作家たちの猫への眼差しが愛おしい/名古摩耶
---この宝物は?
『愛猫記』と題された、猫好き作家たちの随筆集です。
---出会いは?
駒場の日本近代文学館に併設されている「BUNDAN」カフェ&バーで、ふと手に取ったのがきっかけ。読んでみたら、作家たちの猫に向ける眼差しや洞察が面白おかしく愛おしく、これはぜひ自分の本棚にも置いておきたい! と、とても古い本でしたがネットで探してゲットしました。
---お気に入りのポイントは?
吉行淳之介に永六輔、伊丹十三に開高健など、愛猫家であった文学者たちが、猫との馴れ初めや暮らし、その醍醐味を、ときに面白くときに真剣に綴っているのですが、どんな名高い作家とて、猫の話となると愛がこんなにダダ漏れしちゃうんだ、ということが文面からひしひしと伝わってきます。彼らの卓越した観察眼に基づいて語られるパーソナルストーリーの数々は、「え、私も猫をもっと知りたい!」とウズウズさせてしまう魅力に満ちていて、私はまんまとそれにやられてしまった、というわけです。
---この宝物のエピソードは?
実は本書に出合うまで、完全なる犬派でした。むしろ子どもの頃のトラウマから猫は苦手。でも、本書、特に伊丹十三のエッセイで猫と犬の違いがユーモアたっぷりに描写されているのを読んで、一気に猫に対する興味が爆発しました。肥大し続ける興味を抑え込むなど到底できず、週末ごとにペットショップに足を運び、気づけば猫ちゃんを家に迎え入れていたという始末。その結果、我が家では、先住犬のトイプードルと無愛想なブリティッシュショートヘアが、人間ども(主に私)を「お腹がすかれたのですね! お外で遊びたいのですね!」とはべらせているというわけです。