ヴィクシーこと「ヴィクトリアズ・シークレット」と言えば、リアル・バービードールのような非のうちどころのないスタイルの専属モデルたちがまず思い浮かぶ。しかしその美女たちが、いつしか「時代にそぐわない」と叩かれるようになってしまった。
私は、そんなモデルたちが登場するカタログやファッションショーを見るのが毎シーズン楽しみだったけれど、いつしか「美を画一化している」と、その企業姿勢そのものが叩かれるようになっていたのだ。他ブランドがプラスサイズモデルを起用し、美の多様化が求められる時代に合わせていったのに対して、ヴィクシーは、尚もスリムなモデル体型にこだわり続けていた。
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そしてヴィクシーの“時代錯誤ぶり”が最も露呈したのは、2018年11月に、同ブランドのチーフ・マーケティング・オフィサー、エド・ラゼックが、「ショーは42分間のファンタジー。そこにトランスジェンダーモデルが必要だとは思わないね」と発言したときだった。
そこからブランドパワーを失って行ったヴィクシーだったけれど、先日ヴィクシーが公開した、オンラインでの2021SSのスウィムウェア・キャンペーンでは、カーヴィボディのモデル、パロマ・エレッサーを起用。「ヴィクシーもついにボディ・インクルーシブを受け入れ始めた」と話題になっている。
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インクルーシブとは、直訳すれば、「排除しない、包括する」というような意味を持つ単語。このキャンペーンでは最近、米「ヴォーグ」のカバーガールになったばかりのパロマのほかに、「シャネル」のランウェイを歩いた初のカーヴィ体型のオランダ人モデル、ジル・コートリーヴも登場し、多種多様な体型や人種のモデルを起用している企業姿勢をアピールしている。この変化に、ヴィクシーの公式アカウントのフォロワーは概ね好意的だ。
去年10月には51歳のスーパーモデル、ヘレナ・クリステンセンをキャンペーンに起用し、変わり始めたヴィクシー。そしてすでに世の中は、プラスサイズモデルやアラフィフのモデルが登場したくらいでは、驚かなくなりつつある。
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ヴィクシーの最大の誤算。それは、ダイバーシティ化のパイオニアとならず、他社に追随するような形になってしまったことではないか。本来なら、ヴィクシーのような影響力を持つ大企業が先駆けて、様々な美の可能性を世に示すべきだった。それができなかったから、時流に敏感な消費者たちの心も、離れて行ったのだと思う。
一流モデルの登竜門とされてきたヴィクシーが、今後どのようなモデルを登用するのか。それが今後の新たな時代の“美”に開眼させてくれることを、楽しみにしている。そして、パロマ・エレッサーやジル・コートリーヴなど、今回のキャンペーンで多くの人に均質化されない美しさの素晴らしさを伝えているモデルの活躍を引き続き追っていきたい!
Text: Moyuru Sakai Editor: Toru Mitani