BEAUTY / EXPERT

vol. 4 セックスと家族——不安を感じているのは、貴女だけじゃない【連載・内なるエロスの高め方】

美容編集者歴30年。あらゆる角度でビューティーを分析してきた麻生綾が縦横無尽に「エロス」を語るこの連載。今回は、セックスと家族の関係値について。

答えの出ない大きな議題

メリル・ストリープ主演作『31年目の夫婦げんか』(2012)では、ふたたびセックスをするため努力する描写が。Photo:  Barry Wetcher/©Columbia Pictures/Courtesy Everett Collection

最初に。これから書く話にはビシッと決められる結論がない。考えても考えても最適解が見つからない。ていうかそもそも何が正解か、正解というものがあるのかもわからない——はい、エロスと家族のお話です。

その昔……というか、今よりはるかに若かりし頃。誰かの受け売りなのか、ものの分かったふうの50代(に見える)男性が「家庭に仕事とセックスは持ち込まない」などと得意げにうそぶくのをなんだかなあという気持ちと目線で眺めていたことがある。が、いまとなってはまあ理解できなくもないし、ある意味真実だったんだろうとも思う。悲しいかな男と女、エロスから始まったくせに、家庭を築き家族となって、同志というか絆のようなものができ上がるほどにそのエロスから遠ざかるという、如何ともしがたいジレンマを抱える。でもこれ、日本だけ? たとえばUSAなら“レス”は立派な離婚案件らしいけれども?

映画『ザ・リトル・デス』(2014)では、内に秘めたフェティシズムの解放が随所に。Photo: ©Magnolia Pictures/Courtesy Everett Collection

以前、欧米生活の長い日本人男性とこの件について話し合ったことがあるのだか、「食べたくもないステーキを毎日食べさせられるっていうのもこれまた辛い」とおっしゃっていた。ううむ、食料供給の見込みが立たない飢餓感と万年の胃もたれ。どっちがまだマシなのだろうか? いや、どっちも嫌なんですけれど。

私の周りの40代半ばの“レス“な妻たち。彼女たちは子どもが一人ないし二人いて、傍目には申し分なさそうな家庭生活を営んでいるのだか、共通してこの先の人生に大きな疑問を抱えている。曰く「子どもは可愛い。夫のことも人間、お父さんとしては好き。いまはいまでそこそこ幸せだ。でも、もう長い間セックスとはご無沙汰。別にひどく困っているわけではないし、いまさら“お父さん”とヤリたいわけでもないのだけれど、これから先、もう一生“そういうこと”と無縁で生きていくのだろうか……と考えると、それはそれで、なんだかなあ?」

映画『バッド・ティーチャー』のセックスへの欲望を眺めると、過去の性欲を思い出すかも。Photo: ©Columbia PictureS/Courtesy Everett Collection

要はこの先まだ長そうなのに、もしかしてあと60年くらいあるかもしれないのに、この場に止まる限りおそらくもう二度と女として求められないであろう人生、どうなのよ? ということなのだろう。これっておそらく人類史的にはごくごく最近の悩みで、裁判でいうところの判例集がない。平均寿命がもっと短かった時代を羨むわけではないけれど、冒頭で言い訳した通り、答えはこれから我々自身が開拓しなければならない厄介な案件でもある。

今ある幸せを守るか、ほかの世界を覗いてみるか

映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』より。ブラッド・ピットの色気に浸って。Photo: ©Paramount/Courtesy Everett Collection

©Paramount/Courtesy Everett Collection

「ならば」とここで婚外恋愛などを勧めたりしたらVOGUEが燃えそう(笑)なのでやめておくけれど、正直それも問題解決へのひとつの道だ。利己的と批判されようが、最低と罵られようが人生は一度きり。自分軸、つまりは「そうありたい自分」優先で考えるのが限りなく正解に近い気がする。選ぶ後悔も選ばない後悔も、進んだ結果の後悔も進まなかった結果の後悔も、全て自分で引き取り飲み込む覚悟で決めればよいのだと思う。

ちなみにこの駄文を書くにあたりいろんな人、いろんな立場の話を聞いたのだが、いまのところ私に一番響いているのは再び独身を、恋愛を謳歌しているバツイチの友人の言葉だ。「総取りは無理があるんですよ。ひとつ幸せなら十分ではないですか。いまの幸せを守るか、次の世界を覗くのか、大抵はふたつにひとつです」。なんだか目が覚めた。確かに! そもそも欲張ってはダメ、それが大前提。人間の「もっともっと」にはキリがなく、それなりに苦労して得た幸せなのに、手に入った途端、次の欲望に上書きされてしまいがち。挙句、その繰り返しという永遠の苦界のループに嵌ることになる。はい、大事なことなのでもう一度! 総取りはできません。いけません。

映画『美しいとき/サマータイム』(2015)。惹かれ合う衝動的な愛を眺めて。hoto: © Strand Releasing / courtesy Everett Collection

最近やたらと取り沙汰される“不倫”問題にしても、本当のところは当人たちにしかわからない。でも何もかも投げ打つほどの恋ができたなんて、それはとても幸せなことでおのれの人生のひとコマとしては最高の宝物じゃないですか。自分軸、大いに結構。ただ残念、家庭持ちが真剣に恋することはあるだろうし、走る気持ちも止められないと想像するけれども、“総取り”にはやはり無理がある。同じく“総幸せ”もないわけで、誰かを傷つけるということ、そもそもあなたには関係ないでしょうという人たちからの批判、さらに現実的な話では慰謝料なども全て自分で引き取り飲み込み、取捨選択し、責任を取り償う覚悟を決めないと、貫き通した自身の新たな幸せにも影が差し、結局誰もハッピーになれないんじゃないかしら。

おお怖っ。そんな残酷なお腹のくくり方はできないよ、いまの小幸せを守り抜こうと思ったあなた。がしかし、前人未到の人生100年時代、しかも気持ちも体も若いこの時代、このままだと二度と女として求められないかもしれない、言うなれば「セックスの余生」をどう過ごすか? はやはり大きなテーマ。ということで続きは次回。

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Profile
麻生綾 美容編集者歴は30年越え。『25ans』『婦人画報』(ハースト婦人画報社)、『VOGUE JAPAN』ビューティー・ディレクター、『etRouge』(日経BP)編集長を経て、現在はエディター、ビューティー・ジャーナリスト、エッセイストとして数々のエディトリアル、広告にて執筆やディレクション等を行う。その豊かな発想力を求め、多くのブランドがラブコール。日々移り変わる美容を、かわりやすく噛み砕き、時に新たな発想をあたえる美の伝道師的存在。

Editor & Text: Aya Aso  Editor: Toru Mitani