FETICO/1950年代のボンテージファッションやオートクチュールを再解釈
2025-26年秋冬シーズンの楽天ファッション・ウィーク東京の初日、フェティコ(FETICO)は、鶯谷のダンスホール新世紀にてランウェイショーを開催。今シーズンのミューズは、1950年代にアメリカでボンテージモデルやピンナップモデルとして名を馳せたベティ・ペイジであり、バニー・イェーガーが彼女を撮影した写真集『Queen of Curves』をコレクションのテーマに掲げた。
上半身が身体にフィットしたクラシカルなブラックドレスで幕を開けたランウェイでは、ブランドのシグネチャーであるランジェリー調のディテールをはじめ、ベティから着想を得たハーネスや襟もとのレザーベルト、チョーカーといったフェティッシュなディテールが随所に見られた。初登場のレオパード柄は、前述の写真集の中でベティが着用していたものに触発されたのだという。ベティを長年のアイコンのひとりとして挙げるデザイナーの舟山瑛美は、「ベティの魅力は官能的でありながらチャーミングであるところ。過激な印象が強かったボンテージをファッションへと昇華させ、独自のスタイルを確立した彼女に憧れていました」と語った。
その一方、同じく1950年代のオートクチュールが有する女性の曲線美を引き立てるエレガントなスタイルにもインスパイアされ、洗練とセンシュアリティが共存する現代的なリアルクローズへと落とし込んだ。
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また、舟山は服における造形美を追求する過程で、からだの自己決定権(Bodily Autonomy=自分のからだに関することを自分で決める権利)について考えを深めたそう。「私のからだは私のものであり、私を縛れるのは私だけ。ファッションも生き方も、そして自分の身体のことも、誰かに決めつけられるのではなく、自分の意思で選択できる社会であってほしい」
VIVIANO/「ファッションの楽しさ」を直球で
ヴィヴィアーノ・スーが手掛けるヴィヴィアーノ(VIVIANO)は3月18日(火)に、恵比寿ガーデンホールでコレクションを発表。華やかな色彩やボリュームのあるラッフルチュールのドレスをシグネチャーとし、ロマンティックな世界観で知られる同ブランドは、2025年春夏シーズンにメンズコレクションをローンチしたことでも話題に。今シーズンのテーマはイタリア語の“Colpo di Fulmine”という言葉であり、直訳すると「雷の直撃」だが、転じて「一目惚れ」を意味する。
ブラックのツイードジャケットを纏ったファーストルックにはじまり、フローラルやポルカドット、カジュアルなレザー調、スパンコール、ヴィンテージライクなレース、そしてアイコニックなチュールまで多様多彩な素材やエッセンスを織り交ぜた。そして、ショーのラスト3ルックには、50mもの生地を用いたという巨大さにも関わらず軽やかに動くドレスが立て続けに登場。ドラマティックにショーを締め括った。
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リリースに「言葉はいらない。定義も説明も、あとからついてくるもの。 ただ、触れたくなる、奪いたくなる、身に纏いたくなる。 決まりきった形なんて、もう必要ない」「本能のまま選び取った素材を重ね、組み合わせ、研ぎ澄ませる」「手にしたときの高揚、袖を通したときの衝動、すべては自分の直感で選び取るもの。 誰かが決めた“正しさ”には、もう従わない。純粋な衝動、戸惑いのない欲望に身を委ね、 手を伸ばす。ルールに抗うほど、わたしたちは美しくなる。だから、いま飛び込む。この瞬間がすべてだから」といった言葉が並ぶ通り、デザイナーの思うピュアな「ファッションの楽しさ」を、ショーを通してストレートに表現してみせた。
SATORU SASAKI/“感情”の重要性を伝える初ランウェイ
3月21日(木)に初のランウェイショーを行ったサトル ササキ(SATORU SASAKI)。世界で活躍するファッションデザイナーを東京から輩出することを目的とした「東京ファッションアワード 2025」を受賞したことで、ショー開催の支援を受けて実現。舞台は、今シーズン初めて楽天ファッション・ウィーク東京のメイン会場となったTODAホール&カンファレンス東京だ。
地元である神戸を拠点に活動するデザイナーの佐々木悟は、フィービー・ファイロ在籍時のセリーヌ(CELINE)など国内外のブランドでデザインアシスタントとして経験を積み、2019年に自身のブランドを始動した。幼い頃から、画家である叔父の作品を見続けて育ってきた佐々木は、アーティストの考えや作品に影響を受けコレクションを制作。今回は「PRIMITIVE FUTURE - 2」を掲げ、20世紀に活躍したアメリカのアーティストであるマーク・ロスコからインスピレーションを得た。
ショーは、ペインティングを纏ったかのような3色の赤を用いたループ編みのニットドレスで幕を開け、バーガンディの下にグレーをレイヤードしたアシンメトリーのワンピースが続き、マーク・ロスコの作品を彷彿とさせるレッド、イエローやブルーといった鮮やかな色彩がフィーチャーされた。従来のエレガントなブランドの世界観はそのままに、パレットの形をしたバッグ、柔らかな球体がチェーンのように連なるアクセサリーなど、遊び心の効いた新機軸のピースも際立っていた。
作品を言葉や理論で説明することを嫌い、単に感情で見られることを望んだロスコの作風は、具象から抽象画へと変化していったそう。「テクノロジーが発展したことで色んな物事が合理性に基づいて判断されるようになり、ブランドでもこれまで以上にMDや数字が重視されています。そんな今だからこそ、感情を大事にしてほしい。元来の人間が持つプリミティブな感覚が、未来には必要不可欠になってくるということをコレクションで表現したかったんです」
Photos: Courtesy of Brands, Gorunway.com
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