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『ミリオンダラー・ベイビー』、当初サンドラ・ブロックが映画化を切望。【キャスティング秘話vol.3】

スタジオや俳優の都合で、映画の製作がスムーズに決まらないことは多々ある。賞レースを総なめにしたオスカー作品も、実は簡単に実現したわけではなかった。キャスティングに難航した映画の秘話を綴る本シリーズでは、『タイタニック』(1997)や『ブロークバック・マウンテン』(2005)に続き、『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)の裏事情に迫る。

全米でも6カ月半上映されるという奇跡のロングランを記録した『ミリオンダラー・ベイビー』。Photo: AFLO

クリント・イーストウッドがメガホンを握った『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)は、第77回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞、監督賞と主要部門を総なめにし、ヒラリー・スワンクに『ボーイズ・ドント・クライ』(1999)に続き、二度目の主演女優賞をもたらした作品だが、長らくスポンサーが見つからず宙に浮いた状態だった。

ヒラリー・スワンクは9カ月間、1日2時間30分のボクシング練習と、1~2時間30のウエイトリフティングトレーニングを週に6回行い、約8.6キロ分の筋肉を増量して作品に挑んだ。Photo: J. Vespa/WireImage

実は最初に本作と出会い、製作にこぎつけようと奔走したのがサンドラ・ブロックだった。サンドラは『エリザベス』(1998)のシェーカル・カプールを監督に、スタジオを説得していたそうだが、当時は「題材が暗い」「ヒットする気配が感じられない」などといった理由から、どこのスタジオも興味を示さなかったという。こうしてスタジオが決まらず時間だけが過ぎ、サンドラは『デンジャラス・ビューティー2』(2005)の撮影に入ってしまったため、計画は頓挫してしまった。

2005年のレッドカーペットインタビューで「何度も何度も何度も挑戦したけど、製作にこぎつけることができなかった」と語ったサンドラ・ブロック。Photo: Gregg DeGuire/WireImage

その後、脚本が回ってきたプロデューサーのアルバート・ルディが物語を気に入り、クリント・イーストウッドに話を持ちかけたところ、スタジオから「クリントが監督するなら」とようやく製作へのゴーサインが出た。ひょっとしたらサンドラ・ブロックは、本作で最初のアカデミー賞主演女優賞を手にしていた可能性があったかも⁉

Text: Rieko Shibazaki