ウッディ いにしえより香水に用いられ、今、“自分のための香り”として大流行
ミステリアスな側面を持ちながら、静かなエネルギーを宿すウッディ。「ここ数年、急激に人気を得ています。森の中に足を踏み入れたような感覚を与え、深呼吸したくなるような香りで、気持ちをゆったりと解放してくれるのも魅力」と、香りの専門家でありフレグランススクール「サンキエムソンス ジャポン」の代表を務める小泉祐貴子さんは解説する。古くは1950年代から60年代にカルヴェン(CARVEN)とゲラン(GUERLAIN)がそれぞれ「ベチバー」という名の香水を発表。以降、メンズフレグランスで高い人気を得てきたウッディだが、近年はより軽やかでジェンダーレスな表現に変化してきた。
ウッディのもつ香りの表現力
ウッディは、サンダルウッドやシダーウッド、オークモス、ベチバー、パチョリなどで構成されるオーセンティックなファセット。森を感じさせる調和のとれた香りは、大きく手を広げて包み込んでくれるかのような安心感と癒しをもたらしてくれる。「もともとは男性の香りに使われてきたウッディですが、最近は爽やかで清潔感のあるウッディが増えてきてジェンダーを超え愛されています。ウッディ フローラルなど女性らしさを讃えた香りも次々と誕生」と小泉さん。
レザー 壮烈にして大胆、スモーキーな香りが力強く響く
グラースの調香師と手袋のメーカーによって作られたことに始まる、レザーノート。小泉さんによると「ロシア軍のために作られた革のブーツの端切れをアルコールに浸したことによって生まれたとされています。革を白樺の樹皮でなめすことによって生じる香りに由来します」という。1920年から60年にトレンドをリードしたファセットで、男性用にも女性用にも活用されてきた。「レザーノートにはシベット、カストリウム、ムスクといったアニマルノートのほか、白樺やシスト、タバコなどが含まれます」
レザーのもつ香りの表現力
「わずかにスモーキーでアニマリックな香り。男女問わず、洗練された大人の格好良さを表現できるのが魅力です。ドライにも、スエードのように湿ったニュアンスにも転ばせられるのも面白さ」と小泉さん。荒々しくも風変わりな香りで個性を際立たせ、圧倒的な存在感を感じさせる。「特に、スエードのような滑らかな質感をもつレザーの表現は、エレガントでスタイリッシュな男性に似合う、クセになる香り」。ラブダナムやバーチ、タバコなどをキーとする香料が織り成す香りが魂まで響かせる。
話を聞いたのは……
小泉祐貴子
香りデザイナー。サンキエムソンス ジャポン代表。慶應義塾大学理工学部卒業後、資生堂、香料会社フィルメニッヒを経て、2014年にセントスケープ・デザインスタジオを設立。コンサルティング、香り環境デザイン、香水のプロデュースなどを幅広く手掛ける。近著に『英国王立園芸協会 香り植物図鑑』(Stephen Lacey著 小泉祐貴子訳/柊風舎 刊)。
https://www.cinquiemesens.jp
Text: Akira Watanabe Editor: Rieko Kosai

