを巡らした。

Photo: Umberto Fratini / Gorunway.com

会場のスピーカーからは、フェンディ家3代目のシルヴィア・ヴェントゥリーニ・フェンディが母アンナとメゾン、そして美とファッションの本質について語り合っているのが聞こえてくる。1925年に永遠の都ローマでメゾンの第1号店をオープンしたのはアンナの母アデーレだ。そしてアデーレのひ孫にあたる4代目のデルフィナを、ジョーンズはフェンディFENDI)での主なミューズとして挙げている。ジュエリーデザイナーでもあるデルフィナ。恒例により、この日披露されたジュエリーはすべて彼女がデザインしたもので、アクセサリーはシルヴィアが手がけた。

Photo: Umberto Fratini / Gorunway.com

ジョーンズには構成力、発想力、企画力が圧倒的にある。そうでなければ、あれだけの数のコレクションを同時進行で制作することはできない。そしてミラノではその優れた能力の数々を自身が最も得意とするデザインという分野に役立たせ、フェンディの100年をまたぐコレクションを発表した。長い歳月をさかのぼり、それぞれの時代のテイストを踏襲しているにも関わらず、完成したコレクションは決して無秩序なものではなく、メゾンの技術、カラー、現代性と狂騒の20年代を彷彿とさせる破壊力が44のルックに一体感をもたらしていた。

フェンディ家の歴史が生むモダンデザイン

Photo: Umberto Fratini / Gorunway.com

ショーはアール・デコ風のグラフィックや植物レリーフがビーズ刺繍された、繊細なドロップウエストのドレスで幕をあけ、締めくくられた。ヘムラインにフリンジをあしらったピースも登場したが、フラッパードレスのような時代物の古めかしさはなく、削ぎ落とされたシルエットと刷新されたネックラインが、90年代のスリップドレスやスポーツハイブリッドのモダンな雰囲気を醸し出す。

Photo: Umberto Fratini / Gorunway.com

オープニングとクロージングをいわばコレクションの基盤となるルックで固めたジョーンズは、中盤では創造力を自由に働かせた。ベージュのシアリングローブ、スエード製のクロコ型押し白Tシャツスカート、最高級カーフレザーの「クオイオローマ」で縁取ったメッシュベストなど、異素材を思うままに掛け合わせ、アメリカのヘリテージ・ブーツメーカー、レッドウィング(RED WING)とコラボ制作したシューズランウェイに送り出した。「セレリア(乗馬の鞍)」ステッチを施したモカシンのワークブーツは、フェンディという母系制のブランドが歩んできた歴史を讃えるだけでなく、ラッフルソックスや花柄のドレスと合わせたグランジ風のスタイリングで、時代性をも感じさせた。

Photo: Umberto Fratini / Gorunway.com

90年代に一大ブームを巻き起こしたフェンディのアイコンバッグ「バゲット」も、ジョーンズは多種多様な素材で再解釈。フリンジ付きのタイプ、大容量のタイプ、ボーホーシックのタイプなど、進化した「バゲット」はすべてバッグチャーム、ジュエリー、ファー付きのブーケやラッフル付きのイヤホンケースなどで飾られ、トレンドの最先端を走っている。

Photo: Umberto Fratini / Gorunway.com

さまざまな時代のファッションから着想したディテール、4世代にわたるフェンディ家の個性豊かな女性たち、世代間の固い絆。あらゆる形で「モダンとは何か」を今回問うたジョーンズ。矛盾しているように思えるが、その問いはときに過去からヒントを得たデザインという形で投げかけられた。

フェンディを創立したのはアデーレだが、その名を最初に世界に広めたのは娘たちのアンナ、アルダ、パオラ、カルラとフランカだ。

「母はいつもこう言っていました。『あなたたちを何かに例えるとしたら、それは手よ。手には指が5本あるように、あなたたちも5人いる。それぞれ違って、それぞれ補い合っている』と」そう語るアンナの声が会場に流れる。ファッションでは最近よく「DNA」という言葉が使われているが、フェンディの場合、それはマーケティング手法などではなく、これからも変わらない正真正銘の絆を指している。

※フェンディ 2025年春夏コレクションをすべて見る。

Text: Luke Leitch Adaptation: Anzu Kawano
From VOGUE.COM