プリンセスドレスで堂々とウォーキング
オートクチュールコレクションは、繊細な職人技が紡ぎ出す極上のファンタジーだ。膨大な時間をつぎ込み丁寧な手作業を施したドレスはそれだけでも十分に美しいが、それを纏うモデルの存在感が加わればいっそう優美なオーラを放つ。
2023年秋冬オートクチュールコレクションにおいて、その役割を担ったのが中国人女優のファン・ビンビンだ。レバノンのファッションデザイナー、ジョルジュ・オベイカ(GEORGES HOBEIKA)のショーにモデルとして出演し、淡いパステルブルーのシルクシフォンが幾重にも重なったボリュミーなドレスで圧倒的なウォーキングを披露した。彼女のファン目線で見ると、プリンセス風の可憐なデザインはいささか物足りないように感じたけれど、オートクチュールの盛り上げ役として大いに観客を惹きつけたようだ。
ヴィクター&ロルフの“ピースマーク”ドレスでポップに
ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)のショーではゲストとして参加。鮮やかなピンクに“ピースマーク”のアップリケが付いたドレスは、スポーティーな雰囲気が漂っており、ファン・ビンビンが普段選ばなそうなデザインだ。ストローがクルッと巻かれたようなポップなフープピアスも実に新鮮。そこに彼女の真骨頂である濃いめの妖艶メイクが遊び心をもたらしている。どんな装いでもメイクのテイストを変えない姿勢もブレていない。
オートクチュールの常連カーディ・Bとツーショット
ガウラブ グプタ(GAURAV GUPTA)のフロントローでは、オートクチュールを大いに盛り上げるカーディ・Bが隣に着席。この日のファン・ビンビンは、比較的シンプルなブラックドレスをセレクト。陶器肌とレッドリップがよく映えていた。
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いつ見ても圧倒的!母国愛を感じずにはいられないレッドカーペット集
ファン・ビンビンの突き抜けた美しさは、ランウェイよりもレッドカーペットでこそ真価を発揮する。記憶に新しいのが、今年5月に開催されたカンヌ国際映画祭での「吠える虎ドレス」。中国の伝統的な猛虎下山図を繊細な刺繍やスパンコールで施したデザインは、まさに他を寄せ付けない力強いオーラを放っていた。
彼女のドレス選びには、一貫したルールがありそうだ。これまでも、猛虎のインパクトに匹敵する古代宮廷の王女モチーフや中国で縁起の良い象徴とされている龍など、自らのアイデンティティやルーツをドレスに落とし込んでいる。2018年に起きた巨額脱税騒動後は中国芸能界から姿を消したと言われているが、彼女の度肝を抜くスタイリングから母国への愛を感じずにはいられない。
抜け感とは無縁!
レッドカーペットの着こなしにおいて、多くの女優は「抜け感」や「引き算」を意識するものだが、ファン・ビンビンには無縁。むしろ、とことん盛りまくる。今年のカンヌ映画祭で披露した女神ルック(上の画像)は、伝統的なオートクチュールに新たな息吹を吹き込む新進気鋭の韓国人クチュリエ、ソーヒー・パークによるミス ソーヒー(MISS SOHEE)のドレス。煌めくビジューで作られたローズモチーフのセクシーなトップは、自ずと抜け感が出ても良さそうだが、この熱盛り感がたまらない。ファン・ビンビンは「こうでなくちゃ!」と思わせてくれる。
ファン・ビンビン以上に、こんなにも観る者をワクワクさせる国際的女優がいるだろうか? パリコレ・オートクチュールは、ファンタジーに満ちたモードの祭典だ。来シーズンも圧倒的かつブレない美貌でオートクチュールシーズンに華を添えてくれることを期待したい。
Photos: Getty Images
