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美しいのは“実年齢 −20%”。 意外と知らないレーザー治療、基本のキ。【編集長の基本をアップデート企画】

本誌編集長とビューティーエディターの三谷徹が、美容の基本をアップデートする人気の連載企画。今回のテーマは「レーザー治療」。第一人者であるクリニックFの藤本幸弘先生をゲストに迎え、今さら聞けないイロハを深堀りする。“自分史上最高の状態”に整えるためのエイジングケアとは? ※「ほうれい線が6ミリ縮む!? “マスク老け”のコリをほぐす顔マッサージ」もCheck!
そもそもレーザーとはどんなもの? 今さら聞けないイロハを解説。

シネロンキャンデラ社の複合機器「トリニティプラス」。

三谷(以下M):今回は、レーザー治療を専門に行っているクリニックFの藤本先生をお招きして、レーザー美容について深く掘り下げていきたいと思っています。編集長は今回がこのクリニックで施術を受けるのは3回目とのことですが、以前はどんなメニューを体験したのでしょうか?

藤本先生(以下F):渡辺編集長が体験したのは、シネロンキャンデラ社のトリニティプラスという複合機器です。3つの機器を組みわせた施術手法で肌の再生に効果的なんです。まずは「eplusSR」を使って、肌の細胞のターンオーバーを上げ透明感を高めます。次に、ハリを持たせるタイトニングを行うために「サブライム」を照射しました。真皮層のコラーゲンエラスチンを増やすのが目的です。最後に照射した「モティーフ」は、皮膚細胞を寄せることで、シワや毛穴を小さくするリサーフェシング効果を促します。編集長、施術はいかがでしたか?

渡辺(以下W):造形的にどこかが急に変わったということではなく、施術後2〜3日目の肌の明度が明らかに上がったことに驚きました。メイクのノリも目に見えて違った実感が。一言で言うと「肌のエネルギーが充実した」という感じですね。そんな変化が手にとるようにわかったのが驚きで、気分も上がる効果がありました。

「eplusSR」は、より広域な波長の光と高周波の相乗効果で、シミ・そばかす・ニキビ跡・赤ら顔を改善。さらに、高周波が真皮の線維芽細胞を活性化し、コラーゲン生成を促してハリ感やキメを改善させる効果もある。

M:僕自身は脱毛レーザーやフォトフェイシャルなどを体験していますが、そもそも、レーザー治療の基本を知りたく。まず、エステでの光施術と、医療機関でのレーザー治療の違いはどんな点でしょうか?

F:医療機関のレーザーと、エステの光は、出力(瞬間風速)が20〜100倍ぐらい異なります。分かりやすくお伝えすると、医療機器であれば実際に肌が若返ることは理論、技術的に可能ということになりますが、エステティックだと法的にこうした機器を使うには限界があります。

W:私の場合は、何か一つ美容医療の中で選ぶとしたらやっぱりレーザーかなと思ったんです。先生のお話から、なぜレーザーがエイジングケアの中で優れているものなのか掘り下げていただけますでしょうか。

F:まず(エイジング対策においては)、大きく分けて4つのことができると思ってください。肌の細胞のターンオーバーを促すことで透明感を上げるブライトニング、真皮層のコラーゲンエラスチンを増やすことでハリを持たせるタイトニング、肌を平らにするリサーフェシング、そしてリフティングです。それぞれの目的に合わせてレーザーの波長が違い、機械の種類も異なります。どんな年齢でも光が当たってシミができる速度は同じですが、若いほうがターンオーバーは早いですね。加齢とともにその速度は遅くなってしまいます。ただ唯一レーザーを打ち込むことで、細胞のターンオーバーを促すことができるんです。つまり、透明感が上がってくるということですね。ピンポイントでシミを取るよりも、全体の透明感とハリを出したほうが若く見えて、高感度につながります。

M:(施術体験者のビフォア・アフターを見ながら)ホントですね! 全然違います。しかも不自然さがまったく無いです。

W:レーザーって新しい治療方法なのでしょうか?

