伸ばして整えるストレッチで日常が筋トレに
便利で快適になった現代の生活で失われてしまったもの、それが筋力だ。「ライフスタイルが和から洋に変わり、圧倒的に減ったのが、股関節の曲げ伸ばし。雑巾掛けやふとんの上げ下ろし、和式トイレなど、昔の日本の生活にあった“しゃがむ”という動作がなくなりました。このしゃがむ動作こそ、まさに股関節のストレッチです。股関節が硬くなると、おへそから足の付け根につながる筋肉が使えなくなり、下腹部がぽっちゃりしていくのです」と中川ゆうきさん。ぽっこりお腹を改善したい場合、筋トレよりもストレッチを重視するには訳がある。「朝から晩まで座ったままのオフィスワークや立ちっぱなしの仕事は筋肉を硬直させ、猫背や反り腰に。姿勢が悪い状態のままトレーニングをすると、体の歪みが加速します。だから、固まった筋肉をストレッチでゆるめて使える状態に整え、姿勢を矯正することを優先すべき」。
誰でもできる一番シンプルなストレッチが、伸び。「8時間のデスクワークで8時間みぞおちが縮み、体にとってお腹ぽっこり状態がデフォルトに。気づいたときに、両手をまっすぐ上げてみぞおちを伸ばすポーズをとってみましょう」。ストレッチで可動域が広がり細部の筋肉が動かしやすくなると、ひねる、伸びる、曲げるという日常の動作が筋トレになり、頑張らなくてもくびれが生まれお腹がフラットに。「そして現代社会と切り離せないストレスもお腹まわりに脂肪をつきやすくする要因の一つ。ストレスを手放すためにも、ゆっくり吸って吐く呼吸を意識して」。正しい姿勢を心がけた瞬間から、お腹まわりのシルエットは確かに変わる。中川さんが教えてくれた簡単ストレッチと胸式呼吸を続けると、2週間程度で体型にもうれしい変化が。
くびれメイクのために意識すべき3つのパーツ
1 縮んだみぞおちを伸ばし上体ひねりでくびれ復活
みぞおちに手の先端を差し込んだときに痛みを感じるなら、上腹部が縮まって硬くなっているサイン。大至急、みぞおちを伸ばしお腹の筋肉をほぐすストレッチを! 「左手をデスクの上に置き、右手を頭の上にまっすぐ上げる。その状態で上半身と右手を左側に限界まで倒し脇腹を伸ばしたら、手のひらを返して胸を開き真上を向き、深呼吸して20秒程度キープ。反対側も同様に、片側2 ~3セットを、できれば1時間に1回」。さらにくびれをつくるメソッドも伝授。「胸の前で手をクロスし、おへそを正面に向けたまま、肩を横にひねって胸を左に、正面に戻してから右に向けます。みぞおちが縮んでいるとおへそごと持っていかれるので、しっかりお腹を伸ばし力を入れて」
2 胸を膨らませる胸式呼吸で広がった肋骨を締める
下腹を膨らませる腹式呼吸はリラックス効果があるものの、腹ペタやくびれを目指すなら逆効果。「胸式呼吸にすることで、肋骨の間に無数にある筋肉を使いやすくなり、肋骨まわりが締まり背中の硬さも改善。乱れた自律神経を調整する効果も。胸式呼吸のポイントは、みぞおちを伸ばしおへそを引っ込めた状態で、息を吸うときに胸を大きく膨らませ、吐くときに肋骨を締めます。今まで腹式呼吸だった人、呼吸が浅かった人は、最初は上手にできないかも。1のストレッチで固まった肋骨の周りやみぞおちをゆるめてから行うのがおすすめ。仕事柄、長時間同じ姿勢をとる習慣があり、胸が膨らみにくい人は、肋骨の隙間をランダムに指でごりごり刺激しほぐしてみましょう」
3 しゃがみこむ動作で股関節の動きをスムーズに
歩くこともしゃがむことも減った現代の生活で硬くなる股関節。「その結果、おへそから太ももの付け根につながる、大腰筋、小腰筋、腸骨筋という腸腰筋が使われなくなり、お腹のゆるみに直結します。1日最低7000歩を目標に歩き、エスカレーターより階段を。リモートワークの日はかかとを床につけたまま、和式トイレで用を足すイメージのしゃがみこむ動作を朝と夜に10回程度繰り返すなど、股関節を使う動きを意識して行って。この単純な動きがつらい人、かかとが浮いてしまう人は、腸腰筋が弱っている可能性あり。運動習慣のある人は、ゆっくり深いスクワットを10回程度を3セット。そのほか、床掃除をフロアモップから雑巾に替えるのも効果的です」
話を聞いたのは……
中川ゆうき パーソナルトレーナー。BodyScience代表。バレエをベースに、ストレッチやヨガ、東洋&西洋医学を学ぶ。独自メソッドで健康的な体へ導くYouTubeチャンネルは登録者200万人超え。
Text: Eri Kataoka Editor:Yu Soga
