FASHION / TREND & STORY

ヴェルサーチェやモスキーノも久々に開催。ミラノ2023年春夏メンズコレクションのハイライト。

ミラノの2023年春夏メンズコレクションが6月17日〜21日(現地時間)に開催される。パンデミックを経てスケジュールを一新した今回のハイライトは? ヴェルサーチェやモスキーノが久々にフィジカルショーを開催、また最終日にデジタル発表を集約するなど、最新事情を開催前にまとめた。

ミラノ2022年春夏メンズコレクションから。Photo: Gianluca Senese

6月17日〜21日(現地時間)に開催されるミラノ2023年春夏メンズコレクションでは、老舗からアップカミングまで多くのデザイナーが発表予定だ。6月14日〜17日のピッティ・ウオモでのアン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)ウェールズ ボナー(WALES BONNER)らの発表後、ミラノメンズが本格的に開幕する。

ヴェルサーチェ(VERSACE)が3年ぶり、モスキーノ(MOSCHINO)が4年ぶりに参加し、注目が集まる。先シーズンは新型コロナウイルスの影響でショーを延期したジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)もミラノに復帰し、盛大なパーティーも開催する予定だ。ここ数年にわたって続いたデジタルプレゼンテーションの数は減少し、ミラノメンズの公式スケジュールが全体的に一新された。

久々に主要メゾンが勢ぞろい。

エルメネジルド ゼニア ミラノ2022年春夏ミラノコレクション。Photo: Courtesy of Ermenegildo Zegna

初日の17日は、ディースクエアード(DSQUARED2)のショーから始まる。長年、オープニングショーを務めてきたエルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)は、最終日に発表。会場は、ミラノから約150キロ離れたメゾンが保有する自然保護区「オアジ・ゼニア」だ。

最終日の21日は、デジタルプレゼンテーションとショーに焦点が当てられる予定。フィジカルショーに参加する人たちがカオスなスケジュールの合間にスクリーンに引き込まれることがないように配慮されたという。

エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)プラダ(PRADA)ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE & GABANNA)フェンディ(FENDI)エトロ(ETRO)ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)など、久々に主要なイタリアンメゾンが勢ぞろいすることにも期待が高まる。ショー、あるいはその他の形式での発表なのか、詳細はまだ明かされていない。今年2月の2022-23年秋冬で、2年ぶりにホームグラウンドで発表したグッチ(GUCCI)は、詳細は未発表だがショーではない別の何かを予定しているようだ。

アリクスやドゥルーフ カプールなど、気鋭にも注目。

プラダ ミラノ2022年春夏メンズコレクションより。Photo: Courtesy of Prada

フィリップ プレイン(PHILIPP PLEIN)は、ふたつのショーを手がける。プレイン スポーツ(PLEIN SPORT)、そして2017年に買収したビリオネア(BILLIONARE)はともにレイトナイトショーを開催し、その後アフターパーティーへと続く盛大なセレブレーションを予定している。さらに先シーズン、初めてミラノメンズに参加したアリクス(ALYX)も参加が決定している。

今回のミラノメンズには、期待の新人デザイナーも多く参戦する。中でも、インド発のブランドのドゥルーフ カプール(DHRUV KAPOOR)とアップサイクルに特化したサイモン クラッカー(SIMON CRACKER)が注目株だ。

新スケジュールがもたらす、業界への変化。

ミラノ2022年春夏メンズコレクションから。Photo: Gianluca Senese

ミラノのファッション協会「Camera Della Moda」の現CEOのカルロ・カパサは、今回の公式スケジュールについてVOGUE RUNWAYの取材にこのように語る。「一新したカレンダーは、“普段”が戻ったことを象徴しているように思えます── “普段”というのは、戦争が続く世界情勢、そしてパンデミックによる影響下とともに生きる新たな日常のことを指しています。ファッション業界で働く何十万人もの人々のために、希望と仕事を生み出し続けるために最善を尽くしています」

ミラノメンズの最終日をデジタルに特化した理由は、「参加者のスケジュール調整を最適化するため」と述べた。「数シーズンにわたってデジタルとフィジカルを交えたスケジュールを展開しましたが、物理的に最適ではないと判断したのです。デジタルに特化した日を設けることで、世界のどこからでも参加できるようにし、翌日から始まるパリファッションウィークへ向かう人々のスケジュールも考慮しました」

ジェイ ダブリュー アンダーソン 2022年春夏メンズコレクション。デジタル形式で、ミラノで初披露された。Photo: Courtesy of JW Anderson

ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)など、ミラノを拠点としないブランドも迎い入れる理由について、イタリアの魅力を発信し、この地から世界に羽ばたくデザイナーを見届けることが最大の楽しみ、と彼は語る。「ミラノは常にファッションの中心地です。3000を超えるブランドを取り扱う約800ものショールームがあり、1年中ファッションのために働きかけています。ブランドの流通のために、最適な場所とも言えます。ミラノコレクションは、大きな力を持つ老舗ブランドと、プラットフォームを与えられた新世代が融合する場所として、国際的にも魅力を増しているように思えます」

新型コロナウイルスの影響により、以前のコレクションスケジュールが一時停止した。この2年の間に、どのように業界が変わるのかさまざまな憶測が飛び交い、いずれ“日常”に戻るとしても、よりサステナブルな方向へシフトするべきだ、という主張が目立った。フィジカルなショーが本格的に復活する今回の開催を直前に、カパサはファッション業界の未来について、自身の見解を述べた。「実際、パンデミック前の多くの風潮が変化なく復活しました。ステイホーム中はコレクションの数を少なくして、環境への負担を削減しようという意見が目立ちましたが、実際には多くのことが変わらなかったのが事実。それは、以前からのシステムが成功すると証明されているからです。しかし、多くのブランドがサステナビリティをこれまで以上に重視し、受注生産に切り替えて無駄を削減したり、アップサイクルを取り入れたりなど、環境負担を配慮した方向性へと確実にシフトしています」

Text: Luke Leitch Adaptation: Sakurako Suzuki
From VOGUE.COM