メゾンのエスプリを映し出す、エルメス ビューティ
2020年にデビューした、エルメス(HERMÈS)のメイクアップライン。登場時、そのエレガントな佇まいに衝撃を受けた人も多いだろう。メゾンが目指したのは、女性一人ひとりの個性に寄り添い、表情に輝きを与えること。メイクアップアイテムとして奏でる色や質感が美しいのはもちろん、“オブジェ”としても美しいこと。また、「美しさ、それはしぐさ」というフレーズに表されるように、手に取る、メイクを施す、鏡をのぞくといった、人の動きの優雅さを引き出すこと。こうしたありようには、メゾンに脈々と受け継がれたエスプリが反映されている。
最初にお目見えしたのは、エルメス ビューティを象徴するリップスティック。次に唇の色と肌の色、唇と顔の他のパーツの間につながりを生み出すチーク。さらにネイルエナメルやスキンケア製品の序章となる、ハンドクリームやキューティクルオイル。そして満を辞して、スキンケアとメイク製品の架け橋となるベースメイク……。製品が増えるごとにエルメス ビューティへの共感は深まり、特に日本では世界の中で最も厚い支持を獲得していて、ファンも多い。それは職人技が生きる端正なつくりや、繊細なカラーやテクスチャーを愛し、理解する土壌があったからといえる。
時代を切り取りながら、長く変わらぬ美しさを志向するエルメスのビューティの世界を、ローンチから今に至るまで振り返ってみよう。
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一章 デビューはルージュ・エルメスの誕生とともに
エルメス ビューティが初めに手がけたコレクションは〈ルージュ・エルメス〉だ。なぜリップスティックからスタートしたのか。それは、リップスティックは唇を素早く色づかせるもの。つまり一瞬でつけた人のパーソナリティを表現するものだから。そして小さなオブジェの中に、カラー、素材、香りが凝縮されているからだという。
クリエイションにあたっては、メゾンの財産である、75,000以上のシルク、900以上のレザーのカラーアーカイブをイメージソースに。まさに「色彩を旅する」感覚でデリケートな色を生み出していった。また、メゾンのアイデンティティの赤、「ルージュ・エルメス」やオレンジボックスにインスパイアされた色があったりするのも、エルメスならではといえる。そうして完成したラインナップは24色。メゾンの歴史を刻む、パリのフォーブル・サントノーレ店の番地と同じ数字だ。ちなみに後々新しい色が登場したとしても、色の入れ替えを行い、24色という数は変わらないのだとか。
質感は、レザーにヒントを得たマットとサテンが基調。加えて、エルメス シューズ/ジュエリー部門 クリエイティブ・ディレクターのピエール・アルディがデザインしたラッカー仕上げのパッケージが、オブジェとしての豊かさをふくらませている。
タイムレスなカラーのほかに、遊び心あふれた色とパッケージのリミテッド・エディションも発売。トレンドや季節に合わせた旬なカラーが評判となっている。
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二章 ローズ・エルメス:チークを中心とした可憐なコレクション
リップスティックに続いて、エルメスはチーク《ローズ エルメス ファー ア ジュ プードル ソワイユーズ》を中心とした、〈ローズ・エルメス〉コレクションを世に送り出した。チークが第二幕目のスタープロダクトとして選ばれたのは、唇と肌、唇と他のパーツのつなぎ、“ハイフン”となるアイテムだから。リップの次にチークとは意外なようだが、この選択はメゾンにとっては必然だったそう。
主役として据えた色は“ローズ”、フランス語でピンク。シルクのアーカイブをインスピレーション源として、繊細さ、優しさ、センシュアルさ……と、無限の表情を持つ色をチークに映し取った。またテクスチャーは、スカーフの《カレ》に用いられるシルクツイルからインスピレーションを得ていて、パウダーの表面にも布の織り目が刻まれているのが印象的だ。
ラインナップは全8色。カラーチャート上のピンクというより、“ピンクのイメージ”を追求したコレクションとあって、フレッシュで明るい色み、洗練された青みのニュアンス、ベージュやオレンジに近い色と、バリエーションに富んでいるのが面白いところ。円形のケースに円形のパウダーが内包されたパッケージも「エルメスのオブジェ」らしさ満点。そのスタイリッシュさも人々を魅了した。
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三章 レ・マン・エルメス:ネイルエナメルやハンドケアで表す、所作の美と遊び心の共存
年が変わって、2021年、ハンドアイテムのコレクション、〈レ・マン・エルメス〉が発表された。手は感情や思いを表し、人の個性を明らかにする重要なパーツである……こうした考えは、職人の手仕事を尊んできたメゾンの歴史からいえば当然のこと。その思いがプロダクトにも込められている。
手を美しく保ち、魅せるためのアイテムとして誕生したのは、まずケア用品のハンドクリーム、キューティクルオイル、ネイルファイル。一つひとつの設計が緻密で、たとえばハンドクリーム《クレーム レ マン》は、ベタつかない質感ゆえ、職人がつけてすぐ、革に触れることができるという。いかにもこのメゾンらしいエピソードだ。
リップスティックと同じく、24色のラインナップを誇るネイルエナメル《ヴェルニ エマイユ》には、ブレスレットなどでおなじみのエナメル加工の経験が取り入れられている。アイコニックなレッド、「ルージュ エルメス」をはじめ、革の色を再現したカラーなど、唯一無二の色彩パレットは、全色揃えたくなる!
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四章 エルメス・プラン・エア:メゾンの肌作りの価値観を体現するファンデーション
馬具の製造から始まったエルメスは常に戸外で過ごす、自由なライフスタイルを後押ししてきた。そして女性が自由に生きること、ありのままの美しさを表現することをも尊重し続けている。そんな精神に基づいて展開されているのが、〈エルメス・プラン・エア〉。ベースメイクのコレクションだ。
またこのコレクションから、ビューティ部門 クリエイティブ・ディレクターに就任した、グレゴリス・ピルピリスがクリエイションに参加。メゾンの文化を受け継ぎつつ、メイクアップアーティストとしてのキャリアを生かし、新しい風を吹き込むこととなった。
《ボーム ドゥ タン》は、ふわりと色づき、肌本来のみずみずしさを表現するファンデーション。欠点を覆い隠すのではなく、それぞれの肌の個性を引き出すテクスチャーは、ナチュラルかつ軽やか。シルクのようなパウダー《プードル エクラ マット》、繊細なパールパウダーの《プードル エクラ グロー》とともに、自由を愛する現代女性たちの友であり続ける。
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五章 エルメジスティブル:艶めくカラフルなリップオイル
2022年9月に登場するやいなや、そのチャーミングさに世界中が息を飲んだ。《エルメジスティブル》──唇をつやめかせながらケアをするオイルリップだ。コーラル、ピンク、レッド……熟した果実の風味、しぼりたての果汁の味わいをイメージしたオイルリップは、6色ともとびきりみずみずしくフルーティ。つけ心地が軽いのにケア効果が高く、そのうえ芳しい香りまで! 五感に訴えかけるリップをまとうたびに、幸福感がこみ上がるはずだ。
Read More >>《エルメジスティブル》の成分やパッケージデザイン、取扱店舗など詳細はこちら
問い合わせ先/エルメスジャポン 03-3569-3300
www.hermes.com
Text: Nobuko Irie Editor: Rieko Kosai

