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ゼンデイヤがVOGUEに打ち明けた本当の私──「今は、10代の悩み多き時期を過ごしているようなもの」

ルカ・グァダニーノ監督による最新作『チャレンジャーズ』が、6月7日より日本公開される。本作で主演を務めるのは、ハリウッドで飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍中のゼンデイヤだ。US版とUK版『VOGUE』5月号の表紙を飾った彼女は、子役時代から向き合ってきたプレッシャーや不安、注目を浴びるトム・ホランドとの交際など多くのことをカバーインタビューで語ってくれた。その中から彼女の言葉を一部抜粋してお届けする。
ゼンデイヤZendaya attends the UK premiere of Challengers at the Odeon Luxe Leicester Square on April 10 2024 in London England.
Photo: Lia Toby/Getty Images

『グレイテスト・ショーマン』(2017)や『スパイダーマン』シリーズなどへの出演でも知られるゼンデイヤルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)ブルガリ(BVLGARI)のアンバサダーを務める彼女は、27歳にしてすでにエミー賞のドラマ部門主演女優賞を2度受賞しているが、最新主演作『チャレンジャーズ』では2人の男性を同時に愛するテニス界の元スター選手を演じただけでなく、プロデューサーも務めた。子役の頃から“ゼンデイヤ”として生きてきた彼女の素顔や夢とは?

母親役に挑んだ主演作『チャレンジャーズ 』

『チャレンジャーズ』は6月7日より日本公開。

Photo: © MGM/Courtesy Everett Collection

「(初めに『チャレンジャーズ』の脚本を読んで)ものすごく強烈で、ちょっとクレイジーなストーリーだと思いました。 普段は、共感しやすい人物を演じることが多いのですが、(2人の男性を翻弄する主人公)タシ(・ダンカン)には、『この人、すごい」と思える何かがありました。私でさえ、彼女がちょっと怖かったくらいです。

これまでは高校生の役を演じてばかりいましたが、実生活では高校にはまったく通いませんでした。 だから(『チャレンジャーズ 』で母親役を演じて)、ティーンの役から離れるのは新鮮だった。 それに、若い役を演じるのは少し怖くもあって、私が実年齢かそれより少し上の役柄を演じることを受け入れてもらえたらいいのにと願っていました。実際、私のまわりには子どもがいたり、これから子どもを作ろうとしている人が多いですから」

テニスプレイヤーを演じるにあたり、モデルにしたウィリアムズ姉妹

人気と実力を兼ね備えたテニス選手のタシ・ダンカン(ゼンデイヤ)は、将来を有望視されていたが、試合中の大怪我で引退を余儀なくされる。選手生命を絶たれた彼女が選んだのは、新たなゲームだった。

Photo: © MGM/Courtesy Everett Collection

「ビーナスとセリーナ・ウィリアムズ姉妹からは、ものすごく影響を受けています。彼女たちのこれまでの軌跡、プレッシャー、顕微鏡でいつも見られているような感覚、感じているであろう孤独──テニス選手でいるだけでもすでに孤独なのに、黒人の女性選手なんですから、想像を絶します。何百万人もの観客が見ているなかで競技をするという、過酷でストレスフルな状況に身を置くだけでなく、そのうえ勝たなければならない......そして、勝っても負けても感じよくいなければならないなんて、考えただけでも恐ろしいです」

完璧な“ゼンデイヤ”という存在

親友であり切磋琢磨するライバルでもあるアート・ドナルドソン(マイク・フェイスト)とパトリック・ズワイグ(ジョシュ・オコナー)は、テニス界のスターとして急成長していたタシに魅了される。

Photo: © MGM/Courtesy Everett Collection

「彼女は私の中に入ってくるもうひとつの存在、ゼンデイヤ版サーシャ・フィアース(ビヨンセがステージ上のもう一人の自分に付けた名前)なんです。レッドカーペットを歩いてみせたのは、私の体を乗っ取った彼女でした。 私は彼女を受け入れ、彼女という女性が存在しているということ、あるいはそうした幻想が存在するということを信じなければなりません。若い頃は今よりもプレッシャーを感じることが少なかったですね。(ゼンデイヤになるためには)自分の中の、あるゾーンに入っていくのですが、そこは1000パーセント自然な自分とは言えない部分。いつもその自分をキープすることはできません」

