クリント・イーストウッドがメガホンを握った『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)は、第77回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞、監督賞と主要部門を総なめにし、ヒラリー・スワンクに『ボーイズ・ドント・クライ』(1999)に続き、二度目の主演女優賞をもたらした作品だが、長らくスポンサーが見つからず宙に浮いた状態だった。
実は最初に本作と出会い、製作にこぎつけようと奔走したのがサンドラ・ブロックだった。サンドラは『エリザベス』(1998)のシェーカル・カプールを監督に、スタジオを説得していたそうだが、当時は「題材が暗い」「ヒットする気配が感じられない」などといった理由から、どこのスタジオも興味を示さなかったという。こうしてスタジオが決まらず時間だけが過ぎ、サンドラは『デンジャラス・ビューティー2』(2005)の撮影に入ってしまったため、計画は頓挫してしまった。
その後、脚本が回ってきたプロデューサーのアルバート・ルディが物語を気に入り、クリント・イーストウッドに話を持ちかけたところ、スタジオから「クリントが監督するなら」とようやく製作へのゴーサインが出た。ひょっとしたらサンドラ・ブロックは、本作で最初のアカデミー賞主演女優賞を手にしていた可能性があったかも⁉
Text: Rieko Shibazaki