BEAUTY / WELLNESS

新生活をのりきる鍵は体内時計にあり【ヴォーグなお悩み外来】

私たちの体の細胞ひとつひとつには時計が組み込まれていて、日々の生活リズムを作っているのを知っているだろうか? この体内時計が乱れると、女性にはさまざまな不調が生じる可能性があるという。体内時計に関する研究を続けている田原優先生に、詳しく話を伺った。新生活のスタートダッシュに向けて、今のうちに体内時計を整えよう。

体内時計。体の中には本当に“時計”が存在する!

私たちは「体内時計」という言葉をよく口にする。しかし、多くの人は体内時計とは感覚的なものだと思っているのではないだろうか? 実は、体内時計は私たちの体の中に実際に存在する。私たちの体の細胞ひとつひとつには時計が組み込まれていて、日々の生活リズムを作っているのだ。脳や血管、皮膚に組み込まれている時計がバラバラな時を刻んでいると大変なことに。例えば、「胃は昼の時間で起きているのに、脳は夜の時間で寝ている」という状態になりかねない。そこで、脳にある視床下部がオーケストラの指揮官のようになって、体にある無数の時計が同じリズムで活動するよう指示している。脳の時計も胃の時計も同じ時間を刻むようになっているのだ。

体内時計が乱れると肌が乾燥する

体内時計は、その基本原理を明らかにしたジェフリー・ホールら​​が2017年にノーベル賞を受賞したことで、より注目されるように。多くの研究者が今も体内時計の研究を進めている。広島大学大学院医系科学研究科准教授​​の田原優先生も、そのひとり。「時計遺伝子の欠損を持つマウスを作ると、病気にかかりやすく寿命が短くなることが確認されました。やはり体内時計は動物が生きていくうえで大切なものだといえます」と、田原先生。体内時計は肌の乾燥など美容にも関係すると続ける。「皮膚の細胞にも体内時計があります。そしてこの遺伝子は、肌の角質層の水分量を調節しています。そのため、体内時計が狂うと肌の水分量が調整できなくなり皮膚の乾燥が加速するのです」

乳がんやPMS、不妊症にも関係

体内時計と女性ならではの不調の関連性は、何かあるのだろうか。

「体内時計の研究の現場で注目されたのは、シフトワークを行った看護婦を数十年と追跡したデータ。彼女たちが乳がんになりやすいとの報告がありました。また、月経不順やPMSの症状が高い人ほど、不規則な生活を送っている傾向があるとのデータもあります。ですので、体内時計と女性ホルモンの不調は何らかの関連性があり得ます。月経不順などの不調が感じられる場合、生活リズムを整えるだけでもある程度改善する可能性があるのではないかと思います」

さらに、マウスでの実験では、正常な時計遺伝子を持つマウスの妊娠率が94%だったのに対して、時計遺伝子が正常に機能しないマウスの妊娠率は25%だったという(※)。体内時計が正確でないと、私たち人間も妊娠しづらい可能性がある。実際、シフトワーク、睡眠不足、夜型であることは、不妊との関連が多くの研究で指摘されているそうだ。※参考文献: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26299967/

まずは朝食で体内時計をリセット

私たちの毎日は24時間だが、体内時計の長さは人それぞれ。測定方法にもよるが、人の体内時計の長さは24.1時間とか24.5時間といわれている。そのため、私たちは毎日、少しずつ体内時計を早める必要がある。そのリセットに有効なのが、朝起きた時に目に入る太陽の光と朝食なのだそう。太陽は浴びればいいとして、朝食は何を心がければいい?

「体内時計は、インスリンというホルモンが膵臓から分泌されると調整されます。動物実験では、炭水化物を食べると、インスリンを介して肝臓などにある体内時計が調節されることが分かっています。また、魚の油に多く含まれるDHAやEPA、しじみに含まれるオルニチンやイヌリンなどの水溶性食物繊維も、同じくインスリンの分泌を助けることで、体内時計の調節に役立ちます。つまり、炭水化物だけでなく、例えば魚を一緒に食べることがおすすめです」。さらに、たんぱく質を摂取するとIGF-1というホルモンが分泌され、これも体内時計を調節する役割があるそう。炭水化物と魚とたんぱく質。つまり、和食ならば、ごはん、味噌汁、焼き魚。洋食ならば、ツナサンドとゆで卵、などの朝食メニューが考えられる。他にも、シークヮーサーに入っているノビレチン(ポリフェノールの一種)も体内時計を調節すると、最近注目されている成分だそう。

後半では、女性の健康のために何を「いつ食べる」のが良いのか、引き続き田原先生がアドバイス!

話を聞いたのは……

田原優先生

広島大学大学院医系科学研究科准教授。早稲田大学理工学部、同大学大学院先進理工学専攻卒業。博士(理学)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部助教などを経て、現職。体内時計に関する研究を続け、新しい研究分野として「時間栄養学」の確立に携わってきた。現在も時間栄養学による疾患の改善など、最先端の基礎研究を行っている。著書に『体を整えるすごい時間割』(大和書房)など。

Text:Kyoko Takahashi Editor:Kyoko Muramatsu