編集N 今週のテーマは間も無くやってくる、バレンタインを意識したコーデについて。モードだけどデートにも使えるアイテムや着こなしを、ズバリ教えてください。
影山 ここ最近バレンタインというと、女友達や自分のためにチョコレートを買って楽しんだりする人も多いですよね。とはいえデートをする人もいて。いずれにせよ、いつもよりちょっと可愛くおしゃれしたいという気分ですよね?
編集N おっしゃる通りです。 可愛いけど張り切りすぎていないラインの見極めって、意外と難しいですよね。ヴェロニカ・ハイルブルンナーは、こんなにも大胆に赤のコートを取り入れているのに嫌味じゃなくて、むしろおしゃれです。
影山 彼女は色や素材の選び方が上手ですよね。このコートはシャネル(CHANEL)のもののようですが、カラーアイテムこそこうやって上質な素材のものを取り入れることで、大人っぽく洗練されたムードに持っていくべき。コートを主役にして他をシンプルに引き算するというバランスも上手です。
影山 もう少し真似しやすい例だと、キャロライン・イッサのようにボウタイブラウスなどで色をチラ見せするのもいいですね。
編集N 確かに。これだったら仕事帰りでもそのまま出かけられそうですし、いつもの着こなしにワンポイント取り入れるだけで実践できるというのがいいですね。
影山 カラーアイテムで取り入れるなら、色自体には主張があるけれどもデザインは甘くないものを選ぶと、バランスがとりやすいと思います。可愛さを求めてしまう気持ちもわかるのですが、もしそれを優先するなら服よりも小物で取り入れましょう。
編集N 今回私がときめいたのは、女優のヤラ・シャヒディの着こなし。全身ナヌーシュカ(NANUSHKA)のアイテムのようです。アイテム一つ一つはメンズライクなのに、カラーでスイートに仕上げているのが心憎い! エコレザーのジャケットとパンツにも惹かれますが、個人的にはこのシャツがすごく欲しいなと思いました。
影山 可愛いですね!
影山 私がいいなと思ったアーニャ・ジローヴァの着こなしも、同じワントーンのスタイリングです。
編集N 二人とも淡いトーンのピンクを選んでいて、アイテム自体や着こなしがミニマルで甘くないというのがポイントでしょうか。
影山 そうですね。でもワントーンスタイルとなると既に手持ちのアイテムがあるか、もしくは投資する気合いがないとなかなか実践できないですよね。そういう意味ではすごく今っぽくておしゃれですが上級者向けと言えるかもしれません。
編集N 確かに。今の時期だとアウター込みのスタイリングになりますし、普段着ない人にとっては、こういった色味のワントーンコーデはハードルが高いかもしれません。ここに黒のコートを羽織ると、全然印象が変わってしまいますよね。
影山 そうなんです。あとはもしくは、インフルエンサーのオルガ・カープットのように、インナーはいつものコーデでまとめつつ、ピンクなどのスイートなカラーのロングコートで全身を覆うのもひとつの手。色の分量が多くなることで、ワントーン風のムードが味わえます。
編集N こういうパープルがかったピンクも、大人っぽくて素敵ですね。
影山 これぐらいだと、どういった層の人にも支持されやすいバランスだと思います。コントラストがきれいですし、スクエアトゥの靴で捻りも効いていて。モードかつ好感度の高いスタイルですね。
編集N 赤やピンクを着ることに気恥ずかしさを感じてしまう人は、ホワイトでもかわいいですよね。このクロエ・アルシュのレースドレス姿が新鮮でした。いつもはマニッシュでクールな印象な人がこういう甘いアイテムを着ていると、ギャップにときめきます。
影山 確かに彼女のように自分のキャラクターを確立している人が、甘いワンピースをクールに着こなしているのは素敵ですよね。モードな小物使いも効いています。ただ私たちが安易に真似するとコスプレっぽく見えてしまって、危険なパターンかもしれません。
編集N 骨格とか体型もありますよね。となると真似しやすいのは、「ROTATE」のデザイナー、ジャネット・マドセンの着こなしでしょうか。ピンクで全身を揃えるのは難しくても、ホワイトなら手持ちのアイテムでトライ出来そうです。中でも白ニットは永遠のモテアイテムかと(笑)。
影山 白ニットは確かに万人受けしそう。これぐらいのスタイリングだと、リアルでいいですね。ホワイトコーデは自分でもちょっとした特別感が感じられますし、周りから見ても華やかさがあっていい。好感度の高いスタイルを作れると思います。黄みがかっていないホワイトでクリーンにまとめているのもポイントですね。
編集N もしこのスタイルにアウターを合わせるなら、やっぱり白がいいのでしょうか?
