2月11日(現地時間)の夜、ヘロン プレストン(HERON PRESTON)が2023-24年秋冬コレクションを発表した。ニューヨークで初めてショーを行うということもあり、ローワー・イースド・サイドのコンクリート打ちっぱなしの会場はゲストの熱気に包まれていた。
ショーが始まると、オレンジの安全ベストを着た男性たちが、床に線を引きながら登場。ホワイト、ブルーに続き、オレンジの線を引きながら三番目に登場したのがヘロン・プレストン本人であることがわかると、会場は拍手と歓声に湧いた。これまでパリのメンズコレクションで発表していたが、ホームであるニューヨークで待望されていたことが伝わってくる。
ショーでは、ウィメンズとメンズを合同発表。ジェンダーレスに傾倒するのではなく、ウィメンズではボディラインや肌見せが際立った女性ならではのデザインが印象的だ。そして、アンダーウェアを透かしたセカンドスキン風ボディスーツを筆頭に、スウェットのトップスにオペラグローブやチェーンメールのブラトップを合わせたり。あるいは、スウェットパンツにはミニスカートを上から重ねたり、ハイヒールを合わせたり。まさに、今シーズンのテーマである「 Anything Goes(何でもあり)」なスタイルで、好きなものを好きなように着て、自分らしさを主張するニューヨークのストリートのバイブスが感じられた。
ブランドのDNAでもあるワークウェアもあらゆる手法で披露され、クロップドトップスとミニスカートのセットアップに解釈されたりと、若々しい魅力にあふれていた。また、シグネチャーカラーのオレンジはディテールに散りばめられ、表に付けられたタグやパンプスの裏に控えめに採用されていた。
どこにも似ていないブランドらしさが色濃く表れたこれらのコレクションは、かねてよりブランドの愛用者であるベラ・ハディッドやヘイリー・ビーバーはもちろん、ストリートファッションを愛する女性たちの心を掴むことだろう。
プレストンといえば、2016年にDSNY(ニューヨーク市衛生局)とコラボレーションしたカプセルコレクションを発表。アパレル業界の大量生産や廃棄物による環境問題を強調するために、衛生作業員のユニフォームを再利用したデザインが話題を呼んだ。2021年には、カルバン クライン(CALVIN KLEIN)のクリエイティブ・コンサルタントとして働き、アイコニックなイメージを世に送り出すなど、話題は枚挙にいとまがない。2004年にニューヨークに移り住んだ頃は、まだ何者でもなかったかもしれないが、長年の仲間である故ヴァージル・アブローやマシュー・ウィリアムズなどの躍進も考えると、ニューヨークはプレストンやその周囲のコミュニティが可能性を切り拓いてこれた場所。「Anything Goes」という言葉は、彼にとってスタイルのみならず、生き方そのものを意味するのだろう。
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Photos: Gorunway.com Text: Maki Saijo