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11個の凍結卵子を解凍して顕微受精にチャレンジ!【卵子凍結したライターMのその後〜不妊治療編vol.2】

凍結卵子で自費で体外受精をするか。それとも保険適用で体外受精をするか。42歳のライターMは、迷って前者にすることに。卵子の移管や高額な費用など、凍結卵子を使用する道もなかなか険しかった。卵子凍結を利用しての不妊治療の道のりをリアルレポート。

凍結した卵子を移管できるかどうか調べた方がいい

42歳で体外受精をすることに決めた私。凍結していた卵子を使わずに、保険適用で“普通に”不妊治療をするという選択肢もある。凍結卵子を使って自費で受精からするか、凍結卵子を使わずに保険適用で採卵からスタートするか。どうしよう!?

私は迷って、自費でも凍結卵子を使うプランにすることにした。というのは、実は最後に採卵したときに、卵子は1個しか採れずしかも変性卵だった。新たに採卵してもまともな卵子が採れない可能性は大いにある。加えて、ここでまた採卵したら、過去に頑張って卵子凍結をした意味がなくなってしまう気もした。

いざ、凍結した卵子を使うときに。私はもうひとつ気づいたことがある。

・凍結卵子を他の病院に移管できるか否か

・凍結卵子の保存期間に年齢制限があるか否か

卵子凍結をする際には、これを調べておくのがとても重要! というのは、2個の卵子を採卵したクリニックAとは治療の過程で相性が合わないなと感じていたのだが、凍結卵子は他の病院に移送禁止のため、必然的にそこで不妊治療をしないといけない。卵子はいわば“人質”。「卵子凍結をした病院で不妊治療をする」という決まりはないわけだから、そこは自由度が高いクリニックを選んだ方がいいと思う。ただし、凍結卵子の移管は結構高額(5万以上はかかると思う)だし、精子や受精卵に比べて壊れやすい。だから、「卵子凍結だけでなく不妊治療をしても悔いはない」という病院を見つけて、そこで卵子凍結をするのがベストかもしれない。

また、卵子凍結の保存期間に45歳までとか年齢制限があるところもある。移管禁止でかつ年齢制限があると、卵子は廃棄するしかなくなってしまう可能性もあるのでこれも要注意!

11個の卵子を解凍して顕微授精にチャレンジ

私はクリニックAに預けている凍結卵子2個はとりあえず置いておいて、クリニックBの凍結卵子11個を使うことにした。11個全てを解凍する方法もあるし、半分とか回数を分けて解凍して受精させる方法もある。幸いパートナーの精子は問題がなかったし、私は潔く“一発勝負”にすることにした。

「凍結した卵子を念願のお迎え!」ということでワクワクするかと思いきや、私のメンタルは最悪。不安で寝られないくらいだった。この11個の卵子を使って妊娠できなかったら、どうしよう。考えるのはそればかり。そして、コツコツ貯めてきた貯金を崩してしまうような気持ちもあった。

解凍当日、私は11個のうちのひとつの卵子が解凍されてほどなくダメになったことを知った。そして次の日、残された10個のうち5個が無事に顕微授精で受精したことを知った。医師と相談して、私はグレード3 の分割期胚を2個、子宮に戻すことにした。残りの3個は培養器で胚盤胞まで成長させて冷凍。今回の移植で妊娠しなかったら、次は冷凍させた胚盤胞(受精卵)を移植させるというフローだ。

妊娠しなかったけれど卵子凍結してよかったと思う理由

結論からいうと、私はクリニックBの凍結卵子を使っての妊娠はできなかった。ここで、クリニックAの凍結卵子2個をお迎えにいくという手もあったが、私はやめて保険適用で新鮮卵子で体外受精をすることにした。

・凍結卵子11個で妊娠しなかったのだから、凍結卵子2個で妊娠する可能性は著しく低いと思った

・卵巣は刻々と老化するのだから、一刻も早くまた新鮮卵子を採った方がいいと思った

・クリニックAの凍結卵子の保存期間は45歳までの一方、不妊治療の保険適用は43歳になるまで。後者を急いだ方がいいと思った

・凍結卵子よりも新鮮卵子を使った方が妊娠率が高いという説がある

というのが主な理由だ。ちなみに、卵子11個の融解→顕微授精→初期胚2個を移植のフローで、600,000円弱。病院や患者の収入など(保険治療は自己負担限度額​​を超えた分は払い戻されるため)で異なるだろうが、保険適用で採卵→受精→移植をするのと同程度か割高なのではないだろうか。

妊娠しなかったのだから、私は卵子凍結をしたことを後悔しているのか? 答えはNO。私が考える卵子凍結のメリットは大きくふたつ。一つ目は、“できることはやり尽くした感”を持てること。卵子凍結をしていなかったら、今後不妊治療が上手くいかなったときに、「あのとき卵子を凍結していれば……」と少なからず後悔したと思う。二つ目は、卵子凍結のために採卵をしたことで、不妊治療に向けてすぐ行動できたこと。多くの物事は、知識を詰め込むだけでなく実際に体験してみないと見えてこないって思う。例えば、投資の本をたくさん読んで色々な人に投資のコツを教えてもらったとしても、実際に自分でお金を払って投資というを体験してみないと見えないことって多いのではないか。卵子凍結もまさに百聞は“一体験”に如かずの域で、卵子凍結に費やしたお金は、不妊治療を始める前の授業料だったと割り切ることもできる。

病院を選んで、実際に診察を受けて、採卵誘発剤の副作用に耐えて、ときには自分で注射を打って、採卵日のためにスケジュール調整をして…という作業は自分で体験しないと、どれだけ大変なのか辛いのか、そうでもないのかが分からない。卵子凍結をしていなかったら、私は不妊治療を実際に始める前に半年くらいはモヤモヤして動けなかったと思う(実際、卵子凍結に興味を持って、実際に行動に起こすまでに半年くらいかかった)。少なくともある程度の年齢になったら不妊治療は時間との戦いなのだから、卵子凍結の経験があることですぐに動けてよかったと思う。

Photo:Getty Images Text: Kyoko Takahashi (@kyokotakahashi2023 ) Edit: Kyoko Muramatsu