F:はい。レーザーが最初に治療に使われたのは90年代です。現在までの約20年間で、レーザーに次いで、光(フォト)、RF(ラジオ波)、フラクショナル、クライオ(冷凍凝固)、ハイフ(高密度焦点式超音波)、ハイフェム(高密度焦点式電磁エネルギー)などといった、7度にわたる「エネルギー革命」が起こったと僕は考えています。

「サブライム」は、赤外線と高周波の相乗効果で肌の深層部まで作用し、コラーゲン生成を促し肌を引き締める。施術後に、ハリ感やリフトアップ効果が期待できる。

「モチーフ」は、ダイオードレーザーと高周波の相乗効果でコラーゲン生成を促し、小じわの改善や毛穴の引き締め、肌のハリ感を高める効果が。サブライム」と組み合わせることで、より高いタイトニング効果が得られる。

“実年齢 −20%”で留めておくのがいいワケ。

ヘザー・グラハムは、「実年齢 −20%」の法則を上手く取り入れている好例。左の画像は2005年(当時35歳)、右の画像は2020年(当時50歳)と実年齢に見合うメンテナンスをしていそうな印象がある。 Photo: Getty Images

W:先生が掲げていらっしゃるのは、“自分の年齢から−20%”という欲張らないチューニングですよね。全体としての調和が大事という考え方に、すごく納得しました。

F:正直にお伝えすると、このくらいで止めておかないと、不気味な印象になってしまうんです。アンドロイドってすごくキレイだけどやや奇妙に見えてしまいますよね。それと同じことで、整えば整うほど気持ち悪くなってしまうと考えています。その人のオーラは実年齢からそんなにズレるものではないので、あまりにも乖離してしまうと違和感が出てしまうんです。

W:オーラというのは、人間としてにじみ出てくる行動や、発言、知性ということですか。

F:おっしゃるとおりです。だからその人の、“自分史上最高な状態”に戻すというのが大切だと思います。例えば、ヒアルロン酸の生成は16歳、コラーゲンの生成は20歳、エラスチンの生成は25歳がピークですが、それをアンチエイジング目的で外から注入することと、レーザーを打って細胞を活性化させるというのは、似たようで全く正反対の考え方なんです。

M:“実年齢 −20%”で留めておくことの重要さを理解していない人、意外と多そうですよね。

F:患者さんの中には、「この目尻のシワを取ってください」というようにピンポイントで伝えてくる方がいらっしゃいます。でも私は、「そのシワを取り除くだけではあまり意味がない」とお伝えしていますね。相対的な治療を行うことの方が効果的な場合もあるため、そのシワをあえて残し、透明感とハリをアップさせて顔全体を整えるという治療を行っています。そのため、事前のカウンセリングで患者さんが納得するまで話し合いますね。

M:なるほど。ところで今は、どのようなレーザーが主流になっているのですか?

F:何のために使うのかにもよりますが、シミ取りで流行っているのはYAGレーザーですね。ただ、レーザーの中にも、目的のために細胞を破壊するものと、作るもの、つまり活性化させるものがあるので、後者を主に打った方がいいと思います。

W:今、ハイフが人気だと聞きますが、これはどういうものでしょうか?

F:リフティング目的に使われていますね。理屈としては、特定の箇所に打つことで、パチンとホチキスで止めるようなもの、と思っていただければわかりやすいと思います。

レーザー治療は歳を重ねてから始めてもOK?

年齢を重ねても愛らしいオーラを放つのがジュリア・ロバーツ。左の画像は2009年(当時41歳)、右の画像は2019年(当時51歳)と、年齢とともに目尻のシワが増えてはいるが、生き生きとしたリアルな表情が美しい。

W:レーザー治療を開始する年齢って人それぞれ違うと思いますが、ある程度歳を重ねてからでも遅くないのでしょうか? 追いつくことができるのか気になります。

F:もちろん追いつけますよ。ただ、その分回数は重ねる必要があると思います。それは消費ではなく、投資としての施術とイメージすると良いかもしれません。施術した回数分だけ肌が整っていきますから。

W:肌の基礎体力が保たれていくということですね。

M:今回のお話で、一言でレーザーと言っても、何のためにやるのか一歩立ち止まって考えなければならないと思いました。いかにも作ったような顔にならないように、全体のバランスを見ることも大切ですね!

W:先生のおっしゃる「実年齢−20%を上限とする」という考え方にまず納得しました。また、部分的に「修正」するのではなく、全体のバランス、調和を考える、というコンセプトにもあらためて共感しました。私たちの顔は個々の個性が根本的に大切なわけなので、それを変えずに「細胞を活性化して、エネルギーを与える」というレーザーの施術は今後も可能性が広がる予感がしますね。

クリニックF
東京都千代田区半蔵門(詳しい住所は予約時に連絡・最寄は半蔵門駅)
03-3221-6461
営業時間/11:00~19:00
定休日/木・日、祝
http://clinic-f.com

Text: Sayaka Kawabe Editor: Mayumi Numao