90年代に初めてヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA'S SECRET)のファッションショーが開催されたとき、ケイト・モスはスーパーモデルとして忙しない日々を送っていた。2000年代初頭にショーがテレビで放映されるようになり、何百万人もの視聴者を魅了するようになっても、ケイトはヴィクトリアズ・シークレットの存在をそこまで気にかけていなかったという。「もちろん少しは観ましたよ」と彼女は当時を振り返る。「でもあの頃の私は、ヴィクトリアズ・シークレットに似合うモデルではありませんでした」
しかし10月15日(現地時間)、6年ぶりにカムバックを果たしたヴィクトリアズ・シークレットのファッションショーで、ケイトは50歳にしてサプライズデビューを果たした。ジジ・ハディッドやパロマ・エルセッサー、そしてタイラ・バンクスやアレッサンドラ・アンブロジオといったエンジェルたちが笑顔で観客たちに手を振りながら歩くなか、ケイトは彼女らしいクールな表情を湛えながら登場。マチュアなブラックレースのドレスにチュールの羽を纏い、元祖スーパーモデルの名にふさわしい貫禄たっぷりのウォーキングを披露した。その姿は、より多様かつボディポジティブで、年齢にとらわれないヴィクトリアズ・シークレットの新時代の幕開けを象徴しているようだった。
ケイトに参加を促したのは、ショーのスタイリングを手がけた元『VOGUE PARIS』編集長のエマニュエル・アルト。ショーの後、ケイトはアルトについて「私のお気に入りのスタイリストの一人。彼女のやることなすことすべてがクールなんです。素晴らしい審美眼の持ち主だから、安心できました」と明かしている。
それでも、2022年のボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)のショーを最後にランウェイを歩いていなかったケイトは、少し緊張していたようだ。「楽しくてエキサイティングだとわかっていても緊張しますね。なんせスケールが大きいですし。次から次へとショーを駆け回っていたときは、緊張する余裕なんてなかったから。でも今は、ショーの8時間前になるとヘアメイクのために現場入りするんです」。そんな彼女の緊張を解きほぐしたのは、バックステージにいた見知った顔ぶれだ。「(娘の)ライラもいるんですよ! それから私の友人のジョアン・スモールズにカーラ・ブルーニも」