パリのチュイルリー庭園で、有観客のショーを開催したディオール(DIOR)。舞台デザインを担当したのは、イタリア人アーティスト、アンナ・パパラッチ。彼女の60年代の作品に見られるボードゲームのようなカラフルな円形ステージを設置し、壁には「The game of nonsense(ナンセンスのゲーム)」などのスローガンが書かれたサインが点在していた。
マリア・グラツィア・キウリは、ショーノートの中で、「現実に疑問を投げかけ、想像力の扉を開く空間としての、遊びの概念を追求するパパラッチの作品にインスピレーションを受けました」と説明する。
ルックは、鮮やかなカラーリングとコンパクトなシルエットがキーだ。キウリは、メゾンの3代目デザイナーとして30年間にもわたって活躍したマルク・ボアンの時代、特に当時のファッションのあり方を一変させた1961年のコレクション「スリムルック」に焦点を当てたという。
当時、斬新だったロングコートの中にミニスカートを合わせるスタイルもリバイバルした。ほかにも、Aラインのベビードールドレス、細身のミニスカートやジャケット、コンパクトになった「バー」ジャケットなど、メゾンの60年代を象徴するスタイルで構成。もちろん、現代のミレニアル世代やZ世代に馴染み深いスポーティーなタンクトップや、カラフルでクリアなアクセサリーでツイストを効かせることも忘れない。
モダンな服作りを追求したボアンの精神はシューズにも反映され、歩きやすく快適なローヒールを取り入れたメリージェーンやブーツがコレクションに華を添えていた。モデルたちがゆっくりとステージを歩き回る様子は、アフターコロナのダンスフロアをイメージしているかのよう。
キウリの手によって、60年代の若者の流行がモダンに蘇った今季。当時のことを知らない現代女性にとっては目新しく、手に入れたくなるアイテムが豊富に揃っている。
また、ブランドのアンバサダーを務めるBLACKPINKのジスをはじめ、オリヴィア・パレルモ、ロザムンド・パイク、キアラ・フェラーニなどセレブリティが集結したことも、今回のショーのハイライトのひとつだ。彼女たちを一目見ようと会場の入口周辺に大勢の人が群がり、以前のようなファッションウィークでは当たり前の光景が再び見られた。
Photos: GoRunway(Look), Courtesy of Dior(Celebrity) Text: Maki Saijo