ショーを観終えた小松菜奈の第一声は、あふれる感情を落ち着かせながら、まっすぐでクリアだった。「ダカールを訪れ、このショーを自分の目で見ることができて、本当によかった。文化、芸術、音楽、文学を五感で感じ、そのエネルギーがショーに凝縮されていて。シャネル(CHANEL)の無限の創造力を目の当たりにしました。絶えず変化することで、シャネルはその魅力を増していくんだなって」
昨年12月6日、セネガルの首都、ダカールで2022–23年メティエダール コレクションを発表したシャネル。メゾンとセネガルの継続的な交流の出発点であり、3日間にわたる文化プログラムの一環として行われた。
会場の旧司法宮を彩ったのは、鮮烈な色、ビーズやスパンコール刺繍、ツイード、植物モチーフ。セネガルの豊かな文化とメゾンの傘下にある専門アトリエのサヴォアフェールを遺憾なく発揮したこのショーを実現するために、ヴィルジニー・ヴィアールは何度もダカールを訪れ、現地の人々と対話を重ねたという。
悲しみを乗り越えた、世界遺産のゴレ島
「ヴィルジニーのクリエイションは、その地に敬意を持ち、学び、人とつながり、魂を服に吹き込んでいる。そういうところが好きなんです」。また、「負の遺産」として世界遺産に登録されているゴレ島にも足を運んだ小松。
「ここでの歴史を知り心が痛くなりましたが、実際に歩いて、見て、聞くことが、一番の真実。忘れてはならない過去だし、感じたことをほかの人に伝えていきたいです」と、写真や文字だけでは得難い、真の情報の受け取り方を再確認したという。「また会いたい」。そう彼女が話す現地の人々の寛容な精神、日常に見出す喜びや、真の対話から生まれる予測不可能な感動。さまざまな出合いから、かけがえのない「体験」を実感した旅となったようだ。