影山 そこまでワントーンに拘らなくてもいいと思います。何色のアウターでも合いそう。コーデしやすいというのががまた、白の強みですよね。重く見えないですし、ベーシックさもあって。
編集N コーデしやすい色選びは大事ですよね。バレンタインシーズンは短いので、せっかくならデイリーにも使えるアイテムだとうれしいです!
影山 そういう意味でもホワイトはすごくリアル。私もコートを持っているのですが、思った以上に使えるので重宝しています。ただ汚れが目立つのでケアをお忘れなく!
編集N 冒頭でも仰っていましたが、カラーアイテムでリアルさを追い求めると行き着くのは小物でしょうか。ヴィクトリア・ベッカムも赤のブーツが最近気になっているご様子。自身のブランドのものだと思うのですが、結構履き回しておて、使いやすそうなんです。これをバレンタインに選ぶというのも、アリですよね?
影山 Nさん、結構攻めますね(笑)! アイテムとしてはすごく素敵ですが、これはリアルではないかもしれないです。関係性にもよるけれども大多数の人は怯んでしまいそう(笑)。でも小物に限らず、色を差し込むという発想はすごくありだと思いますよ。
編集N いきなり暴走してしまったようで、すみません(笑)。
影山 でもヴィクトリアって本当におしゃれですよね。攻めているけどベースにエレガントで女性らしさがあって、参考になるところが沢山あると思います。小物ではないけれどもこのシャツの効かせ方もすごくいいなと思いました。水色と朱赤の合わせもきれい。
編集N 同じシューズでも、この日のようなパンプスはアイテム自体は派手ですが真似しやすそうです。
影山 ワンポイントにするなら、こういったヴィヴィッドなものや質感にパンチの効いたアイテムが生きてきますよね。シンプルな着こなしに加えるだけで、雰囲気ががらりと変わります。なによりこういう華やかなアイテムは、身につけるだけで自分のテンションがすごく上がるので、そういう意味でもバレンタインのドレスアップにぴったりだと思います。困ったときはとりあえずヴィクトリアのスナップを参考にするとよさそう(笑)。
改めて自分のワードローブを見返してみたのですが、バレンタインのムードにマッチするようなアイテムの少なさに驚愕してしまいました(笑)。でもその中で自分なりのデートスタイルをイメージしてコーデを組んでみたので、ご紹介しますね。
ピンクのスカートはステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)のもの。ヴィヴィッドだけど甘すぎない色味とハリのある素材で、モードに仕上げられるところがポイントです。このくらいの分量であれば、思い切り強めのピンクを取り入れても派手になり過ぎません。デートといえども普段の着こなしの延長線で装うのが自分のスタイルなので、バレンシアガ(BALENCIAGA)のライダースとタートルニットを合わせて自分らしくまとめてみました。
そして最後に、バレンタインコーデによさそうなランウェイスタイルもいくつかピックアップしてみたので、もしよかったら参考にしてみてください!
Profile
影山蓉子
eight peace所属のスタイリスト。2009年にキャリアをスタートし、『VOGUE JAPAN』をはじめさまざまなモード誌や広告などにて幅広く活躍。トレンドをモダンに落とし込んだスタイリングに定評がある。
Text: Asa Takeuchi Editor: Airi Nakano