最近、セレブの誰もがボトムを脱ぎ捨てているようだ。私たちは数カ月前からこのムーブメントを追ってきたが、冬が間近に迫っているにもかかわらず、その勢いは衰えることを知らない。
ノーボトム・ルックのトレンドは、いつものようにイット・ガールたちの間で始まった。ベラ・ハディッドがメンズのトランクス姿でニューヨークのストリートでキャッチされたのは昨年9月。それに続くように、カイリー・ジェンナーは黒のシアータイツの上にショーツといった出立ちでロエベ(LOEWE)のショーに出席。最近では、ヘイリー・ビーバーが床につくほどの超ロングコートとハイウエストショーツでディナーへ出かけ、秋冬仕様へとアップデートを図っていた。
先陣を切るケンダル・ジェンナーは、カジュアルなプレッピー風ルックからよりドレッシーなイブニングスタイルなど、ここ一年ほどで実にさまざまな着こなしを繰り広げている。当初、この大胆な装いをものにできるのはセレブだけのように思えたが、今その波はランウェイを超え、レッドカーペットからストリートまで、ありとあらゆるシーンに広まっている。
ノーボトム・ルックの起源は、1950年代のダンスウェア
このトレンドの起源は1950年代、ダンスウェアとして着用されたことが始まりと言われている。当時はすらっとしたエレガントなラインを作るために、タイツの上にレオタードといった格好が多くのダンサーの定番。彼女たちは時にシャツやセーターを合わせ、ウエストラインを引き立てるためにベルトを身につけた。
元祖ノーボトムをリードしたのは、シド・チャリシーなどオールドハリウッドを代表する女優たちだったと、セレブスタイリストのロー・ローチは話す。そして後に、アンディ・ウォーホルのミューズでもあったイーディ・セジウィックを象徴するルックにもなった。
そしてノーボトムに再び注目が集まったのは1980年代。ジェーン・フォンダのエクササイズビデオ『ジェーン・フォンダのワークアウト』、そしてジェイミー・リー・カーティスとジョン・トラボルタのダブル主演映画『パーフェクト』(1985)などがヒットしたことによって、ベルト付きのレオタードはアスレチックシーンで大流行した。
1990年代になると、シャネル(CHANEL)をはじめ、アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)やジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)などのランウェイにも登場。2010年代頃には、ディオール(DIOR)やミュウミュウ(MIU MIU)でもこのスタイルが見られるようになっていった。
しかし、このトレンドがダンスやスポーツの界隈から離れたのはごく最近のこと。2022年、ケンダル・ジェンナーはボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)の2023年春夏コレクションからルック17を纏い、インターネットで大きな話題を呼んだ。ネイビーブルーのニットセーターの袖口から白いシャツをのぞかせ、透け感のある黒のタイツの上にブリーフショーツ、そしてスリングバックヒールで仕上げたスタイリングは、これまでとは異なるクリーンでフレッシュな印象を放った。
多くのセレブたちが支持する理由
現代版ノーボトムを世に送り出したのは、ボッテガ・ヴェネタだけではない。ヴァレンティノ(VALENTINO)のオートクチュール、ヴィクトリア ベッカム(VICTORIA BECKHAM)、ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)もそれぞれのバージョンをデザインしており、2023-24年秋冬には、メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)やラクワン スミス(LaQUAN SMITH)が新たなルックを提案。ミュウミュウ(MIU MIU)のブリーフショーツ姿もまた、大きな反響を呼んだ。後者のランウェイを歩いた俳優でありファッションアイコンでもあるエマ・コリンは、ヴェネチア国際映画祭や映画『僕の巡査』(2022)のプレミアで同じルックを着用し、いち早くこのトレンドを取り入れた。
以来、このトレンドを支持するセレブたちは後を絶たない。アジョワ・アボアー、カーラ・デルヴィーニュ、そしてジョディ・ターナー=スミスらは今年9月に開かれた「VOGUE WORLD」でボトムなしのルックを披露。俳優のレイチェル・ゼグラーも映画『ハンガー・ゲーム0』のプレスツアー中に続いたほか、ロリ・ハーヴェイはナイトアウトでカジュアルかつナチュラルな着こなしを見せている。
セレブスタイリストのアマンダ・リムは、ノーボトムが過去のファッションの再利用であることに同意すると、次のようにコメント。「ノーボトム・ルックが与えてくれる、自信とパワーがとても好きです。これは自分に対するイメージをコントロールするだけでなく、自身をエンパワーし、ほかのファッション好きの人たちもインスパイアするものです。トレンドは繰り返されると言われますが、それは最高の賛辞のようなものではないでしょうか?」
ファッション界のアカデミー賞、CFDAアワードで自らスタイリングに挑戦したローチは、この動きには文化的意義があると考察する。また、アイコニックなファッションアイテムに新しい風を吹き込む方法だとも考えているそうで、カルバン クライン(CALVIN KLEIN)のタイトな白のブリーフショーツを例に挙げると、「とてもクラシックでありながら、どこか今の時代に即したムードがあると思う」と述べた。しかし一方で、「『これを着たらクライアントにどう思われるだろう』とか、そんなことを考えていました」と、ごく最近までノーボトムを試すのをためらっていたとも明かす。ローチはこの夜、ルアー(LUAR)からの一着をチョイス。ジャケットのボタンをあえて外し、「自由になれた気がしました」と語った。
Text: Hannah Jackson Adaptation: Motoko Fujita
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