時代を超えて愛される、履きやすいパンプス。
マノロ ブラニク(MANOLO BLAHNIK)は、「キャロリン」と呼ばれるスリングバックのパンプスがどのようにして「エターナル・シューズ(永遠の靴)」として知られるようになったのか、その経緯についてはあまり饒舌には語らない。しかし、誕生から35年を迎えた「キャロリン」について、彼はイギリス版『VOGUE』に、こう話してくれた。「(キャロリンは)履き心地がよくてタイムレスな一足です。どんな時もモダンに見える靴なんです」。彼のこの言葉には、英国ロイヤルファミリーからファーストレディ、そしてブラニクの靴のファンたちまで、多くの人々が共感できることだろう。
キャロリン・ベセット=ケネディ、メーガン妃、アシュレー・オルセン、ロージー・ハンティントン・ホワイトリー、セレーナ・ゴメスなど、このレディライクなシューズを履いてきたセレブは数多い。とはいえブラニク本人は、「キャロリン」を自身のブランドの看板となるシグネチャー・シューズにするつもりはなかったのだそうだ。
「(自分のレガシーを作ることについて)私は思い入れもないし、あまりよくわからないんです。計画する時も、そういうことを考えずに進めますから」と話すブラニクは、何よりも女性の靴の芸術性に関心があるという。「私はさまざまな靴をデザインしています。人気のあるものもあれば、そうでないものもあります。ただ、『キャロリン』に関してはあらゆる素材、色、ヒールの高さで作っていますが、必ず売れるのです」
マノロ・ブラニクをインスパイアした女性たち。
「キャロリン」のインスピレーション源は、デザイナー、作家、アーティストであるキャロリン・ローム(Carolyne Roehm)と、ファッションアイコンのキャロリーナ・ヘレラ(Carolina Herrera)だ。ブラニク30年以上も前に、この2人の女性が持つ現代性と比類ないセンスを抽出し、履く人のライフスタイルを物語る洗練された靴に仕上げた。 「キャロリン・ロームは非常にエレガントな女性で素晴らしい顧客でした。彼女のように時代を超えた存在感のある靴をデザインすることに興味をそそられました」と、靴のミューズについてブラニクは語った。
ブラニクは1970年、ダイアナ・ヴリーランドの勧めでセット・デザイナーからシューズ・デザイナーに転向した。彼はスリングバックのシューズが常に人気だったわけではないことや、現代の靴職人たちが作る造形的なヒールとは合わせにくいかもしれないことも気にしない。「スリングバックは1930年代にとても人気があったスタイルで、私はそのエフォートレスな履き方が大好きでした。だからまずキャラメル・クロコ素材のものをデザインし、そこから発展させました」
メーガン妃も愛用するエレガントな一足。
クラシックなカーフスキンレザーのほか、顧客を喜ばせるために季節ごとのアップデートもされる「キャロリン」。華やかな花のアップリケ、透け感のあるポルカドットのオーバーレイ、つま先のビーズモチーフなどだ。しかし、バックストラップは常にプレーンなままで、伸縮性のある素材を使用し、動き回る人のために最高の快適性を確保している。
「永遠の靴」を作るには何が必要なのだろう? 成功のためのシンプルなレシピはない、と靴の巨匠は言う。「クラシックなシューズとは、女性が常に履いていられる、タイムレスな靴のことです。私はたくさんのクラシックシューズを作ってきましたが、そのうちのひとつがエレガントな『キャロリン』なのです」
Text: Alice Newbold
From: UK VOGUE
