サステナビリティの観点からすれば、服を大切にすることは大事だ。実際、イギリスの慈善団体The Waste and Resources Action Programme(WRAP)が2022年に実施した調査によると、衣類の寿命をわずか9カ月延ばすだけで、その1着のカーボン、ウォーター、廃棄物のフットプリントが20~30%削減できるという。
しかし実のところ私たちは、ワードローブのどれくらいのものを、寿命をまっとうするまでちゃんと着ているのだろう?
これは、シアトルを拠点に活動するデザイナー、エレナ・チウが先日TikTokで投げかけた疑問だ。話題を呼んだ彼女の動画に映っているのは、もともとは白かったであろう、ボロボロのメゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)の「タビ」フラットシューズ。剥がれかけていたソールは瞬間接着剤で自分で貼り直し、切れてしまったストラップも縫い直したと説明する彼女は「たまらなく好きな一足だからこそ、こんなに履き込んているんです」と話す。「ソーシャルメディアの何に腹が立つかというと、使い込まれた服を紹介する投稿が、ひとつもないということ」と不満をあらわにした。
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チウは以前、TikTokに自身の履き古された「タビ」シューズのことを投稿し、その思いもよらぬ反応に対する抗議の意味で、今回の動画を上げた。「『あなたみたいな人は、ブランドものを持つ資格はない』とか『マルタン・マルジェラはこんなことのためにレーベルを去ったのではない』とか言われたんです」と彼女は『VOGUE』に話した。そしてマルジェラの心境を推測したコメントには特にうんざりしたと言う。マルジェラは服を分解し、ときには“破壊”することで知られるデザイナーだ。「(こういうコメントは)彼のエトス全体に対する完全な冒涜です」とチウは述べた。
私たちは常に変化するトレンドのサイクルや使い捨ての文化に追われ、ソーシャルメディアはキラキラした「新しいもの」であふれ返っている。服をちゃんと“着古す”人がこうも減った理由は、明らかにここにあるように思う。チウもTikTokで語っているように、皆流行りの高価なものを買い、写真のために1度か2度着て、そしてそのアイテムがコーデに再び登場することは、おそらくない。
アクセサリーや服は、愛着を持って使って着るためにある
昨今のリセールサイトの在庫回転率の高さを考えると、おそらく多くの人が、後に転売することを視野に入れて、アイテムを新品に近い状態で保とうとしているのだろう。(回転率の高さ故に、最近ではセカンドハンド市場がファストファッション化しているという批判もある)。ファッションコメンテーターのリアン・フィンは、転売することを前提にアイテムを購入する文化は、愛着を深めずに服を楽しむための、いわばリスク回避のようなものだと言う。「あまり着なければ、自分がそのブランド品に投資した分が、リセールしたときに利益として返ってくる可能性があります。リセールに完全に依存していて、もったいなくて使うのが怖いのにも関わらず、このようなおそらく手の届かないアイテムが必要だという考えを刷り込まれている人たちがいるのは残念なことです」
新品同様のものしか値段がつかないと思われがちだが、しっかり使い込んだアイテムにもリセールバリューはある。「ラグジュアリーアクセサリー分野においては、ヴィンテージに関する(世間の)知識が深まっていて認知度も上がっているので、より使用感のあるアイテムへの需要が高まっています」とパーソナルショッピングサービスThis Old Thing Londonの創設者であるシャーロット・ロジャーズは説明する。実際にアメリカのリセールサイトThe RealRealによると、かなり使用感や汚れがある、いわゆるCランクくらいのコンディションのアイテムの需要が昨年倍増したという。その一方で、クタクタに使い古したエルメス(HERMÈS)の「ケリー」バッグを提げている姿が度々キャッチされているメアリー・ケイト・オルセンのように、使い倒したアイテムだけが持つ魅力をずっと前から知っている人もいる。
もちろん、使用感が気にならないのであっても、きちんと手入れをすることは重要だ。そこで頼りになるのが服やアクセサリーの修理と修復サービス。「一般的には、ヴィンテージアクセサリーを維持するためにはときどき専門業者に修理に出す必要があります」とロジャーズは指摘する。「私はいつも、アイテムを製造したブランドに出すことをおすすめしています。なぜなら作り手であるブランドは、正しいメンテナンスを行う知識と技術を持ち合わせているからです。真のラグジュアリーアクセサリーは非常によく作られているため、ちゃんと愛情を注げば、一生、あるいはそれ以上に長持ちします」
使用感のあるアイテムこそ「サステナブルなファッション」
ラグジュアリーアイテムはさておき、服を修理しながら長く着ること自体がもはや「トレンド」ではなくなっていて、直し方のわからない人も少なくない。「セーターの穴を補修してほしいとか、ほつれた縫い目を直してほしいとか、とても簡単な修理をよく頼まれます」とチウ。「より多くの人が、自分が持っている服を着倒して、繕い方を覚えれば、世の中の廃棄物をどれだけ減らせることか」
私たちが服との向き合い方を見直す必要があるのは明らかだ。そして着用感があるものを着るのはまったく問題ない、むしろ望ましいことなのだということも学ばなければならない。幸いにも、世の中の流れは変わり始めている。「『とっておきの日』にしか使わなかったり、ワードローブを真新しいスタイルだけでいっぱいにするというトレンドは、衰退しつつあります」とロジャーズは言う。「服を大切に、クタクタになるまで着古すことが、今では真のおしゃれなのです」
Text: Emily Chan Adaptation: Anzu Kawano
From VOGUE.CO.UK