─新店舗の内装には靴箱やパターン紙を保管する引き出しなどが用いられていて、煌びやかなジミー チュウ(JIMMY CHOO)のアイテムとはユニークなコントラストをなしていますね。
サンドラ・チョイ(以下・SC) クロスビー スタジオが店舗デザインを手がけ、ストックルームをイメージしています。シンプルなアイデアなのにインパクトがありますよね。クラシックな印象のする銀座の街で存在感を放っていると思います。
─久しぶりの来日だそうですが、日本にはどんなイメージをお持ちでしょうか。
SC 上質なものが揃っているし、皆親切で礼儀正しい。地球上で最高の場所の一つです。私はイギリス・ワイト島出身で生後8カ月で香港に渡って祖父母と暮らしたのですが、物心がついた頃の香港では日本のカルチャーが一番クールだとされていて私も夢中だったんですよ。以前コラボレーションした『美少女戦士セーラームーン』も日本が大好きだから知っていました。
─全く異なる環境で育った経験は今どんな影響を与えていますか?
SC ジミー チュウは世界中でビジネスを展開していますし、スタッフの出身地もさまざまです。ですから異なる文化を体験できていたことは幸運だと思っています。私には2人の娘がいますが、彼女たちにも世界を見せてあげたい。やはり「百聞は一見にしかず」ですから。
─サンドラさん同様、アジアルーツで世界で活躍することを目指している若手デザイナーにアドバイスをお願いいたします。
SC 今はそこまで資金がなくてもソーシャルメディアで世界中にアピールすることができますし、製造業も若手を受け入れるようになってきているので出身地や所在地は関係ないと思います。技術を身につけ、柔軟な姿勢で情報を取り入れて独自の視点を持つことですね。そして最後に必要なのは運でしょうか。機会に恵まれなかった多くの才能ある人々を見てきましたので……。
─「運も実力のうち」なのですね。ちなみに今注目されている若手はいますか?
SC 先日英国ファッション評議会が主催する「ファッション・アワード2023」に出席したのですが、受賞者のコナー・アイヴズが気になりました。NY出身でロンドンを拠点にしていてまだ20代。アップサイクルの手法を用いています。アジア出身の新進デザイナーの友人もたくさんいますが、学生など、もっと若い世代をサポートしたいと思っています。ジミー チュウの親会社であるカプリ・ホールディングスがシューズデザインに特化したマイノリティ向けのペンソール ルイス カレッジと提携していて、私もワークショップなどに参加予定です。新しい才能との出会いはジミー チュウの伝統を見直し更新するきっかけにもなり、私にとっても刺激となっています。
Photos: Keiichiro Nakajima (portrait), Courtesy Photos (rest) Interview & Text: Itoi Kuriyama
