「イカゲーム」のクリエイター兼監督のファン・ドンヒョクが、トランスジェンファーの役どころにシスジェンダーの俳優を起用した理由を明かした。エミー賞6部門を獲得し、大ヒットを記録したNetflixのドラマ「イカゲーム」のシーズン2が昨年末に配信スタート。予告編が公開された直後、注目を集めたのが「グローリー」や「涙の女王」などで知られるパク・ソンフン演じるヒョンジュというキャラクターだ。トランスジェンダーのヒョンジュは、性別適合手術の費用を稼ぐためにゲームに参加するが、起用されたのはシスジェンダーの男優だった。
「ヒョンジュというキャラクターを作り始めた瞬間から、このような議論が起きることを予想していました」とドンヒョク監督は『TVガイド』に語る。「リサーチを始めた当初は、我々も本物のトランスジェンダー俳優を起用しようと考えていました。韓国でリサーチしたところ、トランスジェンダーであることを公表している俳優は皆無に近く、ゲイであることを公表している俳優はなおさらでした。残念なことに韓国社会では、現在LGBTQコミュニティは疎外され、無視されている状態です。非常に心が痛みます」
トランスジェンダー俳優の生きづらさは、Netflixのドラマ「D.P. -脱走兵追跡官-」でも描かれた。徴兵制のある韓国軍の闇を描いた同作のシーズン2には、ミュージカル女優を夢見るトランスジェンダーの俳優ミーナというキャラクターが登場する。彼女は演技を学んでいた大学でも、徴兵された軍でも執拗ないじめを受け、悲しい結末を迎える。
しかし『TVガイド』によると、韓国の作品にはトランスジェンダーのキャラクターが登場すること自体そもそも多くない。メインキャラクターにトランスジェンダーのキャラクターを登場させた「梨泰院クラス」は、韓国ドラマでLGBTQを描写した数少ない作品として賞賛され、またイ・ジュヨンが演じたマ・ヒョニを多面的に描いたと評価された。ハリウッドでもトランスジェンダーの役どころにトランスジェンダーの俳優を起用するようになったのは、この10年ほどだという。
なお、ドンヒョク監督はパク・ソンフンの起用についてこう語る。「実際のトランスジェンダー俳優を起用することは、ほぼ不可能でした。だからソンフンを起用するという決断につながったのです。デビュー以来彼の仕事を見てきましたが、彼ならこのキャラクターを正当に演じることができると信頼を置くことができました」
Text: Tae Terai
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