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ケイティ・ホームズがニューヨークから希望を綴る──「すべてを受け入れて感謝する」

10代で映画界に入り、ハリウッドきっての大スターとの結婚・離婚を経て、今も独自のペースで歩み続けるケイティ・ホームズ。ロックダウンの日々を通じて、彼女が見出した日常のささやかな喜びや人々との静かな連帯、失われない希望とは。
ケイティ・ホームズがニューヨークから希望を綴る──「すべてを受け入れて感謝する」

1年ほど前、ケイティ・ホームズが最初に『ヴォーグ・オーストラリア』との撮影に臨んだ当時の世界は、今とはまったく違っていた。その後、ロックダウンに揺れるニューヨークで1年を過ごしたケイティは、2021年を前に、人々を結びつけてきた心の強さや絆、共感について、さらには制約の多い生活の中で癒しとなった趣味について、自らの体験からくる思いを綴ってくれた。

※この記事は、世界全26エディションのヴォーグが初めて行った共同プロジェクト「HOPE」号のために企画された『ヴォーグ・オーストラリア』のカバーストーリー撮影とインタビューです。

ロックダウンの日々を豊かにした愛読書と映画。

「さまざまな物を他の場所へと移し、変貌させ、拾い上げてはあちらこちらへと動かす。それが自然の務めだ。万物は絶え間なく移ろいゆく。だが心配は無用だ。ここには新しいものなど何もない。すべてが見慣れたものだ。その比率ですら、まったく変わっていない」──マルクス・アウレリウス『自省録』より。

1年近く前、私はシドニーに降り立ち、やる気と情熱に満ちた女性たちの出迎えを受けました。それからの数日をともに過ごす中で、私は彼女たちと親しくなりました。私たちはドナルド・マクドナルド・ハウス(重い病気で入院している子どもに付き添う家族のための滞在施設)を訪問し、チャリティ活動のひとつであるマックハッピーデーを祝い、寄付を呼びかけました。そのなかで出会った家族の皆さんや、このすばらしい目的に共感する多くのオーストラリアの人々の心の広さに、私も心を新たにしました。

私がお会いした家族の方々は、皆さんとても心が強く、苦しい状況にも余裕を忘れず、根気強く向き合い、シンプルだけれどとても尊い周囲からの配慮に、感謝の意を示していました。マックハッピーデーから数日後、私は『ヴォーグ・オーストラリア』の撮影を行う場所へ、車で向かいました。この号の表紙に選ばれたことをとても誇りに思い、最高に華やかで、それでいて地に足の着いた強さを持ったイメージを作り出す撮影に参加できたことに、私の胸は高鳴りました。ここでは、並外れたアイデアと才能を持つ女性たちと一緒に、仕事をすることができました。彼女たちのチームワークや、私とのやりとりにも、できあがった写真と同じように、華やかさと強さがありました。

今日はニューヨークにいます。今は20年10月。数え切れないほどの人の不屈の精神と努力によって、この街全体が息を吹き返しつつあります。最近は、たとえ見知らぬ人との間でも、心がつながっているという連帯感があります。地下鉄は前ほど混雑してはいませんが、乗客には周囲にいる人たちが以前よりはっきりと「見えて」いるようです。他の人を目にすると、精神や感情、そして肉体と、すべての面で、このパンデミックを生き抜いたことを称えたいという気持ちがわいてくるのです。

私にとって、パンデミックは次から次へと新たな体験が押し寄せる日々でした。この期間に、私は自分が大切に思っている本を、再び読み返しました。『世界と僕のあいだに』(タナハシ・コーツ著)、『ジャスト・キッズ』(パティ・スミス著)、『Play It as It Lays(原題)』(ジョーン・ディディオン著)などです。

裁縫や絵を描くこと、文章を綴ることなどの趣味が、確実に満足感を与えてくれる、新たな時間の過ごし方になりました。ただひたすら家で時間を過ごし、耳を澄まし、結果を出さなければというプレッシャーを感じることなく、今を大切に生き、母と娘の自然な生活のリズムに身を任せることができたのは、この期間に得られた、最も大きな収穫でした。

在宅生活の間、私は気分転換を兼ねて、イングマール・ベルイマン、アニエス・ヴァルダ、ジャック・ドゥミ、ジョン・カサヴェテスといった巨匠の名作映画をよく観ました。『シェルブールの雨傘』は、ロックダウン生活に大きな喜びをくれました。また、ジャック・ドゥミ監督についてのドキュメンタリーを観て、彼がこれほどたくさんの人に影響を及ぼしていたことを知り、物語が持つ力や世界に喜びを広めることの価値を、改めて感じました。

先が見えないこの時期、私が常に意識していたのは、創造力と前向きな心を持つように努めることでした。この生活を通じて、一瞬一瞬への意識を高め、すべてを受け入れ、感謝することが、私にとっては一貫したテーマでした。

変わり続ける世界で、私たちをつないでいるもの。

久々にオハイオ州に住む両親と会えたときは、まるでクリスマスの日の朝のように感じられました。それまでの数カ月間は、フェイスタイムで話をするしかなかったのですから。母の目は生き生きと輝き、父の手にはいっそう力がこもり、私たち親子は今まで以上にしっかりとハグを交わしました。

ワシントン・スクエア公園で友だちと待ち合わせをしましたが、その友人には、やっと歩き始めたばかりの幼い子どもがいます。私も、自分の子どもが初めて歩いたころのことを思い出しました。ノスタルジックになった私は、時間が持つ力、そして命が受け継がれていくという事実に、畏敬の念を抱きました。

10月になり、風の強い日には木の葉が舞い落ちるようになりました。私の家の窓が初雪で覆われ、きれいな景色が見られるのももうすぐです。以前と比べて、私の気分も良くなり、やる気がわいてきて、感謝の思いがさらに強まります。美しい世界が、私たちを待っています。

世界は変わり続け、新たな姿になりつつあります。そして、私たちは以前より人として成長したと、私は確信しています。なんとなく惰性で続けていたルーティンがなくなり、水面下に隠れていた真実が明らかになり、人々は恐れを感じながらも果敢に前に進み、新しい世界がどんなものになるのか、オープンに受け入れようという気持ちを持つようになりました。この現実が、私たち全員をつないでくれています。

ショッキングな出来事で始まったこの日々が、希望に満ちた形で終わることを、私は願ってやみません。この1年で、私たちのお互いに対する共感はとても深くなりました。この気持ちを、2021年、そしてその先も、ずっと持ち続けていきたいものです。

Profile
ケイティ・ホームズ
1978年、米オハイオ州生まれ。5人きょうだいの末っ子。高校時代から演劇を学び、モデルとしての仕事もスタートする。映画デビューは97年。05年から交際を始めたトム・クルーズと06年に結婚、同年に長女も出産。12年に離婚。13年から交際していた俳優ジェイミー・フォックスとは19年に破局。16年には監督デビューも果たす。20年7月に公開を予定していた主演映画『The Secret: Dare to Dream(原題)』は配信スルーに。

Photos: Bec Parsons Collage: Cynthia Swanson Stylist: Jill Davison