実は、小学校の低学年から17歳のころまで器械体操をやっていたというマッツ・ミケルセン。その体操クラブに定期的に訪れていた振付師の先生に才能を見込まれたのが、ダンサーとしての入り口だったという。そして奨学生としてニューヨークでアメリカ人振付師マーサ・グレアムの元でふた夏ダンスを学んだ後、故郷デンマークで現代バレエカンパニーに所属。
「ニューヨーク・タイムズ」によると、「数えきれないほど『シカゴ』や『ウエストサイドストーリー』といったミュージカル演目に出演したけど、僕の基本はマーサ・グレアムに習ったダンサーであること」
しかし、俳優になってからはそのダンススキルを封印。もはや彼のダンスができる説が伝説となりかけていたが、今年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞したトマス・ウィンターベア監督の『アナザーラウンド』(9月3日公開)で四半世紀ぶりに舞った! 31歳で演劇学校に入学してからはほとんど踊っていなかったというマッツだが、本作のラストで55歳とは思えない圧倒的なパフォーマンスを披露してくれるので、これは見逃せない。
ジャネット・ジャクソンの曲に合わせてビートを刻むのが大好きだった幼い息子の姿を見た母親が、ダンス教室に通わせたことがトム・ホランドのダンス人生の始まりだった。当初は、毎週土曜日にウィンブルドンのYMCAでヒップホップを習っていたという。「ザ・タイムズ」によると、そこでミュージカルに挑戦することをすすめられ、9歳でミュージカル『ビリー・エリオット』(ジェイミー・ベル主演の映画『リトル・ダンサー』をベースに制作されたミュージカル)のオーディションを受けて見事合格。バレエを含む厳しい特訓を経て、12歳のときに主人公ビリー役として舞台に立ったのだ。
2017年の『スパイダーマン:ホームカミング』の主役に抜擢されたことで世界的な知名度を獲得したトムだが、TV番組「リップシンク(口パク)バトル」でゼンデイヤと対決をした際、リアーナの曲に合わせて力強いダンスを披露。
「リッチモンド&トゥイッケナムタイムズ」の取材では、その才能に関して「両親は僕がどっちの才能を受け継いだかで、よくお互いにからかいあっているんだ。でも、二人のダンスを見たことがある僕からすると、正直生まれたときに病院で取り違えられたとしか思えないんだ」と冗談を言っている。親に才能がなくても、子どもには才能が宿る可能性があるという嬉しい希望を与えてくれるひと言は、多くの人の救いになるだろう。
アカデミー賞の常連で、常にハードな役作りで話題にあがるクリスチャン・ベールがダンス上手だと知っている人は少ないのではないだろうか。19歳のときに出演した『スウィング・キッズ』(1993)では長いダンスシーンを、『アメリカン・サイコ』(2000)では独特のダンスを披露してはいるものの、もともと彼がロンドンのロイヤルバレエ学校出身というのはあまり知られていない事実だ。
幼い頃に彼と同じバレエスクールのジュニアクラスに通っていた舞台女優、アネット・マクラフリンが「ウエールズ・オンライン」に語ったところによると、「クリスチャンはクラスで唯一の男の子で、女子生徒は全員彼のことが好きだった。ドラムも上手でとても目立っていたわ。ところが、スティーヴン・スピルバーグ監督の『太陽の帝国』(1987)のオーディションを受けてから、二度と学校には戻らなかったの」
その『太陽の帝国』では4000人の中からオーディションを勝ち取りハリウッドデビューをはたしている。そんなクリスチャンの歌って踊るパーフェクトな姿が観られる1作が『ニュージーズ』(1992)。後に「ミュージカルは好きじゃない」と語ったベールだけど、そうは見えない素晴らしいパフォーマンスを『ニュージーズ』で披露している。18歳のときの出演作はマストチェックだ。
ヴィン・ディーゼルといえば、2001年から『ワイルド・スピード』シリーズのドミニクとして主演を張り続けているアクション俳優。この夏、シリーズ9作目となる『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(8月6日公開)の公開が控えている。今年、53歳を迎えるヴィンだが、1980年代にNYのコロンバスサークルやワシントン・スクエアでブレイクダンスを踊り、俳優になる前はクラブの用心棒として働いていた過去を持つ。
その理由をトーク番組「ライブ・ウィズ・ケリー&ライアン」でこう語っている。「用心棒だと、クラブでただで踊れたからあの仕事が好きだった。用心棒としてトラブルに巻き込まれたとはないよ、踊っているとき以外は。本来、用心棒は人を追っ払ったり、注意を払ったりしていないといけないのに、俺が踊ると周りに人だかりができちゃって用心棒の仕事にならなかったんだ」
『スリー・ビルボード』(2017)でアカデミー賞助演男優賞を獲得したサム・ロックウェル。2018年には『バイス』で再び同賞にノミネートされるなど、役者としてノリにのっている彼は、サンフランシスコ・スクール・オブ・アーツ在学中の高校時代、ブレイクダンスにドハマりしていたストリートダンス派。「ニューヨーク・タイムズ」によると、「(マイケル・ジャクソンの)『スリラー』や、(プリンスの)『パープル・レイン』が出た頃は、下手くそなブレイクダンスをした」こともあれば、「ジェームズ・ブラウンに大きな影響を受けたし、『卒業白書』(1983)でのトム・クルーズの踊りも真似した」ことがあったとのこと。
そんなダンス自慢なだけあり、映画では予想以上にダンスシーンが多い。『チャーリーズ・エンジェル』(2000)では、ジェームズ・ブラウン顔負けのスプリットを、ジョージ・クルーニー監督の『コンフェッション』(2002)ではテレビプロデューサー役で華麗なステップを、『銀河ヒッチハイクガイド』(2005)では演じたキャラクターが大統領選挙のためにPVを制作。そのPVの中で怪しげなダンスを、さらに『月に囚われた男』(2009)でも踊っているのだ。
しかもトーク番組「レイト・ナイト・ウィズ・ジミー・ファロン」では、即興ダンス対決に挑戦。「気取って投げ縄」「デオドラントをつける」「6匹の動き回る猫を抱っこ中」などのお題に合わせた最高なダンスで大喝采を浴びた。今後、サム・ロックウェル作品ではダンスシーンに期待せずにはいられない。
Text: Rieko Shibazaki
