1994年に、当時パートナーだったヒュー・グラントとともに『フォー・ウェディング』のプレミアイベントに出席したモデルで俳優のエリザベス・ハーレイ。まだ無名だった彼女に率先してルックを提供するブランドはなく、主演俳優であったグラントのスーツを手がけたヴェルサーチェ(VERSACE)が唯一手元にあったサンプルのドレスを用意し、なんとかルックが完成。土壇場に誕生したものにも関わらず、深く入ったスリットを大きな安全ピンで留めたそのドレスは、セクシーな雰囲気と露出度の高さがメディアを賑わせ、一夜にしてハーレイをスターの座へと押し上げた。“安全ピンドレス”として親しまれている一枚は、今ではファッション史に残る、90年代の最もアイコニックなレッドカーペットルックのひとつとして語り継がれている。
そして今週、パリで開催されたルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)の2024年春夏ショーに出席したゼンデイヤは、このハーレイの伝説のルックを想起させる、大胆不敵な白いロングドレススタイルを披露。セクシーな肌見せデザインであることは共通していたが、彼女が着ていた一枚は安全ピンではなく、チャンキーなゴールドのダブルジップがポイント。首から裾まで続くファスナーを両端から開け、深いVネックと太ももギリギリまでのスリットが特徴的なエッジの効いたドラマティックなルックに仕上げた。
パリ・ファッションウィークだけあり、過去のアカデミー賞で着用したドレスよりも何倍も攻めたデザインの一枚を選んだゼンデイヤ。全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキによってドレスアップする機会が激減し、久々のレッドカーペット級の舞台に心が躍っていたことが見て取れる。
今年からルイ・ヴィトンの新アンバサダーを務め、アイコンバッグ「カプシーヌ」の顔としてキャンペーンに登場しているゼンデイヤのレッドカーペットスタイルに、メゾンのアイテムは今や欠かせない。主役を演じた『チャレンジャーズ』と出演作品の『デューン 砂の惑星PART2』の公開が来年春に延期されたこともあり、次なるレッドカーペットルックを見られるのはまだ先になりそうだが、この日纏っていたドレスを見る限り、ルイ・ヴィトンが彼女のために作るルックには、今後もハズレはなさそうだ。
Text: Emma Spedding Adaptation: Anzu Kawano
From VOGUE.CO.UK
