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フレグランスの王道「フローラル」。今、最も注目したいのは、現代的な軽やかさをもったアルデヒドとのかけ合わせ

普遍的に愛される、フローラルノート。とりわけ女性に人気で、明るくフレッシュなものからリッチで濃厚なものまで色彩豊かに揃い、フレグランスによってその個性もさまざまだ。軽やかに舞うように花々の印象が広がるものから、コケティッシュで優美なものまでを描き出し、その魅力を伝える。※ジェンダーレス化が進むトレンドの背景や主要な7つのファセットについて解説。「プロが教える、フレグランスの選び方ガイド」の記事もチェック。
フレグランスの王道「フローラル」。最も注目は、現代的な軽やかさをもったアルデヒドとのかけ合わせ
Photo: Hiroki Watanabe(TRON)

ピンクをイメージカラーにもつ、華やかなフローラル

フレグランスのほとんどに用いられる、フローラルノート。「ジャスミンやローズ、イランイラン、チェベローズなどの濃厚な香りも、スズランやフリージアなどの軽やかな香りも有するのがフローラルファセット(※)。質や産地を限定した貴重な天然香料は数々の名香水に用いられてきました 」と解説するのは、香りの専門家でありフレグランススクール「サンキエムソンス ジャポン」の代表を務める小泉祐貴子さん。天然香料は高価になるため、合成香料や再現香料を用いられるのもフローラルの特徴であるという。「やわらかで華やかな、花にある印象をそのままに感じ取れるかのように花そのものを香りに投影。「美しく咲き誇る花の命の輝きを身に纏っているかのような気持ち」と小泉さんが表現する、その匂い立つような美しさを享受して。

フローラルのもつ香りの表現力

最もメジャーなのは、コスメティックかつラグジュアリーな雰囲気のある香りで、多くの人が一度は経験したことがあるであろうフローラル パウダリー。そして、「石鹸のような清潔感のある香り」と小泉さんの言うフローラル アルデハイディックも見逃せない。ローズやジャスミン、オレンジフラワー、ミュゲなどのフローラルノートに、アルデヒドをかけ合わせ、現代的な軽やかさと華やかさを生み出した香りは、時代を超えて多くの人に支持されている。

自由に生きる女性からのインスピレーション。特別な方法で収穫し、蒸留工程にも細心の注意を要す貴重な植物、マグノリアアルバが響く、美しい旋律。フルーティでフローラルとクラリセージが甘美なハーモニーを伸びやかに奏で、エレガントな印象を添える。マグノリアエッセンスを明るく陽気に描いた。グッチ フローラ ゴージャス マグノリア オードパルファム 50ml ¥15,400、100ml ¥21,670/グッチ ビューティ(ブルーベル・ジャパン 香水・化粧品事業本部 0120-005-130)

華麗なチュベローズを主題に、巨匠ジャン=クロード・エレナの調香したパルファム。ベースのサンダルウッド エッセンスが神秘的で深遠な印象を生み出し、スパイシーで匂い立つようなグルマンフローラルに仕上げた。シグネチャー チュベローザ 100ml ¥23,760/ル クヴォン メゾン ド パルファム(カインズ 化粧品事業部 03-6731-9348)

バラの中で最も芳醇で高貴と言われる、トルコのダマスクローズの魅力を閉じ込めた一滴。土と木を感じさせるこの上なくセンシュアルなパチョリと、パウダリーに香る洗練のアイリスを装ったフローラル ウッディ。イランイランやベチバーが豊かに立ち上る香りをスモーキーなレザーが包む、パワフルなエッセンスに心が燃え立つ。レ・ニュイ パルファン 30ml ¥33,000/アスティエ・ド・ヴィラット 伊勢丹新宿店(03-3352-1111)

エゴイスティックなまでに大胆に咲き誇るかのようなローズが芳醇に香る。サンダルウッドやホワイトムスクなどが華やかで潤いのあるムードをプラス。官能的でクリーンという二律背反でデンジャラスな世界を香りに付与する。 “耳で香りを聴き、鼻で音を嗅ぐ”をコンセプトのブランドが贈る、香りのストーリー。ジャズクラブを舞台にトロンボーンの音色が鳴り響く。ローズトロンボーン 100ml ¥27,500/オーケストラ パルファム(ノーズショップ 050-2018-6146)

julianbenini.com

北米、中米、アジア、ヒマラヤなどに広く分布し、その品種は80種以上もあることで知られるマグノリア。数ある品種の中でも貴重で強く芳香するグランディフローラなどを用いた香りは、レモンとジャスミンを感じさせながら幸福感で心を満たす。輝くような光が照らす、春を感じるフローラル スイートノート。オーデパルファム 33 マニョーリア ¥33,000/ラブソルー(アッパーハウス 03-6809-0889)

香港はデザインスタジオ発のコンテンポラリーフレグランスブランド。パウダリーなライスの長閑やかな音色がリズミカルに流れ、華やかで温かなジャスミンとターキッシュローズが踊る。数多の名作を生んだ調香師、マークバクストンの描いたセンシュアルは静謐な空気を内包する。ネイキッド・ダンス/オディティ 50ml ¥39,930(アトリエマクリ 03-6666-9212)

Mourou Alice

ネロリやジャスミンが華やかに香るフローラル ノートは、ブーケに顔を沈めた記憶を蘇るかのよう。アバンギャルドでありながらパワフルな香りの中に、ムスクのアコード・セレノイドが混ざり合う。その鮮やかな“パラドックス=矛盾”を、プラダの象徴とするフレグランスに求めた。プラダ パラドックス オーデパルファム 50ml ¥15,950/プラダ ビューティ(0120-950-992)

※ファセット…香りのタイプのことで全18種ある。同じ分類に属する香料同士をブレンドしてつくられる。

話を聞いたのは……
小泉祐貴子
香りデザイナー。サンキエムソンス ジャポン代表。慶應義塾大学理工学部卒業後、資生堂、香料会社フィルメニッヒを経て、2014年にセントスケープ・デザインスタジオを設立。コンサルティング、香り環境デザイン、香水のプロデュースなどを幅広く手掛ける。近著に『英国王立園芸協会 香り植物図鑑』(Stephen Lacey著 小泉祐貴子訳/柊風舎 刊)。
https://www.cinquiemesens.jp

Text: Akira Watanabe Editor: Rieko Kosai