FASHION / TREND & STORY

コペンハーゲン・ファッション・ウィークで発見! 北欧ファッショニスタたちが今注目する、新進気鋭ブランド3選【若手デザイナー連載】

2025-26年秋冬コペンハーゲン・ファッション・ウィークでひと際存在感を放っていた3つのブランドをご紹介。北欧ファッションの“今”をリードする新たな精鋭たちをマークして。
Photo: Josefine Haaning Jensen/ Courtesy of Birrot

近年の北欧ファッションを牽引してきたブランドといえば、ガニーGANNI)やセシリー バンセンCECILIE BAHNSEN)、トーテムTOTEME)などが挙げられるが、コペンハーゲンのストリートでは新たなレーベルがファッショニスタたちの注目を集めている。コペンハーゲン・ファッション・ウィークのCOOを務めるイザベラ・ローズ・デイヴィーによれば、この都市では現地デザイナーをサポートする動きが活発だそうだ。「エローエホーベ(A.ROEGE HOVE)やニクラス スコウゴー(NICKLAS SKOVGAARD)など、ここでは北欧のファッションシーンを形成するデザイナーを纏うことに対するひたむきさがあります」

以下では、つい先月行われた2025-26年秋冬コペンハーゲン・ファッション・ウィークでランウェイデビューを果たした3つの新進気鋭レーベルをご紹介。すでにインサイダーやセレブたちの支持を獲得しているユニークなデザインは要マーク。

BIRROT ビロット

ビロット 2025年春夏コレクションより。

Photo: Courtesy of Birrot

韓国出身のデザイナーデュオ、キム・キョンミンとホン・セヨンによって2018年に設立されたビロット(BIRROT)は、北欧のミニマリズムと韓国特有の精巧さを融合させている。ブランド名は、「プロセスを結果に導く」という意味の韓国語「birrot-hada」が由来。テーラードのツーピースやベーシックなニットは、ソフィア・リッチー・グレインジといったセレブのほか、ヨセフィン・ヘニング・イェンセンのようなデンマークの人気クリエイターたちにも着用されている。

──ブランドの美学についてお聞かせいただけますか?

私たちにとってこのブランドは、デンマークと韓国をつなぐものです。私たちは生まれ育ったソウルの伝統的な衣服からインスピレーションを受け、韓国のパターンを基礎として学びました。コペンハーゲンに移り住み、まったく新しい考え方に出合ったことで、デザインへのアプローチも変わっていきました。私たちの美学を織りなすのは2つの異なる文化の融合であり、実用的でミニマルなものです。

──ミューズとなる人物はいますか?

ミューズは私たちの母親です。実は偶然にも名前が同じなのですが、ふたりは常にムードボードにいますね。彼女たちの写真に写っている質感や色、感情が、毎シーズン私たちを導いてくれています。

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──コペンハーゲンのお気に入りのスポットは?

コペンハーゲンの中心部にお店とスタジオを持つことができて、とても幸運だと感じています。ResellerBar Vitrineなど、お気に入りのレストランやカフェ、ショップがすぐ近くにあるんですよね。また、Lee's KitchenEt Cetera、ナチュラルワインを楽しめるRosforthも大好きです。

BONNETJE ボネチェ

ボネチェ 2025年春夏コレクションより。

Photo: Courtesy of Bonnetje

メゾン マルジェラとセシリー バンセンでそれぞれ腕を磨いたヨーコ・マーヤ・ハンセンとアンナ・ミンテケアが2021年に立ち上げたボネチェ(BONNETJE)。名門美術大学として知られるアムステルダムのヘリット・リートフェルト・アカデミーの卒業生であるふたりは、ヴィンテージスーツの解体し、新たなコレクションへと生まれ変わらせている。オランダ語で領収書を意味するブランド名は、ふたりが古いスーツのポケットのなかにクリーニングのレシートを見つけたことがきっかけで付けられた。

──ブランドをスタートさせたきっかけを教えてください。

アンナの地下室でたくさんのヴィンテージの服を裁断したり縫い合わせたりしていて、そこからゆっくりと発展していきました。そこはクリエイティブな遊びのようなものでしたね。ほかのデザイナーのもとで働いたときに貯めていたアイデアで、試してみたいものがたくさんあったんです。最初はあらゆる種類の服を扱っていたのですが、徐々にスーツだけにフォーカスするようになりました。私たちはふたりともスーツとその構造に大きな魅力を感じていました。スーツのなかをのぞくというのは、宝箱を開けるようなものです。

──これまでにどんな人たちがボネチェの服を纏ってきましたか?

ビョークが私たちの靴を買ってくれたことがあります。彼女は典型的な北欧ガールではないかもしれないけれど、私たちの服を着てほしい人であることは間違いないですね。私たちのやり方とは違う、みんなの色々な着こなしを見るのがとても好きです。例えば、アルファ(北欧の若手デザイナーをサポートするプラットフォーム)を運営するアネ・リンゲ・ヨルレンのスタイリングは見ていてとても楽しいです。

コペンハーゲン・ファッション・ウィークのCOOを務めるイザベラ・ローズ・デイヴィー。

──サステナビリティの実現に向けてどういった取り組みをしていますか?

できる限り廃棄された衣類を活用し、生産と調達は地元で、それが難しければヨーロッパ内で行うようにしています。私たちにとって一番大切なのはデザインです。自分たちのスタイルを貫きながら小規模な生産にとどめ、成長させながらも過剰に発展させないようにすることが、正しいやり方だと感じています。

STEL ステル

ステル 2025年春夏コレクションより。

Photo: Courtesy of Stel

アストリッド・アンデルセンは、自身の名を冠したストリートウェアブランドの指揮を10年以上執り、エイサップ・ナストやノオミ・ラパスなどのファンを獲得した実力派デザイナー。子育てに専念するため3年間ほどファッションから遠ざかっていたが、2024年夏に新しいウィメンズウェアブランドのステル(STEL)をローンチした。

──ブランド設立に至るまでのストーリーをお聞かせいただけますか?

20代半ばの頃に立ち上げたブランド、アストリッド アンデルセン(ASTRID ANDERSEN)から発展したものです。人として、そしてクリエイターとして成長するにつれ、自分のスタイルや興味など、すべてが少しずつ進化していくものです。このブランドはそういった過程から生まれたもので、新しい視点を持つ必要性も感じていました。

──ステルでのアプローチはどういったものでしょうか?

私の服に対する個人的なアプローチと、スカンジナビアのバックグラウンドにもっと調和したプロダクトとワードローブ作りというコンセプトに重点を置いています。最初に服の用途について考え始めたとき、スケートができるテーラリングというアイデアに何度も立ち返っていました。私はメンズウェアのデザイナーとして経験を積んできたので、着心地や動きやすさというのは、服を通して力を与える上で不可欠な要素です。また、ノンシーズナルとは言いたくないのですが、間違いなくコレクションベースのアプローチで考えています。タイムレスでありながら、同時に独自のコンセプトを持っているような作品を作るのが楽しみです。

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──自分自身を意識してデザインしていますか?

これまでとは全く違う世界ですね。(前進となったブランドとは違い)自分自身を参考にしているから、私がミューズとしてブランドを体現しています。私はEUサイズの44なので、サンプルを送り返してもらったらサイズにとらわれず着られるかどうか確認します。これは私にとってすごく重要なステップです。ウエストバンドや縫い目の内側に調節可能な要素を取り入れることで、サイズアップしても簡単に着られるようにしています。ずっと着られる服を作るということについて、会話が必要だと思っています。

Text: Emily Chan Adaptation: Motoko Fujita
From VOGUE.CO.UK

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