パーソナルトレーナーでありながら、食にまつわる著作を多く手がけているボディワーカーの森拓郎さん。彼いわく、運動で痩せる、引き締めるというのは時間がかかることで「週1ペースでパーソナルトレーニングを続けた場合、1年かけて筋肉が1~2kg増えるのが目安」だというから道のりの遠さに圧倒される。それではこの春夏ファッションを着こなすのに間に合わない!─と心配することなかれ。痩せるよりもスピーディに、ヘルシーに、そして確実に着映えする体へと整えるマジックがある。それが“姿勢”だ。
理想のボディへの近道は姿勢にあり
「姿勢の良し悪しでファッションの見え方はがらりと変わります。特にお腹や二の腕は、姿勢が整うと与える印象が変わるパーツです。姿勢を専門家が判断するときに見るポイントは、頭、肋骨、骨盤の3つ。横から見たときにこの3つがしっかりと乗っているか、まずはチェックしてください。現代的な生活では間違いなく、頭が前に落ちていきます。それではバランスがとれないから骨盤やお腹を前に突き出す。ズレるとその分ほかのパーツが縮まります。その結果、腰が反りすぎて痛みが生じたり、首が詰まってたるんでしまうのです。その影響で、中長期的には太ももの筋肉が張ってきたり、鎖骨周りの筋肉が圧迫されて脇周りがムチムチしてきたり体が全体的にずんぐりとした印象になります」。
自分の姿勢が心配になった人は、お腹の力が抜けていないかチェックしてみよう。たとえば洗面台やキッチンに立ったときに、体の前面で軽くもたれかかっていないだろうか。あるいは電車に乗ったとき、ドア脇のスペースで背中や腰を壁に預けていないだろうか。こういった姿勢は、普段の姿勢を維持するためのインナーマッスルが弱っている証し。いきなり正しい姿勢をとろうとするのではなく(胸を張った、無理のある姿勢になる可能性大)、普段の生活の中で何かにもたれかからずに立つ、姿勢を崩さず座るといった小さな努力は案外ものをいう。「姿勢は結局、意識の問題なんです。正しい姿勢のほうが体に負担がかからないのに、それはしんどいと思ってしまう、崩れた姿勢のほうがラクに感じてしまう。まずは、正しい姿勢を1~2分キープするところから始めてください。すぐに体重を逃がしたくなる自分に気づき、正しい姿勢をとる時間が増えれば立派なトレーニングになります」
そういった姿勢の問題が、関節周りの歪みや全身のむくみも引き起こしていると教えてくれたのはサロン・ド・スウィンオーナー田中由佳さん。年齢を重ねるとクリニックでのケアを取り入れる人も増えてくるけれど、表面の肌だけ引き締めても内側がそれに追いつかず、ズレが生じている人もいるというから要注意だ。「自分の歪みに自分で気づくのは難しいから、歪みを発見することにこだわらなくて大丈夫。それよりも、まずは一番気になるパーツをマッサージしてみましょう。特に35歳を超えたあたりから静脈の戻りが悪くなるので、関節周りのリンパ節が硬くなります。そうすると筋肉のアライメントも崩れてくるので、まずはほぐすこと、流すことが先決」
冬の間にむくみと冷えをケアすれば睡眠の質も良くなり、その結果、サイズも変わってくるというからありがたい。「痩せないなと思ったら、まずは眠れているかどうかをチェックすること。必ず湯船につかる、足首やお腹は温めるなどもおすすめ。むくみとりに一番効果があるのは、良質な睡眠なんですよ」というから試す価値あり。森さんも「きちんと朝日を浴びてホルモンや自律神経の作用が整うと、血糖値も安定しやすいし睡眠の質も向上します。夜にメラトニンを生成するためには、タンパク質をきちんと摂ることも重要ですね。また、寝る時間が遅いとホルモンの出方が変わってしまうので、夜12時前に寝るようにしてください」と睡眠の効能を教えてくれた。
ワークアウトや食事制限よりも簡単で、しかも確実に効果が出る姿勢と巡りのマジック、今すぐ取り入れて春モードを着こなして。
話を聞いたのは……
YUKA TANAKA
田中由佳。サロン・ド・スウィンオーナー。心身に響く独自のトリートメントで美容業界にも多くのファンを抱えるエステティシャン。悩みに徹底的に寄り添うスタイルと人柄で、2代で通う親子も。ウエディングや産後のボディメイキングも多く手がける業界の重鎮。
TAKURO MORI
森拓郎。ボディワーカー。「rinato」主宰。パーソナルトレーナーとして活躍する傍ら、食事改善の大切さを説く書籍が大ヒットに。やみくもに鍛えるのではなく、筋肉を増やしてスタイルをつくる指導で俳優やモデルからも人気に。オンライントレーニングも好評。
問い合わせ先/MTG 0120-46-7222
ドリームファクトリー 03-6281-8928
Text: Satoko Takamizawa Editor: Risa Yamaguchi
※『VOGUE JAPAN』2025年1月号「大人の“肌見せ” ファッションとボディの定義」転載記事。
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