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小松菜奈──もっともっと上に、自分を高めていきたい。 いつまでも同じ場所にいるわけにはいかない。【Women of the Year】

シャネル(CHANEL)のアンバサダーを務めるなど常にモード界から熱い視線を浴びる小松菜奈。女優としての存在感を年々増幅させる彼女が語る映画への愛、そして未来の自分に課すものとは。
小松菜奈(Nana Komatsu)/女優、モデル

中に着たワンピース ¥87,000  ベスト ¥56,000  スカート ¥135,000/すべてNOIR KEI NINOMIYA(コム デ ギャルソン)  イヤカフ(上) ¥31,000  (下) ¥20,000/ともにTOMWOOD(ステディ スタディ) 

もっと上に行けるよう努力を続けていきたい。

青々と晴れ渡る初冬の空を背負いながら、伸びやかに次々と自らポーズを変えていく。そんな小松菜奈の姿は優れたファッションモデルにしか見えない。

恵まれた容姿と生来のセンスを買われ、シャネル(CHANEL)のアンバサダーを務めるなど常にモード界から熱い視線を浴びているが、その一方で、年々存在感を増している肩書が「女優」だ。

「モデルとしてずっと活動していきたいなと考えていました。まさか女優をやらせていただくことになるなんて思ってもいなかった展開で。でもお芝居は楽しいし、モデルで培った表現力を生かすことができる。そして女優業に取り組むうちに、モデルの仕事にストーリー性のあるテーマを与えてもらうことが増えました。それぞれの勉強になるので、これからも両方続けていきたいと思っています」

女優として活動するフィールドは主に映画。それは映画への並々ならぬ愛がそうさせている。

「もともと映画をよく観に行っていました。つくり手の愛情が伝わってくるし、臨場感のある音響や役者たちの繊細な表情などは映画館でしか味わえない。よいお芝居を見るとぞくぞくして、原動力になるんです。そしてとにかく撮影現場が大好き。時間をかけて一からつくり上げていくのが刺激的で楽しいし、スタッフさんも一緒になって役の感情を共有し、演技に反応してくれます。ちゃんと伝わったんだ、と実感できる環境なので自分の性格にすごく合っていて。いろんな世代の映画好きの人たちが集い、休憩時間には日本の映画をもっとよくしていきたいと熱く語り合っている。作品に参加するたびに映画って本当にいいな、と思いますね」

そんな大好きな映画で2020年に出演したのは、『糸』と『さくら』。『糸』はコロナ禍で公開が延期になり、自身が発するべき宣伝の言葉に悩んだが、平成の歴史とそれに対する人々の思いを振り返るような内容が、皆が自分を見つめ直すタイミングにより一層フィットするのでは、と思い至った。『さくら』では兄を溺愛する奔放な末妹、美貴役を熱演した。

「美貴は今まで演じてきた役とは全然違って得体が知れない人物で、すごく難しかった。何をやっても美貴っぽさがあって、制限がないというか。原作を読んで想像を膨らませました」

どの出演映画を見ても、スクリーンに映っているのはたしかに小松菜奈。しかし、いつもあらゆるタイプの役柄に自然と溶け込んでいて、もうその人にしか見えなくなる。昨年は日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞するなど演技力への評価も高まっているが、決して満足することはない。

「同世代ですてきな方に出会ったり、よいお芝居を見たりすると負けられないな、という気持ちになります。もっともっと上に行けるように努力しなきゃいけないし、目標を去年よりも今年、来年よりも再来年、と高めていきたい。いつまでたっても同じ場所にいるわけにはいかないと思うんです」

「とにかく目の前にあることを一生懸命頑張る」と言い、現場では共演者の芝居を間近で見られることをありがたく思いながら日々研究を重ねる。一歩でも前に進もうとする彼女が天性の才能に奢ることは決してないだろう。

Photo: Nobuko Baba Stylist: Ayaka Endo Hair: Hori at Be Natural Makeup: Kie Kiyohara at Beauty Direction Interview & Text: Itoi Kuriyama Editors: Yaka Matsumoto, Maho Kochi

Profile
小松菜奈(Nana Komatsu)
1996年、東京都生まれ。女優、モデル。2014年初出演映画『渇き。』で裏の顔を持つ女子高生を演じ、日本アカデミー賞新人俳優賞など数々の新人賞を受賞。2020年は『閉鎖病棟─それぞれの朝─』(19)で第43回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。出演映画『糸』と『さくら』が公開された。シャネルのアンバサダーを務めるなど、モード界でも活躍の場を広げている。視線恐怖症で不登校の少女を演じた『恋する寄生虫』など、今後も出演映画が多数控えている。