1月26日(現地時間)、フェンディ(FENDI)が2023年春夏オートクチュールコレクションを発表した。今シーズンは、キム・ジョーンズがウィメンズコレクションのアーティスティック・ディレクターに就任して5回目となるオートクチュール。前シーズンの流れを汲み、卓越したクラフツマンシップとモダンなビジョンの融合を追求することで、メゾンのアイデンティティ確立を促しているようだ。「クチュールの技法と技術に集中し、現代の軽やかさ、滑らかさやアティテュードを加えたいと思いました」と、ジョーンズはコメントしている。
服の構造はシンプルでありながら、息を呑むような多彩なファブリック技術が際だっている。ガウンの繊細なプリーツは、グラフィックなラインを描き、オートクチュールならではの卓越したクラフツマンシップを披露。オーガンジーやチュール、メタリックなディテールによって、古典的な重厚感を避け、極めてモダンなムードに。シルバー、ベージュ、トープ、グレー、パウダーブルーなどのやさしい色調も相まって、着る人に心地よさを与えるようなピースが躍り出た。
ランジェリーはルックの一部としてデザインされ、複雑なレースやビーズが手作業で施されている。外からは見えないところにも緻密なプロセスが踏まれているそうで、着る人のためのパーソナルなラグジュアリーが隠されている。
また、アクセサリーにも注目したい。シルヴィア・フェンディによるバッグは、まるで小さなジュエリーボックスのような存在で、メタリックとクリスタルのハードさとレザーのソフトさのコントラストが印象的だ。彼女の娘、デルフィナ・デレトレズによるジュエリーは、彼女の趣味である登山に欠かせないリング状の道具、カラビナにインスパイア。イヤリングやイヤーカフだけでなく、服のファブリックを結ぶパーツとしても採用されている。
オートクチュールのコレクションウィークでは、度肝を抜くような突飛なデザインで勝負するブランドが多いイメージだが、フェンディはシンプルで実用的、そしてウェアラブルなアプローチを貫いている。複数の機能を備えたルックもあり、例えばスリーブは取り外しが可能、刺繍があしらわれたコートはリバーシブル、エプロン風のラップスカートはストールのように使うことができる。
コレクションノートには、「完成と未完成が入り交じる技巧的な“スプレッツァトゥーラ”がコレクション全体に浸透している」とあった。“スプレッツァトゥーラ”とは、精緻な技巧を駆使していながらも、平然とやりとげているように見せるさりげなさ、力の抜けたエレガンスのこと。イタリアに息づくこの芸術的アプローチは、ローマ発のこのメゾンのコードとして刻まれているようだ。コスチュームのような仰々しさではなく、軽やかさや不完全さから滲む人間的な側面。それこそが女性をもっとも輝かせるというジョーンズの美学が、このコレクションに奥行きをもたらしている。
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Photos: Gorunway Text: Maki Saijo