FASHION / EDITORS

『VOGUE JAPAN』4月号、エディターズレター。

「My Body, My Life  私とからだと社会の関係」と題し、ボディをさまざまな角度から捉えてた『VOGUE JAPAN』の最新号。今年2月にヘッド・オブ・エディトリアル・コンテントに就任したティファニー・ゴドイが、今号の見どころを語る。

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『VOGUE JAPAN』のヘッド・オブ・エディトリアル・コンテントに就任したティファニー・ゴドイ。 Photo: Erick Faulkner

「あなたのからだは戦場だ(Your Body is a Battleground)」─アーティストのバーバラ・クルーガーは、自身の挑戦的な作品の副題にこんな言葉を刻みました。バーバラがこの作品で掲げたテーマは、リプロダクティブ・ライツとジェンダー平等でしたが、この副題は、自分自身を外の世界にさらけ出すたびに、多くの女性たちが感じる思いを的確に表現しています。評価され、値踏みされ、挙げ句に「承認」もしくは「却下」の烙印を押される心理。そして私たちは往々にして、他人のそれと変わらないほど厳しい目で、鏡の中の自分を見つめてしまいます。

「ボディ・コンシャス」をテーマとする今月号を飾るのは、ありとあらゆる姿かたちの「ボディ」をさまざまなタイミングで捉えた、見ているだけで心が明るくなる、華やかなイメージの数々です。このタイミングで、新しいヘッド・オブ・エディトリアル・コンテントとして『VOGUE JAPAN』に加わる、その幸運な巡り合わせに驚きを隠せません。

1990年代の終わりに私がアメリカのカリフォルニアから東京にやってきた当時、よく人々が「顔が小さい」「肌が白い」と言い合うのを耳にしました。それまで私は顔のサイズや肌の白さをとくに意識したことはありませんでしたが、すぐに、日本の女性がそれらの身体的特徴に驚くほどのこだわりを抱いていることを知りました。一方、当時の私は体重への不安に取りつかれていました。何かの理由で人生の先行きが見えなくなると、心のよりどころを食べることに求めるのが常でした。当時は、大学を卒業して社会人となったばかり。しかも生活の場は見ず知らずの異国の地です。何とか自分の道を見つけようと悪戦苦闘していた私は、ありとあらゆる摂食障害の症状を経験します。それでも、その後、治療と並行して精神面でも自分を見つめ直したことで、心の平穏を取り戻したのです。そして今、こうして読者のみなさんへレターを綴っています。

ヨーロッパとアジアにルーツを持ち、最近はアーティスト活動も行うユミ・ヌー。 Photos: Nathaniel Goldberg

「My Body, My Life 私とからだと社会の関係」と題した特集は、アジアの国や地域に展開するVOGUE各誌とのコラボレーションで実現したものです。ここに登場したひとり、ダンサーのアオイヤマダさんは「身体は魂を収納している入れ物」と感じたと、自らの体験を交えて語ってくれました。一方、今号のカバーモデル、ユミ・ヌーは、90年代のトップモデル、デヴォン青木のめいにあたり、アジア系のカーヴィーモデルとしてはじめて、『スポーツ・イラストレイテッド』の水着特集号に起用された実績を持っています。彼女がフィーチャーされたページからは、思わず引き寄せられるようなセンシュアリティが立ちのぼります。これこそ“入れ物”であるからだの正しい使い方ですね、ユミ!

シンディ・クロフォードは年齢も体型も異なる7人のモデルを起用したファッションストーリーに登場。 Photo: Zoë Ghertner

一方、フォトグラファーのゾエ・ガートナーは時代の変遷とともに変わりゆく美のかたちを捉えます。90年代のスーパーモデル、シンディ・クロフォードから、現代のプラスサイズモデル界のスーパースター、パロマ・エルセッサーまで、さまざまな美を表現する女性たちが、スイムスーツやリゾートウェアに身を包んで誌面に現れます。

今号に登場するスターのみなさんは、文化的な規範が女性に与えるプレッシャーについて、オープンに語ってくれました。これらの規範は、TikTokで自由に自分を表現するキッズたちが登場した今では特に、あまりに時代遅れに映ります。確かに、ソーシャルメディアには、過剰なリタッチによる非現実的な身体のイメージを広めたという負の側面もありますが、同時に、新しい美の理想が生まれ、育まれる場でもあります。そのポジティブな一例は、ソーシャルメディア時代を象徴する女性、キム・カーダシアンでしょう。キムが立ち上げたシェイプウェア・ブランド「スキムズ」の評価額は30億ドル(約3400億円)を突破しています。

はるか昔、古代ギリシャの時代には神が定めた比率とされる「黄金律」なるものが存在し、万物の美の基準となっていました。でも私たちは今号で、吹き出物やストレッチマーク、エイジング、グレイへアを取り上げました。この号の「透明性」が、鏡の中の自分にあらためて目を向け、からだや美についての古びた基準を捨て去るきっかけとなってくれるでしょうか。ぜひ感想を寄せてください。私たちはさらにワクワクするような変化をみなさんに届けるべく、準備を進めています。ぜひ仲間に加わってください!

Text: Tiffany Godoy

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