「ザ・クラウン」でテレビの部ドラマ部門の主演女優賞を受賞したエマ・コリンは、60年代のツィッギーか、はたまた道化師を彷彿させるドーリィなルックで登場。タイトに撫でつけたショートヘアに、マスカラをたっぷりのせバサッとさせた上下のまつ毛や、下まぶたの濃いめのアイラインが、彼女の気品漂う魅力にファニーなギャップを加えていた。このアイコニックなスタイルをさらにブラッシュアップさせていたのが、フューシャピンクのリップ。輪郭をぼかしたソフトな発色が、透明感のあるベースメイク、ピンクトーンのチークとも見事に調和。その可憐さは、花びらがふわりと開いたイングリッシュローズのようだった。
ディオール(DIOR)のオートクチュールドレスに身を包み、オールドハリウッドの女優スタイルに挑戦したのは、「クイーンズ・ギャンビット」でミニシリーズ/テレビムービー部門の主演女優賞を獲得したアニャ・テイラー=ジョイ。そのゴージャスなルックは、メタル感のあるブラウン系シャドウとボリューミーなアイラッシュをあしらった目もと、落ち着いたレッドベージュのリップが立役者。Cゾーンのハイライトと頬骨上のチークのバランスも絶妙で、彼女の個性的で聡明な顔立ちを引き立てている。
さらに洗練度を高めたのが、プラチナブロンドのダウンヘア。サイドを耳にかけた7:3のブロッキングが、クリーンかつセクシーなムードを演出。毛先にだけカールをあしらったのが、全体に柔らかなニュアンスを加えている。
これぞアワードスタイル! といえるほど、優美で洗練されたドレスアップを披露したアマンダ・サイフリッド。「Mank/マンク」で映画部門の助演女優賞にノミネートされ、惜しくも受賞は逃したが、華麗なルックではその日一番の注目を集めていた。彼女を担当するメイクアップ・アーティストのジュヌヴィエーヴ・ハーのインスタでは、美しきメイクの全貌を公開。アマンダがグローバルアンバサダーを務めるランコムのプロダクトが用いられ、ドレスと同じコーラルピンクを基調に、陰影で深みを出した目もとと、パーリィなツヤをまとわせたヌーディリップで上品なコントラストを生み出している。
40年代のハリウッドスタイルにインスパイアされたというピンカールヘアも、アマンダの美を最高潮にまで高めたポイント。ゆったりと落ちるカールのフォルムに、コロナ禍ということを忘れさせるほどの完璧な美がこめられている。
コメディ/ミュージカル部門の女優賞にノミネートされたリリー・コリンズは、持ち前のガーリィルックにグラムなエッセンスを注入。上まぶたにはパープル、下まぶたにはグリーンのシャドウをのせ、目もとの華やかなコントラストで個性を際立たせていた。トレードマークの太眉とソフトマットなレッドベージュのリップが、さらなるインパクトを後押し。ピンカールで流れるようなウェーブをつけた髪型も、自身が演じたドラマ「エミリー、パリへ行く」(2020年)の主人公ばりの刺激的なミックススタイルを印象付けている。
パーティーやイベントのたびに披露されるエル・ファニングのルックは、まるで現代のプリンセスのよう。「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」でコメディ/ミュージカル部門の女優賞にノミネートされた今回も、期待を裏切らない魅力的なヘア&メイクだった。太めに描いたブラックアイライナーが、彼女の少女のような顔立ちにドラマティックな魅力をプラス。それをマカロンピンクのリップとチークが、スイートな魅力へと昇華させている。タイトにまとめたシニヨンヘアは、ドレスアップの引き立て役。バレリーナのような潔さで、凛とした佇まいを生み出していた。
シャネル(CHANEL)のオートクチュールドレスをスパイシーにアップデートさせていたのは、「ユナイテッド・ステーツ vs ビリー・ホリデー」で映画の部ドラマ部門の主演女優賞を受賞したアンドラ・デイ。細かなスパイラルパーマをハイポジションでまとめた髪型は、カールさせたベビーヘアがクールなアクセント。さらにヌードトーンのシャドウとアイラッシュのコントラスト、輪郭を大胆に残したボルドーピンクのリップが、タフでセンシュアルなムードを加速させていた。ゴールデン・グローブの主演女優賞を黒人系女優として初受賞したこの日に、ヘア&メイクでヒストリカルなバイブスを投入した意味は大きいようだ。
赤リップはアワードスタイルに欠かせないが、今回とりわけ華やかさで目を引いたのが、「オザークへようこそ」でテレビの部助演女優賞にノミネートされたジュリア・ガーナー。端正に縁取られたリップラインと鮮烈な赤の発色が、彼女の知的な魅力を鮮やかに際立てていた。太めに描いたアイブロウとしっかり立ち上げたまつ毛も、唇に負けない存在感を発揮。メイク担当のハン・ヴァンゴによると、メイクはすべてシャネルのプロダクトで仕上げられており、どおりでモダンなエレガンスが漂っている。
アイコンであるカーリーヘアは、フロントは立ち上げ、サイドはタイトにまとめてアレンジ。このさりげないロックなニュアンスが、スタイルの鮮度をより高めていた。
Text: Rie Maesaka Editor: Mika Mukaiyama