過度な関心を集める私生活

今年3月、トム・ホランドともにゼンデイヤはBNPパリバ・オープン男子シングル決勝戦を観戦。

Photo: Matthew Stockman/Getty Images

2022年の秋に恋人のトム・ホランドとルーブル美術館を訪ねところ、SNSで大きな騒ぎとなった。「(SNSでは混乱を招くだけだという声もありましたが)今振り返ると、問題なく観てまわることができました。ああ、私もみんなが写真を撮っている芸術品のひとつなんだ、と思えてくるんです。それはそれでいいと思うしかないし、私は自分の人生を生きるだけです。(ルーブル美術館側の配慮で、閉館後も鑑賞することができたことは)最高にクールな経験でした。映画『ナイト ミュージアム』(2006)みたいで」

変わりつつあるファンとの関係性

2016年、テレビ収録の際にファンとセルフィーを撮影するゼンデイヤ。

Photo: Noel Vasquez/Getty Images

「子どもの頃から、いつも誰かに写真を一緒に撮ってほしいと言われると、必ずそれに応じなくてはならないと思っていました。ファンがいるから自分はここまでやってこられたということに、感謝しなければならないし、そのためには断ってはいけないと。今でもその思いは変わりませんが、ノーと言ってもいいということも学びました。今日はオフの日だからとか、今日は自分自身でいたい日なのと丁寧に断れば、四六時中、演じていなくてもいいんだとわかったんです。そうする理由のひとつには、自分の子どもに同じような想いをさせたくないというのがあります。それに私の将来がどうなるのか、これからもずっと人前に顔を出し続けるのかはわかりませんから」

夢のシナリオ

ゼンデイヤは2020年と2022年に「ユーフォリア/EUPHORIA」でエミー賞ドラマ部門主演女優賞に輝いている。

Photo: Chris Haston/NBC/Getty Images

「理想的なのは、作品をつくって、必要なときに公に顔を出し、家族と過ごせる安全で守られた生活があること。そして常に何かを発表し、与え続けなければならないという心配や、いつかきっとすべてを失うのではないかという不安にかられる必要がなくなることです。みんなが、『ああ、14歳の頃からゼンデイヤを知っているけれど、最近はつまらないからもういいや』と、いつか言い始めるんじゃないか──それが大きな心配の種になっていると思います。いろいろな人から多くのことを学んで、いつか怖がらずに自分で映画を監督してみたいです」

ティモシー・シャラメやオースティン・バトラー、フローレンス・ピューら俳優仲間の存在

『デューン 砂の惑星PART2』(2024)のプロモーションで出演したトーク番組「ジミー・キンメル・ライブ!」にて。

Photo: Randy Holmes/Getty Images

「少しですが、(心を許せる)仲間はいます。もっといてもいいと思うんですけれどね。自分のせいなのですが、私は自分だけで抱え込む傾向があります。俳優仲間は大好きですし、感謝しています。でも、まわりにもう少し私みたいな(人種の)人たちが増えるといいなとも思っています。それはとても重要で必要なことですから。(監督をするようになったら)主演俳優には必ず黒人女性を選びたいです」

子役からキャリアをスタートさせた俳優業

ディズニー・チャンネルのテレビドラマ「シェキラ!」は2010〜2013年に放送された。

Photo: Randy Holmes/Getty Images

「子どもの頃の自分に、どれだけ選択肢があったのかはわかりません。子どものうちに得た名声や人前に出ること、子役であることについては複雑な思いがあります。人生に害を及ぼすケースが多いというのを見てきていますから……。でも、こうして大人になって初めて、『これまで私は自分が知っていることしかしてこなかった。しかも私はそれしか知らない」と気づくんです。 今の私は、10代の悩み多き時期を過ごしているようなもの。当時はそんな余裕がありませんでしたから。すごく大人にならなければならないように感じていました。早くに一家の大黒柱となり、いろいろなところで役割の逆転が起きていた──まさにそうした状況の中で“成長した”のです」

期待に応えなければならないというプレッシャー

オーストラリアで行われた『チャレンジャーズ』のプレミアには、ロエベ(LOEWE)によるカスタムドレスを着用。

Photo: James Gourley/Getty Images

「(子役の頃から)完璧な存在にならなくてはならない、みんなが私に求めていることをしなければならない、すべての期待に応えなければならないと感じていました。今、劇場公開される映画で初めて(単独)主演を務めようとしていますが、そうした瞬間をキャリアの中で迎えるとき、どうしても萎縮してしまい、自分に起きていることをすっかり楽しむことができなくなります。すごく緊張してしまうんです。それは子どもの頃からずっと、ダメ元で何かをやるという経験をしてこなかったことから来ていると思います。学校にも通いたかったです」

Text: Miwako Ozawa