ハロウィンの女王として君臨するハイディ・クルムは、毎年忘れられないコスチュームを披露してきた。セクシーなロジャー・ラビット、華やかな孔雀、そしてグロテスクなミミズまで、いつも予想外のことをやってのけるクルムは、今年は何かユニークなものに変身しなければならないと思ったという。去年のハロウィンの翌日、彼女は即座にブレインストーミングに取りかかった。
「何かノスタルジックなことをしたいと思ったんです。どの人形で遊んだのか、どんな映画を観たのか、子どもの頃のお気に入りの思い出は何だったのか、記憶をたどり始めました」。そのとき、幼少期に大好きだった映画であり、キャラクターでもあったE.T.のミニフィギュアを偶然見つけたことから、2024年のコンセプトが決まったそうだ。「100万回は観ました。地球の外に生命が存在する可能性を想像し、夢見るきっかけとなった映画です」
もちろん、クルムがエイリアンの格好をするのは初めてではない。2019年には、科学実験に失敗した地球外生命体に変身していた。しかし今回は、ハリウッドの名作映画『E.T.』のキャラクターになりきることに興奮し、夫のトム・コーリッツをカップルでのコスチュームに誘ったという(そう、E.T.は2人いるのだ)。その道のりは2023年11月に始まり、クルムは頼みの綱であるFXアーティストのマイク・マリノに電話をかけた。すぐさまコスチュームの制作について話し合いをし、多くのフィッティングと数えきれないほどの打ち合わせを重ねたそうだ。
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マリノと彼の30人のアーティスト・チームは、クルムとカウリッツの身体と顔のデジタル・スキャンを撮ることから手間のかかるプロセスを始めた。「まず、彼らの身体をデジタルプリントし、E.T.の腕、脚、足などのさまざまなパーツをデジタルスカルプトしました。すべての彫刻を3Dプリントし、成形し、発泡ラテックスで鋳造し、スパンデックスで補強します。チームは、別世界のような目玉、歯、舌、爪に至るまで、細部に至るまでゼロから作り上げました」。マリノによると、「エアブラシですべての仕上げをすることで完成した」という。
最大の難関は、E.T.のあらゆるパーツの比率を正確に把握することだった。「E.T.は普通の人間より小さいので、私やトムの体の位置に錯覚を起こさせる必要がありました」とクルムは話す。さらに困難なことにマリノと彼のチームは、両方の外見を完全にアニマトロニクス化するという課題も抱えていた。マリノは「重くなりすぎず、彼らの頭上でバランスが取れるような被り物を設計しなければならなかった」と説明する。
クルムにとって、コスチュームを着ている間に最も難しいことがヘッドピースのバランスをとることだった。「何時間も着用するため、ヘッドピースは重すぎず、しっかりとしたものでなければいけません。また、衣装と顔のつなぎ目をなじませるために細かいエアブラシも使いました。長く入念な作業でしたが、その価値はありました」
クルムはハロウィン当日の夜、ニューヨークで開催された恒例のパーティーでこのルックを披露した。夫妻はE.T.の仮装をするのにそれぞれ7時間かかり、もちろん準備にはそれ以上の膨大な時間を要した。それでもクルムは「このプロセスには少し気が狂いそうになります! でも大好きなんです」と認める。何年もハロウィンの仮装を続けてきた彼女は、その拘束時間にはもう慣れたという。「この衣装は、パズルのピースやレイヤーがたくさんあって、すべてを完璧にフィットさせる必要がありました」「衣装のほとんどは、何時間も着ていられるような快適なものではありませんが、仕上がりが大好きなので押し通すんです」
正気を保つ秘訣は、「少し瞑想して落ち着きを保つこと。そして結果はそれだけの価値があると自分に言い聞かせること」だという。だが、一日の終わりについては考えないようにしているそうだ。「コスチュームを脱ぐのもプロセスです。ただジッパーを下げて、脱げばいいというものじゃないですから」と彼女は笑う。
クルムが毎年行っているハロウィンのパーティーには、多くのスターたちが仮装をして集い、その努力に値するものであることは確かだ。このセレブだらけの祭典は、1年で最も話題になるイベントのひとつであり、その楽しさと興奮がクルムを何度も何度も開かせるのだ。「私は何を着ようかと期待に胸を膨らませる一方で、実は皆さんの衣装を見るのもとても楽しみにしています」と彼女は話す。「最高の瞬間は、初めて私を見たときの皆さんのリアクションを目の当たりにするとき。その夜のために新しいペルソナを作り、一緒に楽しむことです」
そんなクルムは、ハロウィンの翌日をどう過ごすのだろうか? 「寝て、お風呂に入って、フェイスマスクで自分を甘やかします。仮装に力を入れた後の肌に水分を補給しないといけません。あと仮装のために爪を短くすることが多いから、マニキュアとペディキュアも」。しかし、彼女の最も重要な仕事は、2025年のハロウィンに向けてブレインストーミングを始めることだ。
Text: Christian Allaire
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