「何となく家でゴロゴロ」では疲れは取れない
「何もしないでゴロゴロする、というのは実は間違った体の休ませ方です。疲れをきちんと取るには、行動するための活力を貯金する“攻めの休養”を取ることが重要なのです」と、休養学の第一人者である片野秀樹先生。
“攻めの休養”は、大きく以下の3つに分けられるそうだ。
「数時間横になろう」と決めてから寝るのが大事
1つ目の生理的休養で代表的なのは、睡眠や休憩を取る、ソファで寛ぐなどの休息タイプ。活動をいったん中止し、エネルギーの消費を抑えて心と体をリラックスさせるものだ。「休む」というと、まず思いつく人が多い行為なのではないだろうか?
興味深いのは、自分の意識のもち様で、同じ「休憩を取る」という行為でも効果が変わってくること。
「『疲れきっていて何をする気力も起きないから、一日中ベッドでゴロゴロしてしまった』という休み方では、活力を高めることはできません。『今日は体の疲れをとるために数時間横になっていよう』と、自分で決めて能動的に休憩するのがポイントなのです」
生理的休養には、ヨガやストレッチ、ウォーキングなど軽く運動する方法もある。疲れるまで運動するのは逆効果で、あくまでもリフレッシュする程度に軽く体を動かすのが大切だ。
また、「平日は忙しくで出来合いの食事が多くなってしまいそうだから、週末のうちに栄養のバランスを取れた食事をとる」、「平日は会食が多くて胃に負担がかかりそうだから、週末は軽い食事で済ませて胃を休ませておこう」などの、食事の見直しも含まれる。
推し活や自分の夢を妄想することで、疲労を回復
2つ目の心理的休養には、人と触れ合ったりや自然を楽しむなど、心をリラックスさせるものが含まれる。代表的な休み方の例は、以下の通り。
<親交する>
家族や友人と楽しく会話するなど、人と親しく交わることでストレスを解消し活力を得る休み方。親しい相手と会う時間が取れなかったら、近所の人に「こんにちは、お元気ですか」などと、声がけをするのでもOK。また、ペットと触れ合うのも親交の一種。
<自然を楽しむ>
森林浴など自然との触れ合いも、休養の大切な要素。森林に行くことによって、幸せホルモンであるセロトニンが分泌されるとも言われている。出かけるのが難しい場合は、川のせせらぎや鳥の鳴き声などの自然音を家にいながら聞くなど、音楽での自然浴なら手軽にできそう。
<趣味に耽ける>
本を読む、映画を観る、推し活をするなど、自分の好きな趣味に没頭するのも休養になる。無趣味という人は、「鼻歌を楽しむ」「香水をつける」などの、何気ないことでも、気分を変えられるならOK。ストレスのさなかは頭がいっぱいになってしまい何をしたらいいか思いつかなくなるので、あらかじめ気分が上がる方法をリストアップしておくのが良いそう。
<創作活動をする>
絵を描く、DIYをするなど、何か創作活動をするのも活力を高める。必ずしも目に見えるものを残す必要はなく、瞑想や空想でもOK。自分の叶えたい夢や大好きなアイドルについて考えるなど、好きなことについて空想することでも効果がある。
3つ目の社会的休養とは、周りの環境を変えることを指す。代表的なものは旅行。休みというと旅行に出かけ、心や体を回復させる効果を実感する人も多いのでは? また、そこまで大掛かりなことではなく、「洋服を着替える」「部屋の模様替えをする」「机を整理整頓する」など、自分の肉体の外部環境を少し変えることでも効果的だそう。
子育てや家事も、発想の転換で休養になる
さまざまな休養のタイプを紹介したが、自分が取り組みやすいものから、ぜひスタートしてみて。そして、「旅行に行って(社会的休養)、地元の人と触れ合う(心理的休養)」など、色々なもの組み合わせることで、疲労回復効果は倍増するそうだ。
とはいえ、仕事と家事、子育てでそんなことをしている時間がない! という女性たちの悲鳴も聞こえてきそう。これに対して片野先生は、家事なども考え方の工夫で休養につながり得る、とアドバイス。
「家事や子育てをタスクとして考えると、どんどん疲れてしまいます。少し発想の転換をして、『子どもと公園まで歩いて(生理的休養)、近所のお母さんと会話を楽しむ(心理的休養)』『子どもと一緒に冷蔵庫の残り物で消化に良いスープを作って(心理的休養)、胃を休ませる(生理的休養)』など、これは休養なのだという意識を持って、目の前のことをしてみてはどうでしょうか? 毎日の“しなくてはならないこと”は、工夫次第で活力を養うものとなり、あなたの充電量を増やしてくれます」
話を聞いたのは……
片野秀樹先生
日本リカバリー協会代表理事、博士(医学)
東海大学大学院医学研究科研究員などを経て、現在は一般社団法人日本未病総合研究所未病公認講師(休養学)や、株式会社ベネクス執行役員を務める。日本リカバリー協会では、休養に関する社会の不理解解消やリテラシー向上を目指して啓発活動に取り組んでいる。近著に『休養学:あなたを疲れから救う』(東洋経済新報社)。
Text:Kyoko Takahashi Editor:Kyoko Muramatsu